日本介護支援専門員協会が来春の介護報酬改定に対する要望書を国に提出した。(参照:令和3年度介護報酬改定にあたっての要望

この時期の要望は遅すぎて、時期を失しているのではないかという意見もあって当然だが、具体的な要望を示すことは、その内容が会員の声を代表しているかどうかということを確認できるという意味でも重要だ。そもそも介護報酬改定は、今後何度も行われるので、要望は一気に実現しなくとも、段階的に実現されていけばよいわけだから、要望しておくということに意味があると言えよう。

その内容を読むと、多くの要望項目は目新しいものではなく、むしろずっと以前からの要望を整理して示したという意味合いを強く感じる。

次の報酬改定では要望の1と6の実現可能性は高いと、かねてよりこのブログで論評してきた。居宅介護支援費と予防プランの作成費(これが上がると自動的に予防プランの委託作成費も上がる)の引き上げによって、居宅介護支援事業所の介護支援専門員の処遇改善につなげようという形に落ち着くのが2021年介護報酬改定でのケアマネジメント評価ではないか。よって2の処遇改善は、ケアマネ対象の処遇改善加算という形にはならないと思う。

3と4の、担当者上限数の引き上げと、上限を超えた際の逓減性の緩和も、ずっと続けられている要望だ。

そもそもこの問題は、か日本介護支援専門員協会の創設時の戦略ミスが影響している問題である。当時、居宅介護支援事業所の介護支援専門員の担当利用者上限は50人であった。それが35人に引き下げられたきっかけと理由は、介護支援専門員の業務負担が大きいので、担当上限を35人に削減してくれと日本介護支援専門員協会が国に要望したからである。

その時、当時の初代会長と執行部は、上限数削減だけを要求しただけに終わったという大失態を演じている。普通に考えれば上限数が減れば収入も減ってしまうのだから、そうならないように居宅介護支援費の単価を同時に引き上げて、居宅介護支援事業所の収益が下がらないように要望すべきであった。

それをなぜしなかったのか・・・。その理由は、当時の会長と執行部が、上限削減の要望をすれば、当然単価は自動的に上がると安易に考えていた節がある。しかし国はそのような甘ちゃんではない。要望してくることには応えるけど、具体的に要望のないものには応える必要がないとして、報酬単価の引き上げは行わないまま、上限を35人に引き下げて、「協会の要望に応えた」としたのである。

要するに国と、「あうんの呼吸」があると信じていた、当時の執行部が無能だったという話である。現執行部はそのつけを払いながら、負の遺産を解消しようとしているわけである。

その結果はどうなるか・・・。地域包括支援センターの機能強化と絡んで、予防プランの居宅介護支援事業所への委託数を増やそうというのが国の考え方だから、少なくとも委託プランを今より多く受けて、その部分は逓減対象としないようにする方向に導かれることは間違いないので、要望に沿った改定になることが予測される。

さて今回の要望書で一番注目すべき点は、なんといっても5である。
5.医療介護情報連携等を目的とした利用者との同伴受診(通院同行)の評価

本来、通院同行は介護支援専門員の仕事ではないとされている。しかし実際には訪問介護による通院支援を依頼できないケースも多いことは事実だ。

認知症で身寄りのない人が急に通院しなければならなくなって、訪問介護の依頼が間に合わず、付き添ってくれる知人がいない場合、やむを得ず担当ケアマネ自らが車を出して、急な通院に対応し、医師からの病状説明も受けて、その後に備えるというケースは多い。

また本人のみの受診や、家族が付き添って受診するだけでは、本人の日ごろの状態が医療機関に正確に伝わらないケースがあり、ケアマネとして、「こうした状態を伝えたうえで、治療方針を決定してほしい」と思うケースもあるはずだ。

そういう積極的な意味での、医療と介護の連携のための受診同行はあって良いと思う。

現在はケアマネの受診同行がどのような理由で行われようとも、それはすべて奉仕で行われており、中にはそうした奉仕を前提に、ケアマネに何もかも丸投げしようという風潮もないといったら嘘になる。

今回の通院同行への保険給付の要望は、こうした問題に警鐘を鳴らしたという意味があると思う。

ケアマネの通院支援に保険給付を行ってほしいという要望が通ることによって、逆に通院同行がケアマネの通常業務と勘違いされて、安易な通院同行依頼が担当ケアマネに対して要求されるようになってしまうのではないかと懸念する声も当然出てくるだろう。

しかしこの要望では、通院同行への保険給付の要件に、「医療介護情報連携等を目的」が入れられている。この要件によって、ケアマネジメントに照らして必要不可欠な目的を持った通院支援だけを介護支援専門員が担うという方向性が見えやすくなる。訪問介護員の通院支援と差別化を図ることが出来る要件がつけられているという意味で、賢い要望であるといえるのではないだろうか。

普段、介護支援専門員の声を府代表しているのか否か、首をかしげることの多い協会ではあるが、今回の要望書は極めてまともに、多くの介護支援専門員の声をまとめているという意味で評価したいと思う。

通院同行の保険給付の要望は、そういう意味で僕も大いに賛同したいと思う。
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