不足感が増す介護人材をどう確保するのか(前編)より続く》
人材不足を解消できている介護事業者は、おしなべて人を教えるのがうまいという特徴を持っている。自らの事業者内で戦略になるように人を育て、育った人がさらに後輩を育てるという仕組みができているのである。

介護職の魅力や、やりがいを伝えることができ、仕事を教えるのがうまく、後輩を引っ張っていく人望もあるリーダーがいる職場の定着率は高いということも云えるであろう。

逆に言えば、根拠のない指導に終始し、感情的に怒ることを指導と勘違いしている人が多い職場は、頼れる先輩がいないということになり、すぐに仕事が嫌になって辞めてしまう新卒者が多いというのが、介護福祉士養成校の卒業生を数多く送り出している経験から言えることである。

そうであれば人材が育成され定着する職場の条件とは、新人教育がうまい人が偶然そこに居るという職場ではなく、新人を育てることができるスキルを持った教育担当者を育てるというシステムが先に存在しなければならない。そのうえで、新人を育てる仕組みが言語化され根拠に基づいた育成教育がされていることが重要だ。

そもそも人を教えるにはスキルが求められるのだ。経験があれば誰でも新人教育ができると考えてはならない。感情的に怒りをぶつけるタイプの人間に教育役は向かないし、「見て覚えろ」は教育の質を担保しない。

人材を育てようとするなら、法人内に人材確保と育成を担当する部門を設け、教育役となり得るスキルがある人材を見極め、教育係をつくる担当者を置くことが重要である。その部門が教育係を育成することになるが、教育係が一人しかいなければ指導できない場面や日ができてしまうことを考えると、複数配置していつでも指導可能な状態にしておくことが大事だ。勿論、教育係だけで新人全員を毎日担当できるわけではないので、教育係は自らが新人教育に直接あたるのみならず、自らが担当できない新人を担当させた介護職員の指導役にもなるという役割も持つ。

だからこそ教育係には、役割に応じた待遇を与える必要もある。例えば特定加算は同じaグループで配分に個人差があっても良いので、教育係はより大きな配分にしたり、給与に手当を設けたりすることも大事だろう。ここにお金をかけることは法人の財産をつくることなので、決して無駄にはならない。コンサルタント会社や派遣会社に支払う無駄金を、そちらに回した方がよっぽど良い将来図が描けるだろう。

つまり法人として介護現場のリーダーになり得るスキルのある人材を見極めて、そうした人材を教育係として育て、その教育係が介護の場で新人等の教育に当たるという構図を描くことができるシステムを構築せねばならないのである。

教育係が中心となって行う実務指導はOJTが中心となる。OJTとは具体的な仕事を通じて仕事に必要な知識・技術・技能・態度などを意図的・計画的・継続的に指導することになのだから、人によって教え方が違ってはならず、「根拠ある指導」が行われなければならない。仕事の手順はどのような目的や意味があるのかを言葉で示すことも必要とされる。

そのためにOJTツールとして介護マニュアルが必要になるが、多くの事業者でマニュアルがあってもOJTに使っていないという現状がある。その理由は、書かれている内容が雑多で統一性がなく、わかりづらいという欠点を持ち、実用的なマニュアルになっていないからだ。

そこで僕は介護プロフェッショナルキャリア段位制度の(基本介護技術)を参考にした介護マニュアルを作成して、OJTツールとすることを推奨している。

例えばそれを利用して、食事介助のOJT指導ツールを具体的に作るとすると、「食事前の準備」・「食事介助」・「口腔ケア」の3項目に分けて指導ツールを以下のように作成できる。

1.「食事前の準備
声を掛けたり肩を叩いたりするなどして、利用者の覚醒状態を確認する。
嚥下障害のある利用者の食事にとろみをつけたか確認する。
禁忌食の確認をする。
飲み込むことができる食べ物の形態かどうかを確認する。
食べやすい座位の位置や体幹の傾きはないか等座位の安定を確認する。
顎が引けている状態で食事が取れるようにしたか確認する。

2.「食事介助
食事介助の際には、必ず椅子に座って利用者と同じ目線の高さで介助し、しっかり咀嚼して飲み込んだことを確認してから次の食事を口に運ぶ。
食事の献立や中身を利用者に説明する等食欲がわくように声かけを行う。
利用者の食べたいものを聞きながら介助する。
自力での摂食を促し、必要時に介助を行う。
食事の量や水分量の記録を行う。

3.「口腔ケア
出来る利用者には、義歯の着脱、自分で磨ける部分のブラッシング、その後のうがいを促す。
義歯の着脱の際、利用者に着脱を理解してもらい、口を大きく開けて口腔内に傷をつけないよう配慮しながら、無理なく行う。
スポンジブラシやガーゼ等を用いた清拭について、速やかに行い、利用者に不快感を与えないように注意する。
歯磨きや清拭の後、口腔内を確認し、磨き残し、歯茎の腫れ、出血等がないか確認する。

以上のように評価マニュアルの文言を少しだけ修正するだけで、介助項目ごとに指導すべき内容が明確になる。当然、教育係をはじめとした全職員が、このマニュアルに沿ったケアを実践できなければならないわけだから、介護の質もマニュアルレベルで担保できることになる。

食事介助は、食べさせるだけなら介護経験のない人でも誰でもできる。そのため一部の事業者では、就業初日から技術や注意点も教えることなく、いきなり食事時間に先輩職員の傍らに新人職員を置いて、先輩の姿を見なながら、わからないことを聴きながら、「ながら介助」させることをOJTだと勘違いしている。しかしそれでは正しい介護技術は身につかないし、新人職員は自分のやり方に自信を持てないまま、不安を抱えて介護を続けなければならない。やがてその状態は、我流の介護を良い介護技術だと思い込むか、何もうまくできないと放り出すかのどちらかにつながりかねないのである。

だからこそOJTツールに基づいた、言語化された方法で根拠ある指導を行う必要がある。そうすることで新人職員は安心して介護技術を覚えられ、仕事の手順はどのような目的や意味があるのかを言葉で伝えられる先輩職員に信頼感を持つことができ、仕事が面白くなって、仕事を続けようと思えるのである。

だがマニュアルに基づいたOJTだけで、新人職員が不安なくモチベーションを保ち続けることは出来ない。それ以外に人を育て、育った人が定着するためには何が必要なのだろう。(明日の後編に続く)
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