対人援助の職業には、エビデンスにはならないスキルが求められる。
愛とか優しさはエビデンスにならないし、そんなものに頼る介護は信用できないという人がいるが、時として大きな問題を解決する糸口が、支援者の愛情ある対応や、ちょっとした優しさであったりする。
優しさに欠ける対応によって、認知症の人の行動心理症状はエスカレートする。愛のない言葉かけによって、看取り介護を受けて旅立っていかれる人やその家族が泣いている。
愛情を積み上げ、優しさを忘れないだけで、介護の質は高まり、課題解決にもつながっていくのだ。
そのような不確かなものに頼らなければならない不安や不確かさを嘆くのではなく、愛情や優しささえもスキルに組み込んでしまえばよいのだ。それを持てない人は介護のプロとして認められないようにすればよいのだと思ったりする。
なぜならば対人援助とは、まさに人に相対する職業であり、決して理論化できない人の感情と正面から向き合わねばならないからだ。
人の感情は、こうした場面でこのように対応すれば必ずこうなると言えるものではなく、同じ場面で同じように対応しても、相手が違えばそこで生まれる感情も異なってくるのだ。
喜怒哀楽とは、それぞれの個性ある人の内面に生まれるものなのだから、同じ場面・同じ状況でAという人が喜びの感情を抱いているのに、Bという人は哀しみを抱いてしまうことがある。
そうした不確かな感情に向き合う私たちは、どんな感情に向かい合っても、その感情に巻き込まれずに冷静に対応するというだけではなく、感情ある人と向き合う仕事に喜びを抱き、その感情をできるだけ温かく受け止め、やるせない思いを包み込む人であることが求められるのだろうと思う。
それが他人のプライバシーに踏み込んで生活の糧を得ている私たちの責任だと思っている。
だからと言って自分の性格を変えて優しい人になれと言っているわけではない。そんなことは不可能だし、そんな必要もない。
対人援助に携わる人々にも個性があって、性格的に優しい人と、そうは言えない人があるのは当然だ。しかしどんな職業も自分の性格を丸出しにして全うできる職業はないのである。それぞれの職業のプロとしてスキルを磨く必要があるのだから、利用者に愛情と優しさを持って接するというスキルを身に付ければよいのだ。
愛情を持って優しく接する方法論の中にこそ、私たちが求める答えが存在するのだと信じることが大事だ。
優しさの優という文字は、人を憂える(うれえる)と書く。それは、「よくないことになるのではないかと心配する気持ち」を表す言葉である。向かい合う利用者の様々な事柄に憂える気持ちを持つことが大事だ。私たちが憂えることをしないで放置すれば、壊れてしまう人がそこに居るかもしれないのだ。そうしない唯一の方法は、憂える私たちがそこでできうる限り、愛情と優しがある態度で接することだ。
だが人に優しくするためには条件がある。人に優しくするためには、自分に強くなる必要がある。他の感情に負けないで、愛情を持ち優しさを忘れないという強い心が必要だ。
私たちは自分の中に渦巻くあらゆる感情に身をよりかけることができる。怒りにかませて粗暴にふるまうことほど楽なことはない。自分の感情を抑えたり、自己覚知しようとする努力が必要ないからだ。しかしその感情をぶつける相手が、自らの職業として支援の手を差し伸べる人であれば、そこで関係性は途絶え、私たちの職業が目指すゴールにも決してたどり着くことは出来なくなる。それは職業人としてあるまじき態度であると言ってよい。
優しさに徹する人は、「格好つけてる」・「勘違いしている」・「ポーズがうまいよね」などと様々に揶揄され、時には批判を受けることさえある。しかしそれは優しさを失わないで利用者に接することができない愚か者のやっかみに過ぎない。自分ができない行為に嫉妬する能力の低い人間の戯言に過ぎないのである。そのような愚者の戯言に負けて流されてしまわない強さが必要なのだ。
だから自分に強くなって、優しくなる必要があるのだ。
他人になんか強くなる必要はない。虚勢・意地・暴言・暴力・粗暴。どれをとっても私たちの仕事に必要なものはない。
そんな覚悟を持って、毎日人に向かい合うことを続ける先に、新しい未来が生まれるのだと信じてほしい。きっとそれはあなた自身を照らす光にもなるだろう。
登録から仕事の紹介、入職後のアフターフォローまで無料でサポート・厚労省許可の安心転職支援はこちらから。
※リスクのない方法で固定費を削減して介護事業の安定経営につなげたい方は、「介護事業のコスト削減は電気代とガス代の見直しから始まります」を参照ください。まずは無料見積もりでいくらコストダウンできるか確認しましょう。
※別ブログ「masaの血と骨と肉」と「masaの徒然草」もあります。お暇なときに覗きに来て下さい。
北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。
・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。
・masaの最新刊「看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。