介護保険制度改正と介護報酬改定は、制度の持続性を担保するために行われてる。そこに最も影響が大きいのは団塊の世代の動向と考えられてきた。

そのためこれまでの制度改正・報酬改定は、団塊の世代の方々がすべて65歳に達する2015年や、それらの方々が75歳以上の後期高齢者となる2025年を睨んで制度設計がされてきたわけである。

しかし6月に国会審議を経て通過した介護保険制度改正議論からは、その先の2040年をにらんだ制度・報酬設計に変わってきている。

では2040年という年には、いったいどういう意味があるのだろうか。

日本の人口構造上、団塊の世代の次に大きな塊となっているのは、「団塊ジュニア世代」である。その世代が2039年にすべて65歳以上に達することから、2040年とはその人たちが介護保険の1号被保険者になった後の介護保険制度の設計を考え直すという意味がある。つまり日本の介護を考えるうえで注目すべき世代が、団塊の世代から団塊ジュニア世代に交代されているのである。

今更言うまでもないが、世代人口は第1次ベビーブームと呼ばれる1947年から1949年に生まれた、「団塊の世代」が最も多く、出生総数は3年間で約806万人にのぼる。

団塊ジュニア世代は、団塊の世代の人たちが生んだ子供が中心になっている世代と言え、第2次ベビーブームと言われる1971年から1974年に生まれた世代を指し、出生総数は4年間で800万人を超えている。

このように団塊ジュニア世代は、団塊の世代より年間の出生数は少ないものの、一般的にその世代の対象となる3年間と4年間を比較した場合の出生総数はほぼ同じと言え、少子高齢化が進む我が国において、今後団塊の世代が続々と介護支援を必要とする状態になった際には、その支援者たる社会資源としても大きな塊であるともいえる世代である。

ところが団塊の世代は、2039年にすべて90歳に達することになり、その数は激減していくと予測される。その時に団塊ジュニア世代が65歳に達するのであるが、わが国には第3次ベビーブームが存在しなかったために、団塊ジュニア世代の次の塊の世代は存在していない。

つまり2040年以降、高齢者や要介護者の数はどんどん減って、必要とされる介護サービス資源の量は、今より少なくて済むことになるが、それ以上に生産年齢人口が減ってしまうために、今よりさらに財源と人材が不足するのである。介護財源不足も介護人材不足も、自然には解消されないために、何らかの手を加えねばならない。

それを見越した制度設計として、制度改正と報酬改定が行われているのである。

逆に言えば、近直の2025年の制度設計は終わり、2040年を見越した制度改正・報酬改定を行っているという意味で、改革をそう慌てて急ぐ必要はないという意味にもつながっている。拙速な制度改正やルール改正は、国民の反発を招きかねないので、緩やかに目立たぬように変えていこうという意志が国の中には存在するのである。

だから近直の介護保険制度改正では、被保険者範囲・受給者範囲の拡大とか、「現役並み所得」・「一定以上所得」の判断基準変更とか、軽度者の生活援助サービス等の地域支援事業への移行とかという重要課題をすべて先送りしているのである。それらは2040年に向けて、徐々に変えていけばよいというわけだ・・・。

次期報酬改定も、コロナ禍という特別の事情が影響を与えた改定となっており、通常改定とは異なるという認識が広がっている。抜本的な変革は先送りして、今緊急に必要な手当てだけをとりあえず行って終わりにしようという意志が働いても仕方がない状況に思える。

そういう意味では、今回の介護報酬改定では大きな改革的な動きはなく、小幅な改定にとどまるのではないかと予測している。むしろ2024年度の介護報酬改定は、診療報酬とのダブル改定となるので、ここで大幅な見直しが行われるのではないかと予測している。

問題は改定率である。コロナ対応を含めた感染予防対策費を含めて、関係者の間ではプラス改定への期待の声が高まる一方だが、甘い見込みは立てられない。

むしろコロナ禍で経済状況が悪化し、税収が不足し、企業体力の低下が労働者の賃金水準低下につながっている現状を鑑みると、介護報酬改定への負の影響は避けられないのではないかという悲観的観測が強まっており、全体でマイナス改定にならなければ良しとすべきではないかという空気も漂い始めた。

現に9/4の審議では、基本報酬の引き上げは、40歳以上の保険料(2号被保険者の保険料)の引き上げに直結し、労使折半分の負担増を懸念した経済界からは、報酬をプラスする分はマイナスすべき分から補填する形で行うように要望が出されている。

14日の会合でも、認知症の人と家族の会が報酬引き上げには一定の理解を示しながらも、プラス改定により低所得者への負の影響が広がることへの懸念の声が挙がっている。

さらに言えば、今春改定された診療報酬は、薬価を1.01%下げたうえで本体報酬を0.55%引き上げるという実質的なマイナス改定であったのである。この数字は、患者負担を合わせた全体の医療費が約2.116億円程度引き下げられることを意味するものであるが、コロナ特例を含めて、介護が医療より優遇されるという保障は何もない。

一縷の望みは、菅内閣の最重要課題としてコロナ対策が掲げられたことだ。

そうなると感染予防対策費を報酬に上積みしてのプラス改定という期待も高まるわけだが、まだまだ予断を許さない状況がしばらく続きそうだ。

どちらにしても次期報酬改定は、政治的ウルトラCがない限り小幅な改定で終わりそうだ。介護関係者が期待するコロナウイルス感染予防費の積み上げもわずかで、お茶を濁して終わるかもしれないことを念頭に置いておくべきであり、経営努力としての経費節減策などに、引き続きと止めていかねばならないことを、事業経営者は心にとどめておくべきである。
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