先日の豪雨浸水被害で犠牲となった熊本県球磨村の特養に住まわれていた14名は、水没した1階で全員泥水をかぶり、車いすに座ったまま床に倒れた状態で動かなくなっていたそうである。あまりに早い浸水により、2階への避難が間に合わなかったのだろう。

何とも言いようのない悲劇である。人生の最期に泥水で埋もれていく恐怖を味わわねばならなかった方々に対して、心よりご冥福をお祈りしたい。合掌。

身体の不自由な方々の避難介助に努めた職員の皆様も無念で悲痛な思いであることが容易に想像がつく。想定外の浸水速度の中で、職員の皆さんも死の恐怖におびえながら最善の避難誘導に努めたことと思うので、どうか自分を責めることがないようにしてほしい。

遠く離れた場所に住む私たちには、後方支援しかできることはないのかもしれないが、せめてできることを最大限にしていこうと思う。被害にあった皆さんには、くれぐれも希望を失わないでいただきたい。

さて今日の本題に移ろう。

来年4月に迫った介護報酬改定に関連して、いよいよ議論は総論から各論に移っている。8日に開催された社保審・介護給付費分科会では、認知症グループホーム(以下.GHと略)の夜勤配置基準が議論の俎上に上った。

夜勤配置人数の基準は、「厚生労働大臣が定める夜勤を行う職員の勤務条件に関する基準」において定められてるが、GHの場合は、「指定認知症対応型共同生活介護事業所ごとに夜勤を行う介護従業者(指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十八年厚生労働省令第三十四号)第九十条第一項に規定する介護従業者をいう。)の数が、当該事業所を構成する共同生活住居(介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第八条第二十項に規定する共同生活を営むべき住居をいう。)ごとに一以上であること。」と定められている。

要するに、ユニットごとに夜勤者を1名置かなければならないという基準で、1ユニットのGHは1名夜勤でよいが、2ユニットになれば2名の夜勤者が必要になるということである。GHの1ユニットの定員は9名なのだから、対利用者比で言えば9:1の夜勤配置が求められているのである。

一方で特養の例をみると、ユニット型ではない従来型特養の場合は、利用者25名に対し夜勤者が1名であるし、GHの体制に近いユニット型地域密着型特養の場合も、「二のユニットごとに夜勤を行う看護職員又は介護職員の数が一以上であること」とし、2ユニットで夜勤者1名で良いという基準だ。地域密着型特養のユニット定員は、GHより1名多い10名なので(運営基準では定員の定めは、おおむね10名以下とされている。)、対利用者比は20:1である。

このようにGHの夜勤配置数の基準は、他のサービスと比べて手厚く規定されているのである。しかしそれは即ち経営側の大きな負担となっているという意味だ。

今回厚労省がこの配置規準緩和を取り挙げたのは、深刻な人手不足を背景に、日本認知症グループホーム協会が2ユニット以上の事業所について、見守りセンサーなどの導入を前提として、「夜勤1人+オンコール宿直者」の体制を認めて欲しいと要望しているためである。

実は以前の基準では、2ユニットのGHは、「夜勤1人+オンコール宿直者」で良かったわけだ。それが変えられたのは、ケアの品質上の問題ではなく、GHでの相次ぐ火災事故を受けて、避難誘導の体制が問題となったということが深く関連している。そのためユニット人数が少ないGHの夜勤配置数が、多サービスと比べて手厚くなってしまったのである。

しかし事故対応は宿直職員でも可能なわけで、以前の体制が決定的な欠陥となっていたわけではないく、GH協会の要望は決して不当要求ではないと思う。

事故対応は単独ユニットの場合に、たった一人の夜勤者が避難誘導を優先した際に、通報がおろそかになったり、逆に消防署への通報の間に、全く避難誘導ができないという問題なので、むしろ単独ユニットではない複数ユニット経営の推進や、原則2ユニットしか許されていないGHの規模拡大議論に結び付けていくべきではないかと思う。

夜勤は労働基準法上、夜勤入りの日と夜勤明けの日の2日間を労働日とみなさねばならず、夜勤明けは休日とはみなされないため、多くのGHでは、「夜勤 明け 公休」という勤務シフトを取っているが、これだと夜勤の2名が明けの日、その翌日に勤務できないということになる。

しかし宿日について労働基準法第41条第3号は、「労働時間、休憩及び休日に関する規定は、適用しない。」としており、当日日勤の職員がそのまま宿直して、翌日の宿直明けの日も連続して日勤勤務に就くということが可能になるわけである。

夜勤1名を宿直に変えるだけで日勤勤務者の確保数が容易になるのだから、人手が少ないGHには大きなメリットと言えよう。

勿論、職員からすれば、日勤勤務者の確保が容易になるメリットとともに、宿直前後に通常勤務を行い、実労働時間は増えるのに、夜勤手当が減る分、給与が減ってしまうというデメリットも考えられる。しかしそれは経営側と労働者双方が、よく話し合ってその職場に一番マッチした方法を模索すればよい問題だと思う。

当日の分科会では、日本看護協会や医師会の委員が、災害対応や介護の質を理由にして、1ユニット1名夜勤の維持を訴えているが、災害対応は前述したように、そもそも単独ユニット経営を認める限り、大漏れの問題であり、今回の要望によって災害対応に漏れが生ずる問題ではないし、質を云々するには、あまりにも他のサービスとの基準差が大きく、要介護3以上の利用者25名に対して、一人夜勤で対応している特養の存在から比べると、今回の変更は大きな問題とはならないと言えるのではないだろうか。

この議論はまだ結論が出ていないが、2ユニットのGHは、「夜勤1人+オンコール宿直者」で良しとする改正に進むことを応援したいと思う。

ただしGH関係者の皆様には、この基準緩和が実現するとしたら、それは報酬減の理由にもされるということをも覚悟していただかねばならない。それが証拠に過去の夜勤配置規準厳格化に際しては、加算が新設されたり、算定方法が緩和されるなどして、GHの報酬増とセットで行われてきているのである。

今回の改正だけ、夜勤の配置人員は減らしたけれど、報酬は上げますよという都合の良いことにはならないわけである。ここを間違った捉えていると、思惑が外れて経営が立ち行かなくなる可能性だってないとは言えないわけだ。

どちらにしてもGHは、介護人材不足の中で人件費だけではなく必要経費が増大しており、経営に大きな影響を及ぼしている。そんな中で大幅な報酬アップは期待薄であるのだから、こうした基準緩和によってコストを削減していく必要が高いと思うし、同時に運営コストの削減という意味で、固定費の見直しを図っていただきたいと思う。

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