来年4月に迫った介護報酬改定では、同時に関連の基準改正も行われる予定になっている。

昨日書いた、「機械や技術が人に替わることができるという幻想社会が生み出すもの」でお知らせした骨太方針の中に記された、「介護事業におけるテクノロジーの利用を促しながら、人員配置規準を見直す」という内容は、この基準改正に影響を与えるものだ。

ところが一部の介護経営者の中には、この提言に対する危機感が薄い人がいる。配置人員基準が緩和されれば事業を立ち上げやすいし、人件費が少なくて済む分、収益がアップすると考える人がいるのである。

人員配置規準を引き下げて、そのような効果が見込まれるのは、訪問介護と訪問看護における最低人員配置規準を引き下げることにおいてのみである。

しかし国がこれから行おうとすることは、訪問介護と訪問看護における最低人員配置規準は据え置いたまま、主に介護施設の人員配置規準を引き下げたり、居住系サービス全体と滞在系サービスの夜勤配置規準を下げられないかという検討だ。

これが実現した先には、介護職員の疲弊が広がることはリンクを貼りつけた昨日の記事でも指摘したとおりである。そうなると介護の職業はますます若者が敬遠する職業になっていき、介護人材の成り手はさらに減少していくだろう。その結果、介護事業者は収益を得る以前に、事業経営そのものが成り立たなくなるのである。

財政事情を考えると報酬の大幅アップは期待できない中で、人件費や感染対策費は増えていくのだから、今後の介護事業者は、できるだけ事業規模を拡大してスケールメリットを生かした多角経営が安定経営の柱とならざるを得ない。そうであるにもかかわらず、介護人材の更なる減少と枯渇につながりかねない配置基準緩和は、事業規模の拡大の足かせになりかねない。

このような方向が介護事業者や職員のメリットになるなんて考える方がどうかしているし、利用者にとっては、今より介護サービスの質は下がることはあっても、上がることはないというデメリットにしかつながらないのである。

そもそも人員配置の見直しも含めて、見守りセンサーやインカム、ICT、ロボットなどの現場への導入を後押しするという方針は、「骨太の方針」に盛り込まれ、この内容が最初に公表された場が、「経済財政諮問会議」であることを理解すれば、自ずとその本当の目的がわかりそうなものである。

骨太の方針」とは内閣が目指す方針であり、その中では自然増が年間1兆円強と見込まれている社会保障費を、5.000億円程度に抑制しようという大前提があり、そのための具体策が示されるものである。そこでは財政規律の確立を目指すという題目を掲げて、国民の痛みを正論化する様々な方針が示されているのである。

経済財政諮問会議」は、財務省主導で行なわれてきた予算編成を、政治主導型に移行することを狙いとして立ち上げられた内閣府の協議機関であるとはいえ、その実態は政治家のパフォーマンスの場で、財務省と馴れ合いのやり取りが続けられている場所である。そこで介護事業へのテクノロジー導入促進と配置基準改正をセットで行うという方針が示されたということは、それが財務省の意向も汲んだ内容であることは想像に難くなく、これが給付抑制策と連動したものであるということが明らかである。

つまり配置規準を緩和して、今より少ない人員配置で介護サービスが提供できるようにした暁には、基本サービス費を引き下げようとする意図が見え見えであると考えなければならない。

介護報酬の中身はブラックボックスである。その費用構造は国は決して示さないのが大方針だ。しかし人員配置がここに明確に影響していることは明らかで、それは新型特養(個室ユニット型特養)が初めて報酬設定された折に、3:1の人員配置基準は従来型特養と同様としたものの、報酬設定に当たっては、新型特養は看護・介護職員配置を2:1とできる基準で設定したことを、職能団体との協議の場で、当時の厚労省の担当者が明らかにしたことでも証明されている。

介護業界の関係者の間では、コロナ禍でクローズアップされた、感染予防対策費を基本サービス費に上乗せして、報酬単価が上がるプラス改定への期待値が日増しに高まっている。現に厚労省の内部でも、感染対策費用を報酬改定に盛り込まないと介護業界のみならず、国民の理解も得られないのではないかとみる空気も生まれている。

しかし配置基準改正はその足かせになりかねない問題で、基本サービス費用を据え置いた場合でも、配置規準を下げたのに報酬単価を下げなかったのは、感染予防対策費をそこに含めたからだという理屈が成り立つわけである。

こうして次期報酬については、自立支援介護としてのアウトカム評価報酬を新設したうえで、経済対策と連動する、「介護ロボット導入加算」等を新設しようとしているわけだ。(参照:現状の介護ロボットに過度の期待を寄せてはならない

このように配置基準の見直しは、プラス改定にしないか、プラス改定とされた場合でも改定幅を抑えるためのアリバイ作りに使われる可能性が高いと言える。

そのあたり裏事情も理解したうえで、関係者の皆様には、各論議論に入っている介護報酬改定論議に注目していただきたい。
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