人の価値観は様々である。その多様性は宇宙より広いと言っても過言ではない。
人によっては飲酒は許せるが、喫煙は我慢できないという価値観もあれば、その逆もある。
人によっては怠惰が最も許せないという価値観もあれば、嘘をつくことが最も許せないという価値観を持つ者もいる。
こうした価値観や意見を持つこと自体は人間として不自然ではない。そしてその価値観は、どちらが正しいとか、どちらが間違っているとか言えるような問題ではないのだ。
だからと言って自分の価値観によって受け入れがたい行為だからと、否定的な感情を相手にぶつけることがあっては人間社会は成り立たない。飲酒が許せないという価値観を持っている人が、その感情は決して否定されないからと言って、酒を呑む人に罵倒を浴びせてよいわけがないのである。
しかしこうした極端な例ではなくとも、自らの価値観を根拠に、わけもなく人を非難したり、蔑んだり人がいたりすることも事実だ。ネット社会の中で匿名の批評家が増える中で、こうした風潮が広がっていることは心配なことでもある。
自分の価値観を前面に出すことができるのは、あくまで法律や社会規範に沿って行動していることが前提となるし、他者に迷惑を及ぼす行為はどんな価値観に基づいていても、人としての品性を問われる結果にしかならない。
よってこうした社会だからこそ、感情をどのようにコントロールするのかを真剣に考える時間を持つ必要がある。
ところで僕たちソーシャルワーカーは、職業場面で様々な価値観に向かい合うわけである。そこでまず必要になることは、多様な価値観を受容するということである。
だからと言って、自分独自の価値観を否定する必要はなく、対人援助者であっても、人それぞれに多様な価値観は認められて当然である。
そうであるがゆえに、対人援助の場で対応する相手に対し、否定的な感情を抱くことも、十分あり得ることなのである。それは神ならざる身にとっては、致し方のないことだと言えるのだ。
僕たちに求められているのは、そうした自身の感情を否定するのではなく、素直に正確に認識することである。誰のどのような状況を否定的に捉えやすいのか、あるいは肯定的に受け入れることができるのかという自分の感情のあり様・揺れ方を把握理解することが、対人援助のスキルとして求められているのである。
そのことを自己覚知と呼ぶ。
つまり自己覚知とは自分をあるがままに受け入れることであり、その感情をコントロールすることなのである。
それは対人援助という専門職としての立場に、個人的価値観が影響するのは好ましくないということを意味している。僕たちの仕事は、いろいろな生活歴を持ち、様々な性格を持った人と向かい合う仕事なのだから、偏見や偏った判断を生む要素をできるだけ排除しておかねば、対人援助ではなくなるのだ。
僕たちは援助する前に、「審判」してはならないのだ。
その為の自己覚知は、アンガーマネジメントの基盤ともなる。自己覚知のないところで、怒りが深刻な問題にならないように上手く制御し管理することは不可能だからである。
例えばアンガーマネジメントとしてよく言われていることは、ピークは初めの6秒間であるということは極めてポピュラーな知識である。その6秒間の怒りを鎮めるために、数を数える・深呼吸する・その場から離れる・自分に言葉をかける・考えることをやめることが方法論として挙げられている。
しかしいくらこうした方法論を覚えても、自分の怒りの感情がどのような理由で、どのような方向に向かう傾向があるのかを理解しないと、その場しのぎの継続性がないものに終わってしまう。
アンガーマネジメントは、一時的な怒りの感情を鎮めるためにあるのだから、その場しのぎ良いという意見も当然あろうと思うが、どうせマネジメントするなら、自分自身の成長につながるものであれば、それに越したことはない。自己覚知はその成長を促す、「絶対要素」と言ってよいものだろう。
しかし自己覚知は無意識には生まれない。一旦生まれた自己覚知も、意識のないところで存在し続けることは出来ない。なぜなら自身の価値観は、環境や年齢が作用する要素が強く、常に一定ではないからだ。
だから対人援助に関わる人々は、常に自己覚知を意識して、自分自身の価値観とはどのようなものかを理解する訓練を重ねていく必要がある。
介護事業者の管理職やリーダーの立場の人であれば、自己覚知を部下促していく役割も担わねばならない。
その時にどのように自己覚知を促すかというヒントになるのが僕が提唱する、「自己覚知を促す演習」である。そしてこの演習は、やってみると意外と楽しいことがわかる。楽しみながら自己覚知につなげられるのである。
僕の著書、「人を語らずして介護を語るな(THE FINAL)〜誰かの赤い花になるために」では、このことを詳しく解説したコラムも載せているので、是非参考にしていただきたい。
自己覚知を促すことによって、今まで見えていなかった世界を見つける職員も多くなると思う。それはもしかしたら、介護の仕事が益々好きになって、長く続けようとする動機づけにつながるかもしれない出来事なのである。
自己覚知を促す演習は、そうした効果を期待できる有効な機会なのである。
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