15日に開催された社会保障審議会・福祉部会では、介護人材の確保に関連して、国が介護福祉士を目指す外国人留学生の支援に力を入れていく方針が示されているが、これは介護福祉士の養成校ルートへの国試義務化策送り策とリンクした方針である。

介護福祉士については、2022年度から介護福祉士養成校ルートにも国試を義務化することになっていたが、先の通常国会では国試義務化を5年間先送りすることが正式に決定されている。

これは養成校に通う留学生が大幅に増加している現状を考慮したもので、この流れを止めたくないという国の思惑が強く働いたために、関係団体の反対の声を押し切る形で決められた先送り策である。

昨年度の介護福祉士養成校の入学者全体に占める留学生の割合は約3割に至っているが、一方で留学生にとって国試はハードルが高く、合格率は昨年1月実施分で27.4%にとどまっている。この状態で国試を義務化すれば、養成校への留学生の入学の動機づけが著しく削がれ、増加傾向に水をかける結果につながることが懸念されたものである。それは即ち、我が国の介護人材確保をより一層厳しくするものだからだ。

例えば「特定技能」を持つ外国人が日本の介護事業者で働ける期間は5年で、基本的にはその間に家族の帯同は認められない。しかし介護福祉士の資格を取れば永住への道が開け、配偶者や子を呼ぶこともできるようになる。だからこそ国試義務化されていない状態の現在の養成校ルートは、外国人には魅力的なルートなのである。

そのため国は、国試義務化が先送りされた期間で、国試対策の教材を作成する経費への補助など、必要な財政措置も行いながら教育現場を後押ししていく考えを示したのが15日の方針の意味だ。

つまり介護人材は日本人だけで必要な数を確保できないのだから、より一層外国人労働者が働きやすくするために、国は質より量を選択する道を選んだということになる。先送りした5年間で、教育効果が著しく高まって、外国人の国試合格率が高まる見込みなんてないのだから、この間に実際に行なわれることは、再度の先送り策か国試のハードル下げである。

もともと国試義務化の意味は、介護福祉士の資格の価値や社会的評価の向上を目指したものだが、今、国試義務化を実現したとしても、介護福祉士の数が減るだけで、質は変わらないだろうというのが国の本音だ。それはとりもなおさず、今現在介護福祉士の資格を持って仕事をしている有資格者に対する評価でもある。

このことについては僕も国と同じような意見を持っており、「何が介護福祉士の資格価値を貶めているのか」で指摘しているところであるが、試験を受けて合格した介護福祉士が顧客マナーのない態度で、「してやっている」的な、素人まがいの介護レベルである限り、国の評価は変わらない。

そもそも国試義務化で介護福祉士の社会的評価を高めようと唱えている本人が、介護のプロとしてお客様に対応するにふさわしい仕事ができているのかという問題なのだ。あなたの仕事ぶりは、国家資格にふさわしいスキルが伴ったものなのですかと問われていることを、すべての介護福祉士が自覚しなければならない。

ところで国家資格とえば、現在、都道府県の資格でしかない介護支援専門員の資格は、国家資格化されないのかという議論が根強くある。国家資格化されるべきだと主張する人も多い。

しかしその可能性はゼロだ。

そのことは昨年8月に徳島市で開催された日本介護支援専門員協会の全国大会での、大島老健局長との質疑応答で明確な答えが出されている。

介護支援専門員を国家資格にすべきではないか?」という参加者からの質問に対し、局長は、「ケアマネの役割は非常に大切で、個人的には国家資格にふさわしいものと思っている」というリップサービスを行ったうえで、「国家資格がどんどん出来たこともあって、役所側からもう法案を出さないという国のルールがあります。」・「厚労省がその法案を国会に出すことは難しい」と述べている。

介護支援専門員の全国大会という資格者が集まる大会で、「その資格を国家資格化する法案提出は難しい」と述べている意味は、「厚労省には全くその気はない」という意味でしかない。

そうなると介護支援専門員資格が国家資格化される道は、「議員立法」以外なくなるわけだが、資格者団体の全国組織の組織率が2割程度の資格を国家資格化しよう思う議員がいるはずもなく、政治的に国家資格化へのいかなる流れも造られることはないだろう。

国家試験を受けずに資格が取れる介護福祉士・・・その介護福祉士という国家資格を持っただけでは資格試験が受けられず、実務5年を経てやっと試験が受けられて、その試験に合格して初めて名乗れる介護支援専門員という資格・・・。その資格が介護福祉士の下位資格にあることには大きな矛盾を感じざるを得ないが、現状は介護支援専門員の資格は、永遠に都道府県資格として据え置かれるという見込みなのである。

資格は仕事をしてくれないが、だからと言って国家資格というものの質や重みがあいまいになってよいはずはない。しかし資格取得のハードルの高さや、アウトカム評価が資格の段階を表しているわけではない現状において、私たちは何にその価値を求めればよいのだろうか。

すべての価値観が覚束無く、不確実な社会で誰かの信頼を得るためには、資格というものだけに頼るのではなく、己自身のスキルを鍛え、情報発信能力を鍛えていくしか方法はないのではなかろうか。
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