厚労省が9/30付で発出した介護保険最新情報のVol.876は、介護事業者に活用を促す勤務形態一覧表の新テンプレートを公開・意見募集するものである。
この新テンプレートは、今年3月に先行して公表した訪問介護・通所介護・小規模多機能・特養のテンプレートに対して寄せられた意見を踏まえて改良したもので、今後11/30までに意見をさらに求め、今年度末までに国の推奨テンプレートとして介護事業者や自治体の担当部局に活用するよう促すとしている。
このことに関連しては、次期報酬改定の論点でもある(介護人材の確保・介護現場の革新)の中で、<文書量の削減>として次のような考え方が示されている。
○ 事務負担の軽減の点からも、総合事業も含め国が標準的な様式等を作成することで、文書の簡素化・標準化・ICT化を推し進めていくということも必要ではないか。
今回の通知は、この実現の一環としてペーパーワークを削減するためのものと思われる。
しかしこのブログで何度も指摘しているように、文書量の削減・ペーパーワークの削減の方向性は、当初の目的から大きくずれてしまっているのではないかと思う。
ペーパーワークの削減の必要性が指摘された当初は、介護保険制度の創設以来、介護現場の看護・介護職のペーパーワークが大幅に増えていることが問題だったはずだ。行政指導の際の証明のための記録が大幅に増えて、本来の介護業務等に支障が来すほどペーパーワークが増え、介護職員等の疲弊が広がり、それが介護サービスの品質低下につながるとしたら、それは本末転倒になってしまうので、できるだけ直接介護職員のペーパーワークを減らして、利用者に接してケアする時間を十分に確保しようというのが本来の目的であったはずだ。
ところがペーパーワーク削減議論が進むにつれ、それが事務書類の削減に転嫁され、減らされる書類とは、申請事務に関する書類が中心となり、看護・介護記録の削減はほとんど手つかずの状態で放置され、介護の場で直接利用者に接する職員のペーパーワークはまったくと言ってよいほど減らない結果に終わっている。(参照:文書負担軽減委員会のあっち向いてホイっぷり)
今回の新プレート活用で、介護事業者等の勤務形態一覧表書式を統一したとしても、少なくとも介護現場で利用者と相対する職員には何も関係のないことで、業務負担の軽減にはつながらない。
このことで仕事が楽になるのは、勤務体制を確認する役所の実地指導担当者だけではないか。すでに勤務表をソフトに組み込んでいる事業者にとっては迷惑でしかない。使い勝手の良い勤務表作成PCソフトを使い慣れた事業者にとって、今回公表されたエクセルファイルなんて、不便で不便で仕方ない。
そもそも国は、「改善すべき点を指摘して欲しいと広く呼びかけていた」というが、その呼びかけに応じて、意見を出した人とはいったい誰なんだ?介護事業者の事務担当職員が意見を出したかもしれないが、介護職員からの意見は挙がってきているのだろうか?
そんな疑問を持つ理由は、公開されたテンプレートは、「見づらい」からである。勤務表は事務担当者のためにあるのではなく、実際にそれでシフトを確認する介護職員のためにあるといってよい。
申請様式をそのまま業務の勤務表に置き換えられたらかなわないわけである。
勤務表に対して、現場の介護職員から挙がってくる要望は、「もっと見やすくして」・「文字が大きくないと見づらい」である。
シフト勤務者にとって勤務表とは、単に自分のシフトを確認するという意味ではなく、出勤者が誰と誰であるかを確認するためにあるもので、「自分はその日に誰と組むのだろうか」ということを確認するものである。そのため全体の勤務状況が一目で見やすくなっていないテンプレートを、介護職員が支持するわけがないのである。
もしこのテンプレートを使ってシフト勤務表を作成することになった場合に、現場の介護職員からは、「見づらい」・「計算式や数字なんて表に乗せないで、シフトだけわかるようにして」と不満が噴出するだろう。少なくともシフト勤務者自身は、こんなテンプレートに統一するなんて百害あって一利なしであると思うだろう。
介護の場で、利用者に逢いたいし汗する職員に何のメリットもなく、役人の事務作業がやりやすくなる結果にしか結びつかないクソ改革に、こんな費用と時間をかける無駄をなくさないとどうしようもない。このくそつまらないテンプレートを作成したことで、仕事をしたつもりになられても困るのである。
全くどっちを向いて改革しようとしているのか・・・。ペーパーワーク削減議論は、現場を知らない人間の認知力に欠けた議論としか言いようがなくて、あきれるばかりである。
※登録から仕事の紹介、入職後のアフターフォローまで無料でサポート・厚労省許可の安心転職支援はこちらから。
※リスクのない方法で固定費を削減して介護事業の安定経営につなげたい方は、電子ブレーカーで電力料金を賢くコストカットしませんか?をクリックしてください。





北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。
・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。
・masaの最新刊「看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。