道内の特養において、夜勤中に信じ難い虐待事件が起こった。

北海道恵庭市の特別養護老人ホーム「恵庭ふくろうの園」で勤務する吉光翔平容疑者(28歳)が、男性入所者(78歳)の耳たぶを引きちぎったとして傷害の疑いで逮捕された。

事件が発覚したのは7月13日。午後9時ごろ施設から、「入所者が転んで、右の耳たぶが取れていた」と119番通報があった。当時、同園では5人の介護職員が夜勤業務に就いており、駆けつけた警察署員が聞き取り調査を行ったところ、同容疑者が被害者の耳を引っ張るなどの暴行を告白したものである。その際容疑者は、「介助中にトラブルがあってやった。仕事でストレスがあった」と供述している。

なお被害男性は、耳たぶがちぎれた状態で手当を受けているが、命に別条はない。

こうした事件が起きると、明らかになる虐待は氷山の一角だとか、介護施設はどこも似たり寄ったりで見えないところで悪が潜んでいるかのように思われてしまうが、多くの介護施設は、虐待とは無縁の人を護るサービスを提供しており、私たちは海を漂う氷山ではないと言っておきたい。

容疑者の、「仕事でストレスがあった」という発言も安易に受け取ってほしくない。時として介護という仕事が、他の職業にもましてストレスがあり、だからこそ虐待が横行しがちの職業なんだと評価されたりするが、それも大間違いだ。

仕事のストレスなんて、どんな職業にもつきものだ。人間が相手となる介護という職業は、その中でもストレスが大きいと考える向きがあるが、人の役に立つ仕事だから介護の仕事に就きたいと希望してきた人たちは、そこでストレス以上に大きな喜びを感じ取ることができる仕事でもある。自分が大した仕事もできない状態でも、「ありがとう」と声を掛けてくれる高齢者の方々に、僕自身がいくら救われてきたかを思い返しても、それは事実であって理想でも幻想でもないと言い切れるのである。

少なくとも介護職員についていえば、数字のストレスはない。売り上げ目標の達成に汲汲として、上司からパワハラまがいの指導を受けるなんてことは一切ないわけだ。

精神科病棟に務めた経験がある人なら理解できると思うが、「うつ病」に罹患している人の中には、営業売り上げ目標という数字のストレスで病気が発症した人が実に多いという事実がある。そうしたストレスとは無縁の介護職が、他の職業に比して特別ストレスが大きいという論理は成り立たない。

そもそも介護という仕事にストレスを感じたとしても、そのうっぷん解消の手段として、利用者への虐待行為に及ぶということ自体が異常なことだ。ましてやこの容疑者は、人の耳が引きちぎられるほど強く引っ張っているのだから、それはどれだけの力かと言いたくなる。それほどの力で人の耳を引きちぎらねばならないほどのうっぷんとはいったい何なのだろうか。異常な行為としか言いようがない。

それはそもそもこの容疑者が、介護という職業に向いていなかったのではないかという疑いを持たざるを得ないことにつながり、果たして虐待の場となった特養の運営法人は、きちんと適性を判断して職員を雇用し、適切な形で教育を行っていたのかという疑問につなげざるを得ない。

この特養の経営母体は、社会福祉法人いちはつの会というところだが、ここは事件現場となった恵庭市の特養のほか、千歳市でも地域密着型特養を経営している。僕は千歳市の老健に務めている際に、両方の施設ともに仕事で訪問したことがある。その時感じたことを今、改めて思い出している。

どちらの施設も新しい立派な新しい建物であるが、そこで働く職員はお世辞にも接遇マナーが良いとは思えなかった。若い職員が高齢者に向かって、「タメ口」で接している態度を見て、僕にはその姿が無礼な馴れ馴れしい態度にしか思えなかった。それは一部の職員だけの姿なのかもしれないが、そうした職員の姿に目をつぶって放置して起きた結果が、今回の事件の根幹に存在する問題ではなかったのだろうか。闇を創り出していたのは、容疑者自陣のみならず、嫌なものを見ようとしない法人の曇った眼ではなかったのかを、法人自身が検証しなければ駄目だと思う。

このように接遇意識・サービスマナー意識のない場所であれば、いつこの事件の加害者のような職員が現れても不思議ではないのである。それは法人への信頼を著しく損ねる事態へと発展し、場合によっては取り返しのつかない事業経営上の汚点になりかねない。

だからこそ常日頃からの職員に対する、「サービスマナー教育」は不可欠である。

今週は月曜日に、「クラスター感染発生施設の実像に触れて思うこと」という記事を書いて、親しみやすさと、無礼で馴れ馴れしい態度を勘違いしている実例を示しているが、こうした勘違いを介護業界全体からなくしていかないと、介護という職業や介護事業が、闇と一体の仕事だと思われかねない。

そうしてはいけないし、志を持っている介護職の方々には、自分の職場をそのような無法で無礼な職場のままにしておかないようにくれぐれもお願いしたい。職場がマナーのない態度を直そうとしない場所であるならば、そうした場所には一日も早く見切りをつけて、もっと人の暮らしを護る場所を探してもらいたい。

闇のある場所にいては、自分が闇に眼をつぶってしまい、真実が見えなくなってしまうのだから・・・。
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闇


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