介護人材確保が経営課題となっている今日、今いる従業員が辞めてしまうことは、大きな痛手だと思っている経営者が多い。
勿論、事業者にとって誰にも替え難い人材が辞めてしまうのは人材流出でしかなく大問題であるし、人材不足の解決のためには、職員の定着率向上が大きな課題であることは今更言うまでもない。
だからと言って人物評価をおろそかにして、誰でもよいとして闇雲に採用すればよいということにはならないし、採用時の評価が完璧で間違いのない事業所なんかないのだから、採用後の振るい分けが必要ないということにはならない。
入社前に期待していた能力が入社後には全く発揮されず、担当業務をいくつか変えても勤務成績が上がらないという人は必ず出てくるのだ。
そういう人物については、試用期間に適格性を判断し、合理的理由による解約権を使用者が行使する必要がある。
対人援助サービスに向かない、スキルの低い人間を、ありもしない将来の教育効果を期待して残しておくと、結果的には他の職員に負担がかかるだけではなく、虐待・不適切事例がいつ起きるかもしれないような経営リスクに直結するからである。
よって試用期間中は、しっかり人物を見極めるために厳しい教育訓練が不可欠であり、根拠にも基づく援助技術指導に対する教育効果が十分に表れない場合には、「叱る」という教育的指導も必要になるのである。
そうした中で簡単にやめていく職員は、将来事業者にとって必要な人材にはならないのだから、やめてもらってよい人だという割り切りが必要だ。そうした早期離職を恐れて、叱ることができないのでは、教育はあってなきがごとき状態に陥ってしまう。そういう事業者に良い人材が集まることはないし、人材不足は永遠に解決しなくなる。
そもそも叱るとは、「良い方向へ導こうとする」という意味を持つもので、教育的指導を表す言葉である。それは腹を立てて感情的に怒りをぶつける行為とは根本的に異なったものである。
人を叱ることなんて、本当は誰もしたくはない。嫌われる行為は誰しも避けたいからだ。それでも叱る理由は、叱る相手の人間的成長を期待するからにほかならず、それは何より愛情ある行為と言えるのである。
そのことを理解できずに、叱られて簡単にやめてしまう人は、そもそも対人援助に向いていない。愛情を理解できない人に、愛情を持って人に接することなんてできるわけがないからである。
介護という行為は、科学的根拠が求められる行為であり、愛情なんて言う目に見えない非科学的なものに頼っては駄目だという人がいる。しかし愛情・人間愛というエッセンスに欠けた行為は、人を決して幸せにしないのである。目に見えない人間愛のない行為を繰り返すことで、感覚を麻痺させ、デリカシーに欠けた行為が行われるようになる。そこでは人が傷つく行為を悪気なく行ってしまう人間が出来上がってしまうのである。
介護業界ではいまだに虐待防止が研修テーマとなっているが、その理由の一つには、当事者が虐待とは思っていない行為で、利用者を傷つけているという事実が存在するからである。
しかし人に関わり、個人のプライバシーに深く介入する職業についている人にとって、そのような鈍感さは許されない。だからこそ人を傷つけることがないための基盤となる人間愛を伝えることは避けて通れない人間教育なのである。
管理職は教育場面でも、部下に思いを伝えるために丁寧に説明して、厳粛に実行する覚悟が求められる。その際に、「叱る」という行為を排除して、自分が嫌われないように逃避することは許されない。むしろ業務上必要な注意をして、それが理由で辞めていく人罪は辞めてもらった方が良いと考えて、愛情を持って叱るべきなのである。
職場環境を良い状態に保ち、職場内の人間関係を豊かに保つためには、決めごとを決められた通り実行する習慣づけが不可欠であり、すべての従業員が行動・言葉・考え方を美しくあるよう心掛けるようにしつけることが重要になってくるのである。
このことを理解せず、従業員がいつ辞めてしまうかを気にかけながら、間違った行動や、誤った姿勢を叱ることができる上司がいない職場に、明るい未来は決して訪れることはない。
さすれば自分の職場の上司が、仕事も満足に覚えず、丁寧に顧客である利用者に接することもできない部下を、叱りもせず、行動変容も促さない職場には、いつまでもとどまっている必要はないと言えるのである。
対人援助のスキルの高い人であればあるほど、自分のために、どうしようもない職場と上司に見切りをつけることがあっても良いのである。
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