政府は2日、第2次安倍政権が2015年から旗印に掲げていた「介護離職ゼロ」について、「引き続き、実現に向けた取り組みを進めていく」とする答弁書を閣議決定した。

しかしこの政策を実現するためには、「介護人材確保」が絶対条件である。しかも今行われている施策や、考えられている施策では不十分で、もっと抜本的で革命的な施策が必要である。

特に地域包括ケアシステムにおいて、「在宅ケアの限界点」を引き上げ、高齢者ができる限り住み慣れた地域で暮らすことができるためには訪問介護が不可欠だ。

ところがこの訪問介護はすでに枯渇状態だ。訪問介護員の全体の平均年齢は55.5歳である。しかも50歳以上が全体の73.0%を占めており、20代は1.0%という現状は、近い将来このサービスが消滅する危険性が高いことを意味している。

そもそも訪問介護員は、なぜこのよういびつな年齢分布になっているのか。その答えは簡単だ。その理由は、2000年にスタートした介護保険の創設時に、主婦層でヘルパー2級資格を取得する、「ブーム」が起きたことに起因しているのである。

2000年前後に、当時の30代・40代の主婦がヘルパー資格を得て、増え続けていた訪問介護事業所に雇用されるケースが目立っていたわけである。

その人たちが20年を経て、50代〜60代になってきているにもかかわらず、それに続く若い人たちが訪問介護員という資格に魅力を感じずに、ヘルパー2級講座に替わる現在の初任者研修は人気がなく、講座を開いても受講者が集まらない状態のところが多くなり、新たなヘルパーの成り手がないという状態が続いているから、訪問介護は絶滅危惧職種になっているのだ。

ここに手を入れない限り、地域包括ケアシステムは崩壊するし、介護離職はゼロにならない。対症療法的方法ではなく、大手術による改革が必要なのだ。

他のサービスと比べて、決して報酬が高いと言えず、むしろ低いとさえいえる訪問介護に限って、従事するために資格が必要だということがおかしいのである。本来唯一資格を求めるような職種・サービス種別であるなら、それは他の職種やサービス種別に比して、報酬が高くなければならない。そうなっていないといういびつな状態をなくさないとならない。

そもそも初任者研修受講条件の資格なんて、サービスの質を担保するほどのものではないのである。介護施設の介護職員は無資格でも構わないとされ、そのことで大問題が起きているわけではないのだから、訪問介護員にだけ資格が必要であるというルールなんて失くしてしまえばよいのである。

それができないのは、初任者研修を開催する主体の利権絡みかと疑いたくもなるというものだ。

訪問介護員に資格は不要とする改革からまず始めねばならない。コロナ禍特例で介護職の経験があれば資格のない者にも、訪問介護サービスを認めたことを橋頭保にして、ここの改革から取り急ぎ始める必要があろうというものだ。

ところでこの介護人材問題に関連しては、厚生労働省が来年度から、これまで他の業界で働いていた無資格の人が介護現場へ参入するのを後押しする施策として、新たに「就職支援金」を貸し付ける考え方を示している。

無料で受講できる研修を修了することを条件に、最大で20万円を支給し、介護職員として2年間従事すれば返済を全額免除するというものだ。

コロナ禍で失業者が増え、有効求人倍率が8カ月連続の減少で、2014年1月以来、6年7カ月ぶりの低水準となっている現在も、介護事業者の求人率は高いままなのだから、この支援金は一定の効果があり、他業種からの介護事業者への転職者を増やす効果はあると思う。

しかし20万円という金額は、介護の仕事に就くきっかけになっても、それを返さなくて済むように最低2年は働こうという動機づけになるほどの金額ではない。

だから問題はその後だ。未経験者が介護の知識や技術を獲得し、安心して働くことができ、永くその職場に定着できるかどうかは、ひとえにその職場に置ける教育システムの在り方にかかっている。(参照:間違いだらけの基礎学習&OJT

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このように介護事業者における職員確保のための工夫・募集の方法、介護職員の定着につながる教育などについても講演テーマとしているので、講演等を希望される方はメール等でお気軽に相談いただきたい。

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