長年収益を挙げながら事業を続けている経営者の方々は、人に秀でた才能をお持ちの方であると尊敬に値する。それは介護事業に限ったことではない。

優秀な経営者であればあるほど、社会貢献という視点をお持ちになっておられるような印象もある。商品を単に売るだけではなく、その商品によって社会のある部分のベクトルは、確実に人類の発展に向かうことを信じて商品提供している姿勢が垣間見える。

そうした経営者は、ただ単に収益を挙げて事業経営を続けるために躍起になっているだけではなく、そこで働く社員の暮らしの質の向上とか、暮らしを護るという責任を全うするという姿勢を常に持っている。その姿は凛々しいと思える。

介護事業経営者も、そうした矜持を持って経営にあたってほしいと思う。

介護サービスは対人援助であり、介護サービスという目に見えない商品は、まさに人類の幸福追求のために存在するということを忘れないでほしい。そして介護サービスそのものは、人間によってしかできないこと、機械が替わって提供できないサービスを提供する行為なのである。そうした職業にあt図触る従業員は、何よりも宝であるということを、建前ではなく本音で感じて経営にあたってほしいと思う。

なぜこんなことをわざわざ書くかというと、利用者の福祉にも、従業員の暮らしぶりにも全く関心がなく、自分の懐具合だけにしか興味がない介護事業経営者が実際には数多く存在するからだ。

それはもしかしたら措置制度の負の遺産かもしれない。

例えば措置時代の社会福祉法人経営なんて誰でもできたと言ってよい。事業経営しなくとも、運営だけをしておれば、措置費だけではなく各種補助費用等が潤沢に手当てされ、どんな運営をしようと単年度赤字の心配はなかった。むしろ剰余金(現在の繰越金)が一定額を超えると、「民間職員給与改善費」がカットされることになるので、それを恐れて年度末にいらない物品でも、ともかく何でも購入して収益を一定額以上に挙げないようにしたものである。

そんなエセ経営者がまだ残っていたり、そんなエセ経営者の姿勢しか学んでいない人が、介護事業経営者になったりしている中で、社会貢献にも従業員福祉にも目を向けない経営者がたくさん存在している。

当然そのような人による事業経営が行き詰まるのは当然だ。有能な職員がそうした事業者から離れていき、経営状況が目に見えて悪化していたりする。

例えばある特養では、数年間連続して単年度赤字会計となっているのに何ら手立てを講じていない。そこの経営者にその法人は危機的状況にあると指摘すると、「自分が経営している間は、繰越金を取り崩していけば全く問題ない」と堂々と主張したりする。繰越金を取り崩して繰越金がゼロになった先には、赤字倒産しかない。そうなれば利用者にも迷惑をかけることになるし、何よりその法人の従業員すべてが路頭に迷うことになる。そのような考え方で介護事業経営を続けていることが許されるのだろうか。その法人の評議委員会や理事会は機能していないのではないかと疑問に思うのである。

皆さんが今働いている法人等の理事長や経営者は、本当に皆さんの暮らしを考えて事業経営にあたっているだろうか。そのことにも関心を持っておかないと、ある日急に職を失いかねない厳しい介護サービス競争の時代に入っているので、くれぐれもご注意いただきたい。

経営者や管理職の中には、従業員のことなどどうでもよいという本音を隠して、表面上は良い経営者を装っている人もいる。しかしその化けの皮がはがれたのが今回のコロナ禍である。

感染予防は大事だと言いながら、それは利用者が減って収益が減ることを恐れた結果でしかなく、一番大切な利用者や従業員を感染症から護るという視点がないから、感染対策は現場に丸投げで、知恵もお金も出さない経営者が、従業員を心身崩壊の瀬戸際まで追い込むケースが少なくなかった。

あのマスク不足の時期一つとっても、従業員を護ろうとする経営者とそうでない経営者の違いが目立った。従業員をウイルスから護るために、マスクの欠品を出せないとして日本中を駆け回ってマスク調達している経営者がいた一方で、就業中のマスク装着を義務付けしたにもかかわらず、事業者としてマスク不足の対策は全くとらずに、仕事中に装着するマスクの調達は従業員個人の責任とし、マスク購入費用も従業員に個人負担させるというひどい介護事業者もあった。

経営者は介護の最前線に立ってウイルスと戦う必要はない。しかし経営者は最前線で奮闘する従業員が安心して働くことができる環境を整えるための指揮を執るべきだし、そこに臨時の費用を集中投下する判断は経営者にしかできないのだから、その責任を放棄してどうすると言いたい。

従業員たる自分を護ってくれない会社や経営者は、自分を搾取するだけの存在にしか過ぎないことを、すべての従業員は知るべきである。

自分の気に食わないことが少しでもあったら職場を替えようとか、目先の給与だけで職場を選ぼうとか、自分のキャリアやスキルアップに結び付かない転職を繰り返すことは、決して得にはならないし、精神上の「徳」にも結び付かない。それはこらえ性がなく、適応力の弱い人間に自分を貶める結果にしか結びつかないので、くれぐれの安易な転職は戒めてほしい。

しかし搾取されるだけの職場を見限って、自分の能力に見合った評価をしてくれる場所を選ぶことができれば、自分のスキルはもっと高まり、それがよりパフォーマンスの高い社会貢献につながるかもしれない。

介護職員の方々は、従業員を護ろうとする意識が無い介護事業者や経営者を見限って、自分で職場と経営者を選ぶことができる環境にある。介護事業における転職は、そうしたポジティブな視点から考えるべきである。

人の本性はチャンスの時より、ピンチの時に現れやすいとも言われている。今回のコロナ禍でその本性がむき出しになって、周囲の人々を幻滅させた人がそこかしこに居るということがないように祈りたいものである。
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