2021年度の介護報酬改定の検討課題の一つに、「介護支援専門員の処遇改善」という問題がある。(※介護支援専門員は、以下ではケアマネと表記統一する)

その必要性が議論される背景には、介護職員が処遇改善加算により給与等がアップされ、ケアマネとの待遇差がなくなり、一部の事業者では介護職員の年収がケアマネの年収より高くなっていることなどから、ケアマネの成り手不足が懸念されるからである。

そうした懸念に対しては反対意見も存在する。それはもともとケアマネは介護職より上位職種だというヒエラレキーは存在しないのだから、ケアマネの給与を介護職員より高くする必要性があるのか疑問だという意見である。

しかしケアマネは介護福祉士等の国定資格を持つ者が、その資格に基づく5年間の実務経験を経たうえで受験できる資格であり、その有資格者が、実務勘案される前歴に劣る待遇では成り手がなくなることは当たり前と言えば、当たり前である。

資格を取らないでずっと介護職員を続けていれば、ケアマネ資格を取って専任ケアマネになるより高い給与をもらえるようになるのであれば、好き好んで試験勉強に時間を費やしてまで、資格を取得する気にならない人が増えるのは当然の帰結だろう。

現にケアマネ実務研修受講試験の受験者は、2017年度に131.560人であったものが、今年度は昨年度より5.407人受験者数が増えたと言っても、その数は43.456人まで落ち込んでいる。この数字は、2018年度から2級ヘルパーなどを除外した受験資格の厳格化が要因の1つと言われているが、それだけでは説明がつかない数字の落ち込みようである。


ケアマネの仕事をしていた人で、元職である介護職に戻る人もいるが、その理由はケアマネの仕事が業務負担に見合った待遇ではなく、介護職に戻った方が責任が軽い中で、ケアマネと同等か、それ以上の給与をもらえるからという理由である場合が多いのである。これは大問題である。

このため国もケアマネの処遇改善は必要との認識ではあるが、それは主に居宅介護支援事業所のケアマネの待遇改善という認識であることは、「介護支援専門員の処遇改善はどうなる?」という記事でも指摘しているところである。

その為、今回の介護報酬改定議論が始まった当初は、ケアマネに特化した処遇改善加算の新設という考え方も示された。しかし具体的議論の進展は見られずに、そのような加算は設けられないことが既に決まっている。

そのような中で、先週土曜日(10/31)に書いた記事、「報酬改定に影響する介護事業経営実態調査結果」で示したように、令和元年度の各サービス別収支差率が示され、そこでは居宅介護支援費が唯一収支差率がマイナスとなっている。

その数字を見ると昨年度の収支差率はマイナス1.6%であり、前年度の平成30年度のマイナス0.1%から大幅に収支差率が悪化していることも見て取れる。しかも令和2年度は、コロナ禍で利用者のサービス利用控えが進んだ影響で、居宅介護支援費の算定ができないケースも増えているので、収支差率はさらに悪化することが予測される。

もともと国は居宅介護支援事業所の規模について、将来的には配置ケアマネ3以上をスタンダードとする方向にシフトしようとしており、収益モデルも特定事業所加算を算定することによって事業経営が成り立つモデルを想定している。そのため小規模の事業所を含めた平均収支差率が赤字となっても、そのこと自体は問題ではないと考えていた。

しかしケアマネの成り手が減ろうとしている現在、居宅介護支援事業の収支差率の改善は必要との認識が生まれており、ケアマネ処遇改善加算を設けない以上は、居宅介護支援費のプラス改定による増収分を、ケアマネの処遇改善原資に充てるという考え方となっており、その方向で改定作業が進められていることは間違いのないところだ。

そんななかで居宅介護支援費も2ラウンド目の議論が終了して、新報酬体系の概要が見えてきた。

前述したように居宅介護支援費は基本サービス費が今より高く設定されるだろう。しかし全体の収支差率が赤字決算の事業なのだから、それだけでケアマネの処遇改善に回る原資は十分とは言えない。だから国は基本サービス費の引き上げによる収益増という方法以外にも、様々な形でケアマネの働きかけによって報酬が増加する仕組みを作り上げようとしている。

その詳細・具体的内容と評価については、明日の後編で解説してみたいと思う。(後編に続く)
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