コロナウイルスの影響で、2月以上審議が中断していた介護報酬改定議論は、6/1から再開された介護給付費分科会のリモート審議が駆け足で進められ、7月に入ると各種事業者団体ヒヤリングや各サービス種別ごとの論点整理まで一気に駆け抜け、第1ラウンドが8/27の審議でほぼ終了した。
その進み具合を見ると、スケジュールを遅らせないことが重視され、アリバイ作りの浅い審議に終始したように感じざるを得ない。各委員の意見の違いを、議論に沿ってまとめようという動きも見られず、反対意見は放置したまま既定路線に向かって進むだけというように、国の思惑に沿った形で、その掌の中で審議が進められた観が否めない。
それでも審議は次のステップに進められるわけである。そして今後の最大の論点は、「令和2年度介護事業経営実態調査」の結果の検証に移っていく。
2018年度の介護報酬改定が、介護事業経営にどのような影響を与えたかという結論を導き出して、基本サービス費の単価や、加算報酬のあり様が決められるわけだが、肝心の調査結果の集計に対する懸念が生じている。調査結果の回収率が低く、回答期限の6/30を過ぎてもなお、厚労省は回答を受け付けるとしていたが、その後回収率は高まったのか?信頼がおけるデータと言えるほどのサンプル数となっているのかは闇のまま、強引に審議が進行するやもしれない。
どちらにしても年内に報酬改定の基本的考え方の整理・取りまとめが行われて、年明けの早い時期に諮問・答申が行われる流れに変わりはなく、2021年4月からの報酬改定はスケジュール通りに行われていくことになる。
今のところ次期報酬改定は、政治的ウルトラCがない限り、小幅な改定で終了し、コロナウイルス感染予防費の積み上げもアリバイ作り程度のわずかなものに終わると予測される。
さて27日の介護給付費分科会は、介護保険施設(特養・老健・介護医療院・介護療養型医療施設)の論点整理が行われたが、その中で特養での介護ロボットなどの活用と人員配置基準の緩和が議題に挙がった。
この配置基準緩和は介護サービスの場で働く職員にとっては何のメリットもなく、僕自身は強く反対していることは、下記の記事等で再三指摘してきたことであるが、関係者の皆さんには今一度参照願いたい。
(参照:介護事業を巡る経営者の論理と従業員のニーズの乖離 ・ 人員基準緩和は介護報酬改定にどう影響するか)
27日の審議では、厚労省が現役世代の減少と介護ニーズの増大の同時進行で人手不足が続くとの見方を示し、「介護ロボット・ICTの活用や基準の緩和」を論点として掲げたことを受けて、ユニット型施設の整備を加速させる施策とリンクした議論が行われた。
ユニット型特養の現行の運営基準は、1ユニットあたりの入居定員は概ね10人以下と定め、夜勤配置職員数は2ユニットごとに1人以上、日中配置職員数は1ユニットごとに1人以上の職員を配置する決まりとなっている。この基準を1ユニットあたりの入居定員を15名程度まで増やし、日中の職員配置数を2ユニットで職員1人とすることなどが提案された。
この案に対し健康保険組合連合会は前のめりで賛成、老施協も賛成、認知症家族の会は懐疑的、医師会は反対という風に意見が分かれたようだ。
賛成している人たちはそのことが本当に職員の利益になると思っているのだろうか。これが実現すればユニット型特養の夜勤者は、今まで一人で20人に対応していた状態から、一挙に30名の対応を強いられることになる。今でさえ十分に利用者対応ができているとは言えない状況であるのに、見守りロボットがいくら機能したとしても、30人への対応を一人で行うことが本当にできるのだろうか。
日中に至っては、10人を担当していた職員が一挙に30人を担当することになる。眠っているわけでもない重介護利用者の排せつや移動・移乗の対応をせねばならないのに、一人の担当者が十分にそのような業務をこなせるとでも思っているのだろうか。
老施協の代表委員は、「施設側で安全管理や適切な体制がとられるのであれば、ユニット型施設の基準緩和は職員の休暇取得などにも資する。推進して欲しい」と要請したそうであるが、休暇が増えても、勤務中の業務負担はさらに増加することになることは明白だ。人が減った分をカバーする介護ロボットはいまだに存在していないからだ。そうすると業務負担増加という過酷な状況の中で、現在就業中の職員のバーンアウトはさらに増えるのではないかという検証作業をしているのだろうか・・・。
そもそも賛成派は、ロボットの性能をどれだけ把握しているのだろう。まさか人に替わるロボットが本当に存在していると勘違いしているわけではあるまい。介護ロボット・介護支援ロボット・見守りセンサーの違いは分かっているのだろうか。
この議論を受けて現場の職員の間では、「ドラッグロック」でもしない限り無理だという声が広がっているが、それらの声に耳を傾けているのだろうか。
介護職員の方々で、この配置基準緩和に賛成する方はどれほどいるのだろう・・・。この基準緩和が実現した場合を想像すると、僕にはそこに疲弊する職員の姿しか見えない。それは介護サービスの場を、荒野のように荒れた寒々しい場所にするものとしか思えない。
仮に基準が緩和されたとしても、介護職員の業務負担をきちんと考えてシフトを組む視点を忘れないでほしい。闇雲に現場の配置職員数を削るという暴挙に出る事業経営者がいなければ良いと願うのみである。
※登録から仕事の紹介、入職後のアフターフォローまで無料でサポート・厚労省許可の安心転職支援はこちらから。
※リスクのない方法で固定費を削減して介護事業の安定経営につなげたい方は、「介護事業のコスト削減は電気代とガス代の見直しから始まります」を参照ください。まずは無料見積もりでいくらコストダウンできるか確認しましょう。




北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。
・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。
・masaの最新刊「看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。
国のやることは、無謀な戦争を行った過去と変わらず...
下々には無理を押し付けて、できないのは、精神が弛んでいるとの論理...
このままで良いのか、国民一人一人が真剣に考えて行動する必要がある
masa
が
しました