政府が旗を振っている行政手続きのIT・デジタル化の推進と、「脱ハンコ」や「ハンコ廃止」は論理的につながらないという主張がある。

IT・デジタル化の推進に必要なのは、「押印の省略」なのだそうで、判子・印鑑という日本文化は残していかねばならないのだそうである。しかし判子が存在すれば、押印という行為はなくならないだろう。どこにそのような必要性があるのかは大いに疑問だ。

押印が必要なくなれば、ハンコは使い道がないのだから、「ハンコ廃止」で何が悪いのかと言いたい気持ちもある。
《※ちなみにハンコとは、個人や組織がその当事者であることを証明する印のことを意味し、印鑑は捺印をした時に紙や書類などに残る文字や絵(印影)を表すので、意味するものは違うのだそうだ。》

そもそもハンコを押した書類が、個人の同意等の証明になるという信頼性は徹底的に揺らいでいる。現に介護サービスにおいても、ハンコが不正に使われていた事件が明らかになっている。

京都府八幡市の社会福祉協議会のケアマネジャーが、利用者に無断で印鑑を不正使用した問題が発覚したのは2019年5月のことであった。ネット上ではこのケアマネの机の中に、たくさんの印鑑が入れられている下記画像が拡散されている。
ケアマネによる印鑑不正使用事件
このケアマネが自分の机の引き出しに保管していた印鑑は145本。このうち利用者の許可を得ていたのは24本のみだった。

印鑑の保管は10年ほど前から慣例となっていたそうである。印鑑は、このケアマネが自費購入していたもので、その判断もケアマネ個人によるものだったそうである。そしてこれらの印鑑を使って、居宅サービス計画書とサービス利用票の同意欄に勝手に押印していたそうだ。さらに毎月一度以上義務付けられている利用者宅へのモニタリング訪問を行うことなく、訪問したように装う証明として印鑑を使用していたとのことだ。

つまり判子を使って押印するという行為は、何の意味もなしていないということだ。証明の証拠として押印が必要であるという考え方は通用しないのである。むしろ判子さえ押されておれば、それだけで何かの証拠として有効だと考えることで、奪われているものがあるということも本件のような事件は示しているのだ。そして判子が存在しなければ、このような不正は起きなかったとも言えなくもない。

だから判子なんかなくても、別な方法で有効性が証明される方が正しいという考え方があってよい。判子がない方が、本当の証明となる知恵に結び付く早道が生まれるのではないかという考え方も当然あってよい。自署した文字を電子媒体で送るデジタル署名なんかは、印鑑よりずっと個人の証明として有効な方法と言えるかもしれない。

ケアマネのモニタリング訪問や、居宅サービス計画等の同意にしても、印鑑を押す問う行為がなくなっても、例えば現在はほぼすべての人がデジカメ内蔵のスマホもしくは携帯を持っているのだから、それを利用すればよい。説明に対する口頭同意の場面を動画撮影し、利用者個人別にファイル保存しておけば良いだけの話だ。その方が説明に同意していることの明らかな証拠となるだろう。

そっちの方がよほど信頼性が高い証明と言えるのではないのだろうか。

ハンコがなくなっても仕事に支障を来さないどころか、業務の省力化にもつながると思う。事実僕はそれを実感している。

僕は仕事上、請求書や領収書を発行しなければならないことも多い立場であるが、最近の脱ハンコは、その仕事に大いに良い影響を与えてくれている。

つい最近までは、請求書や領収書に必ず印鑑を押して郵送せねばならなかった。これが脱ハンコの流れの中で、押印は必要ないというふうなってきたので、郵送する必要はなく、請求書や領収書をメールに添付するだけで良くなっている取引が多くなった。

それによってアナログ作業が減って、デジタル作業ですべての取引業務が完結するので、タイムラグもなくなるし、何より作業が楽になる。印鑑を使わないことによるデメリットは全くないので、今のところ脱ハンコは、いいことずくめである。

こうした形での業務省力化は、介護業界全体の業務を考えても必要になると思う。そのためにはハンコ文化・印鑑絶対主義から脱することが何よりも求められるのではないだろうか。
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