我が国の高齢者介護問題においては、団塊の世代と団塊ジュニア世代という2つの大きな塊の動向が、財源や人材の両面で大きく影響してくる。

少子化で生産年齢人口が減り続ける中で、最も大きな塊である団塊の世代が高齢者になるにつれて増大する社会保障費用をどうするのかということに続き、団塊の世代が徐々にいなくなる時期には、団塊の世代の介護財源や人材を支えてきたもう一つの塊である団塊ジュニア世代が高齢期に達することになるが、その人たちに続く次の塊が、わが国には存在しないことが大問題となっている。

団塊の世代は2029年に全員80歳に達し、2039年に90歳に達するのである。

そして団塊の世代を支えてきた団塊ジュニアは、2039年にすべて65歳以上となるのだ。

だからこそ2040年以降の高齢者介護問題が大きなテーマになってきているのである。

そのため2012年度までの介護保険制度改正と報酬改定(介護・医療)は、団塊の世代が全て65歳以上の高齢者となる2015年問題に向けられたものであった。

2013年度以降の介護保険制度改正と報酬改定(介護・医療)は、団塊の世代がすべて後期高齢者となる2025年問題と、それ以降の問題に向けられ、そのため地域包括ケアシステムの基礎作りから深化が求められた。

そして2021年の制度改正と報酬改定からは、いよいよ2040年以降を見据えた改革に取り掛かっているのである。

今年6月に国会通過して成立した介護保険制度改正関連法については、補足給付の段階区分と資産基準の見直しや、高額サービス費の見直し等、それなりに大きな改正が含まれているものの、被保険者範囲と受給者範囲の拡大や、現役並み所得と一定以上所得の判断基準の見直し等の重要な改正課題の多くは先送りされる結果となった。

その理由は、前述したようにすでに制度改正と報酬改定は、2040年度を睨んだものに変わっており、それまでに主要な改正テーマを解決すればよいとしているからである。つまり時間的余裕があるので、改革を急ぐあまり国民の大反発を招いて、政権運営ができなくなるような事態を避けつつ、ソフトランニングで改革・改正を行って、2040年度に間に合えばよいという意味だ。

だからこそ2021年度の制度改正で、議論の俎上に上りながら先送りされた課題については、徐々に実現されていくことになることは間違いなく、国民負担は徐々に増やされていくことになるのである。その結果、介護保険サービス利用の際の自己負担については、いずれ1割負担はなくなり、2割負担が最低限求められ行くことになるだろう。

そんな中で、8日に開かれた財政制度等審議会・財政制度分科会では、2021年度の介護保険制度改正議論では議論されることがなかった、新たな国民負担増加案を財務省が主張した。

それは介護保険利用の際の自己負担割合について、所得のみを勘案して負担率を決める現行制度は不公平だとするもので、負担率決定には金融資産を勘案せよという主張である。

財務省の主張をまとめると以下の通りとなる。

・高齢者は現役と比べて、平均的に所得は少ないが貯蓄は多い

・低所得の高齢者が相当の金融資産を持つケースもある」とし、所得のみを勘案して自己負担を決める制度は不公平

・医療保険・介護保険で高齢者に支払ってもらう自己負担の設定の際に、金融資産の保有状況を十分に反映させるべきである


この主張は今春の介護報酬改定が行われた直後から始まる、「次期介護保険制度改正議論」の中で、間違いなく議論の俎上に載せられ主要なテーマの一つとなっていくだろう。

そしてそのことは少なくとも2040年までには実現される可能性が高いと言える。なぜなら金融資産の勘案は、すでに補足給付の負担段階の決定においては実現されていることであり、それを前例にすることができるという意味で、決してハードルが高くはないからである。

このように国民の痛みは、静かに確実に増大させられているのである。少子高齢化という時代背景を受けて、それは「やむを得ないことである」という声も聴こえるが、少なくとも政治家や官僚には痛みがまったくない改革や改正は、あまりにも無慈悲で無責任である。

そのような改革がいつまでも許されると思っていると、必ず大きなしっぺ返しがされるであろうことを予言しておきたい。
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