介護サービスに従事する人の中には、利用者の家族に対しては丁寧語で接しているのに、利用者に対してはタメ口でしか会話できない人がいる。

認知症でない人には丁寧語を使っているのに、認知症の人に対応するときのみタメ口を使う人もいたりする。

そういう人たちは無意識に相手を見て言葉遣いを変えているという意味になる。それは人を差別していることにほかならず、対人援助職としては最も恥ずべき行為であると言える。

そうした無意識の差別意識を持つ人たちは、相手の状態が変化すると、途端に態度を変えてしまうかもしれない。それは人として許される態度とは言えないが、そうした態度に心を殺されてしまう人が数多く存在するというのが、この国の現実でもある。そうした国が先進国と言えるのだろうか・・・。

先日書いた、「ALSの女性に対する嘱託殺人容疑で医師逮捕の報を受けて」という記事の中で、被害女性について紹介しているが、彼女がツイッターに書いていた内容が続報として報道されている。

リンクを貼った記事に書いているように、被害女性となった林さん(51歳)は、ALSを発症する前はバリバリのキャリアウーマンとして活躍されていた方である。そんな彼女がツイッターでの投稿を開始したのは、病気が発症して思うように体が動かなくなってからである。

そこには、「ツイートも視線入力のパソコンを使ってるのですごく時間がかかる。もっと言いたいこといっぱいあるのに」(2018年5月3日)という嘆きの言葉も記されている。

そして大人の重度障害者が子どものように扱われているというツイートに対して、「看護婦さんにも多いんだよね。幼児に話しかけてるの?と思う」と反応し、「難病があろうが障害があろうが、一人の人間として尊重され、尊厳をもって扱われなくてはならないはずだ」・「介助者や医療従事者が、障害者や高齢者や患者に対して、上から目線のパターナリズムを発揮するのは暴力」(2018年5月31日)というメッセージを発している。

云うまでもなくパターナリズムとは、強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益のためだとして、本人の意志は問わずに介入・干渉・支援することをいう。林さんは自分の身に置き換えて、そのことに強く憤りを感じていたわけである。

自分の担当ケアマネジャーに対する憤りもツイートしている。

林さんは訪問看護を利用していたが、担当の訪問看護師が、独居で介護を受けていた林さんの慰めになるのではないかと、猫を飼うことを提案したことがあったそうである。そのため訪問看護師の元に温和な保護猫の子猫を引き取り、トイレなど最低限のしつけをした後、林さんと同居を開始する段取りをとって、その実現を図ることを看護師が提案し、林さんもそのことを望んだそうだ。

ところがこの計画に、猫アレルギーのケアマネジャーが「ヘルパーの中にもネコアレルギーがいたらどうする」とか「毛が残る」とかいう理由で「ケチをつけた」ために、その提案は実現しなかったそうである。

そのことについて林さんはツイッターに、「なんでこんなことまで指図されなきゃいけないんだ!とみじめになり無性に腹が立って気付くと号泣してた」と記している。

担当ケアマネジャーは、今このツイッターを改めて読んで、どう考えるのだろうか・・・。そもそも本人が希望し、周囲に協力者がいるのに、ケアマネという立場でしかないものが、その希望をつぶすような働きかけをすることが許されるのだろうか・・・。ケアマネジャーという立場を誤解しているのではないかと問いたい。

林さんは担当の訪問介護員に関する思いも次のようにツイートしている。「65歳ヘルパー 体ボロボロなのは私のトイレ介助のせいなんだと責める 施設行きになる あそこに入ったら殺されると脅される むかついてもやめろと言えない 代わりがいないから 惨めだ。

介護を行うことを職業にしている人間が、その仕事で生活の糧を得ているにもかかわらず、顧客であるサービス利用者に対してなんという暴言を吐いていたのだろうと唖然とする。自分の体の不調の不満を、全身まひで動けない人に対しぶつけ、あたかも林さんの存在自体が問題であるとするかのような発言は、人として決して許されない発言であると言ってよい。

このような周囲の差別的な態度に、林さんの心は日増しに傷ついていったのではないだろうか。キャリアウーマンとして活躍していた頃には決して受けたことがない失礼で配慮のない対応を受け続けることによって、林さんの気持ちは、「死」に向かってまっしぐらに向かっていったのではないだろうか。一刻も早くそこに至りたいという思いにつながっていった結果が、「安楽死へのあこがれ」・「自分の殺人を嘱託する」という行為につながったことは想像に難くない。。

死ぬ希望が実現する社会より、生きる希望に胸を膨らますことができる社会の実現が大事だと言うが、自分より力の弱いもの、立場の弱いものに、上から目線での、「施し」のような介護の実態が存在し続ける限り、そんな社会は実現不可能だろう。

そして介護サービスのサービスマナー式が欠如し、タメ口が親しみのある態度だと勘違いする人が存在する限り、この差別と偏見は消滅することはないだろう。

まったく保健・医療・福祉・介護業界の民度の低さにはあきれるばかりである。
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