6日(日)から、「介護施設等の人員配置基準緩和(削減)に関するアンケート」を行っている。その結果はこちらからも見ることができるが、すでに多くの方々の協力を得ていることに、この場を借りてお礼を申し上げたい。

このアンケートは20日まで実施して、21日以降に最終結果を報告するブログ記事を書く予定なので、まだ投票がお済でない方は引き続き投票をお願いしたい。

さて配置基準緩和と言えば、4日の介護給付費分科会では居宅サービスの人員配置緩和(削減)もテーマとなった。

人口の少ない過疎地や中山間地域などでは、利用者・職員ともに十分な確保が難しく、介護サービスの運営を続けていくことが一段と難しくなっているという事情があり、特例として事業所の運営基準を緩和して欲しいというものである。

例としては、訪問看護ステーションの看護職員の人員配置基準を緩和すれば、事業者の新規参入や人手不足による撤退の阻止につながるとの主張があったが、これに対して日本医師会の江澤和彦常任理事は、「サービスの質を担保する観点から慎重に判断すべき。安易に緩和しない方がいい」と指摘。さらに東北福祉大学の井口経明客員教授は、「どこの地域に住んでいるかということでサービスの内容や質に差が生じることは適切でない」とくぎを刺した。

しかし僕はこれらの反対意見は、的外れで誤った意見だとしか思えない。

当日議題に挙がった小規模多機能型居宅介護の一時的な定員増加案には首をかしげるが、しかし訪問サービス(訪問看護及び訪問介護)の人員削減案は、サービスの質の低下にはつながらず、むしろ訪問サービスを過疎地域を含めた全国津々浦々まで行き届かせる唯一の方法だと思う。

これは施設配置職員の緩和とは意味合いも、結果も全く違うものだ。地域による配置基準緩和に反対する人たちは、そのことを全く理解していないと思う。

というのも現在の訪問サービスの人員配置基準が、社会資源となる訪問看護ステーションや訪問介護事業所の立ち上げ・経営の足かせになっているという事実があるからだ。

運営基準において訪問介護事業所は訪問介護員を、訪問看護ステーションは看護職員を、それぞれ常勤換算方法で二・五以上配置しなければ開設さえできない基準となっている。

介護サービス事業所とて、事業を立ち上げてからすぐに利用者を十分に確保するのは難しいといえ、徐々に利用者を増やしながら安定経営につなげていくことになるが、訪問サービスの場合、利用者がゼロの時期でも、2.5名以上の常勤換算配置は必要である。それは収入ゼロの時期であっても、配置職員を維持する支出は不可欠になるという意味であり、ある程度基礎体力のある経営母体ではないと、事業自体を立ち上げることが難しいという一面がある。

しかしそれは将来、顧客を確保することで何とかできる経営課題ではある。が・・・人口の少ない過疎地や中山間地域などでは、その地域に利用者自体が少なく、その地域限ってサービス提供を考えるならば、常勤換算2.5人もの職員で対応する必要がない地域もある。

そのような地域に訪問サービス事業所を立ち上げて、経営を維持することは難しい。そのため訪問サービス事業者がまったく存在しない過疎・中山間地域が多くなっているわけである。

そうした地域には、人口が多く利用者確保が見込まれる地域に設置された訪問サービス事業所に、サービス提供を依頼して、利用者は遠方から駆けつけてくれる訪問看護師や訪問介護員によるサービスを受けているわけである。

しかし移動時間に保険給付がされない介護保険制度では、長時間の訪問移動時間をサービス事業者が嫌ったり避ける傾向にあることも事実だ。そのため過疎・中山間地域でサービス提供してくれる事業所が見つからないというのが、居宅サービス計画担当者や利用者・家族等の大きな悩みの一つになっている。

その解決を図るために中山間地加算等を創設するなど、こうした地域への訪問を促す方向に介護報酬も改定されてきたわけであるが、それだけで訪問サービスの資源が行き渡っているという現状ではない。

しかしそんな問題も、配置基準緩和の地域特例があれば解決する可能性が高くなる。

仮に訪問看護や訪問介護事業について、特定地域に限って常勤配置1名で設置・運営が可能となれば、その地域に住んでいる看護師や訪問介護員が、自分の住む地域に住む人のためだけに、自分が頑張って訪問サービスを提供しようという動機づけを持ち、サービス事業所を立ち上げて経営に乗り出すかもしれない。

そんな人がいない地域であっても、他の地域に事業所を構えている訪問サービス事業者が、それらの地域に一人配置の事業所をサテライト事業所的な意味合いで設置する可能性も高まる。

訪問サービスの特例地域基準緩和は、今の基準よりは確実に過疎・中山間地域のサービス資源を増やす結果につながるのである。

しかも定員が決まっている施設サービスの配置基準を下げるのと異なり、訪問サービスは基準を下げたからと言って、一人の職員が担当する利用者数が多くなって業務負担が増えるわけではない。担当する利用者数は同じだけれど、担当する職員が減る(というか2.5も必要な地域である)と言ことなのだから、この削減はサービスの質の低下にはつながらないのだ。

施設サービスの場合は、配置職員を減らすことによって、一人の職員が担当する利用者が増え、業務負担も増加するから、サービス質低下の懸念が生ずるわけで、訪問サービスはそうではなく、配置人員に応じた利用者の数の選択ができるという意味でも、配置人数削減の意味合いも結果も全く違うのである。

訪問サービスの配置職員削減の地域特例を、サービスの質云々を理由にして反対する人は、この根本を理解していないとしか言いようがない。

勿論一人事業所の場合、その人が病気等で休んだ場合にサービスが提供できないという懸念はある。しかし最初からサービスが存在しないのと、一人事業所でサービスが空白となる恐れが生ずる状態は、どちらが社会全体のサービスの質を低下させる問題だろうか。そもそもそうした懸念は払しょくできる可能性を持つものだ。例えばそうした事態を想定して、他のサービス事業所と連携の協定を結ぶなどで解決可能な問題である。

人口減少社会に入っている我が国では、過疎地域も限界集落も増え続けるのだ。しかしそこに訪問サービスを必要とする人がゼロになるとは限らない。そういう人はサービスを受けるために、家族から離れて、住み慣れた地域を後にしなければならないケースが多くなる。

そうしたケースを少しでも減らすのも、「地域包括ケアシステム」の目的ではないのだろうか。さすれば特定地域の訪問サービスに限っては、配置規準緩和が強く求められるのである。
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