国は、医学的リハビリテーションの専門家が介入していない福祉系サービスの機能訓練効果は低く、自立支援につながらないと思っているのだろう。

だからこそ、福祉系サービスに外部の医学的リハビリテーションの専門職を結び付けて、機能訓練や生活支援の内容を指示させることによって、自立支援効果を高めようとしている。

そのために設けたのが生活機能向上連携加算である。

最初にこの加算を新設したのは訪問介護である。2015年の報酬改定でサービス提供責任者と外部のリハ職が利用者の住まいを訪ねたうえでカンファレンスを開き、共同で計画を作成することで加算算定できるようにした。

しかしその算定率があまりにも低く、その理由がサービス提供責任者と外部のリハ職が同じ時間に利用者宅を訪問することの困難性であることとされ、2018年の改定では、この連携を訪問に限定せず、ICTを利用して、画面でリハ専門職が利用者の状態を確認して助言するだけでも算定できる加算区分を新設した。

さらに通所介護にも生活機能向上連携加算を新設し、外部のリハ専門職が通所介護事業所を訪問し、職員と共同してアセスメントを行い個別機能訓練計画を作成することで加算算定できるようにしたが、その算定率は通所介護で3.9%、地域密着型通所介護で1.1%、認知症対応型通所介護で2.5%と低くなっている。

それは通所介護事業所と外部のリハビリテーション専門職との連携が難しいことが理由であるとされ、特にリハ専門職が通所介護事業所を訪問する時間がとれないことが問題とされた。そのため今回の報酬改定議論で国は、通所介護でも外部のリハ職との連携にICTの活用を認めるなどルールを弾力化する意向を示している。

同時に訪問介護の生活機能向上連携加算算定率は、いまだに1%以下(昨年4月審査分)に留まっており、加算として機能していないことも問題視している。そのため国は、サービス提供責任者と外部のリハ職の連携をより取りやすくするように、次の介護報酬改定に向けて、リハ職とのカンファレンスとサービス担当者会議とを兼ねる運用を認める検討を進める方針を、22日の介護給付費分科会で示した。

しかしそのような運用は、サービス担当者会議のメンバーのうち、加算算定と関係のない事業所の担当者にとっては至極迷惑なことでしかない。会議を主催する担当ケアマネだって、サービス担当者会議の主旨とは直接関連性のない話し合いがそこで行われることは、時間の無駄でしかないと思う。

例えばリモート会議でサービス担当者会議が行われ、議題がすべて話し合われて会議が終了し、他のメンバーが画面から退出した後に、加算算定事業者とリハ専門職で話し合いが行われるならともかく、サービス担当者会議の中で、同時並行的に加算算定のための連携の話し合いが行われるのは筋が違うと思う。そんなの勝手に別のところでやってくれと言いたいところだ。

国は新ルールを業務の効率化を可能にするものだと言うが、加算と関係のない他のメンバーにとって、それは非効率そのものでしかない。このルールが訪問介護の加算にだけ認められるのか、通所介護の加算も含めてなのかは不透明な部分があるが、どちらにしても大迷惑なルール変更だ。

そもそもこの加算の算定率が低い理由は、外部のリハ専門職との連携の方法が難しいとか、話し合いの時間の確保が難しいからではなく、加算算定しても外部の専門家に対価を支払えば収益がほとんどなくなることと、外部のリハ専門職に介入してもらっても効果が感じ取れないことに尽きる。

前者は加算単位を増やすことで解決可能になるかもしれないが、後者についてはほとんど致命的な問題と言える。

外部のリハ専門職が介入しても、実際に個別機能訓練などの実際のサービスを提供するのは事業所側の職員なのである。いくら外部のリハ専門職が計画に介入しても、実際に行われているサービスは、介入前とさほど変化がないという例は枚挙にいとまがない。そんなものに手間をかけて、わずかな収益を得たってどうしようもないと思っている事業者が多いことが、この加算の算定率の低さに現れているのだ。

訪問介護や通所介護を利用する要介護高齢者にとって、求められるサービスの提供の視点とは、医学モデルではなく生活モデルであるという意味なのである。医学的リハビリテーションの専門家を福祉系サービスに結び付けて、自立支援を促すという方法論そのものが間違っているのではないだろうか。

そもそも算定事業者が1割にも満たず、数パーセントでしかない加算は、何をどういじっても劇的な算定率アップは期待できるはずもないと見切ることも必要ではないか。それはすでに意味も失っている加算でしかなく、廃止の対象とすべきではないのか。

意味のない加算を存続させるために、大事なサービス担当者会議に無駄な要素を組み入れて、担当ケアマネジャーやサービス担当者の時間を削るのは、あまりにも理不尽としか言いようがない。

こんな方針に異を唱えられない介護給付費分科会の委員は、すでにお飾りにしか過ぎない位置に祭り上げられていると言っても過言ではないだろう。その存在価値は全くないと言え、人畜無害であることだけを祈る存在でしかないとも言えよう。
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