今月2日にまとめられた政府の規制改革推進会議の答申には、「介護現場における介護職員によるケア行為の円滑的な実施 」という項目がある。(54頁

ここには、「酸素マスクのずれを直すことや、膀胱留置カテーテルのバッグからの尿廃棄などの行為は、医行為に該当するか否かが判然とせず、介護職員が実施を躊躇してしまう」という実情が述べられたうえで、『平成 17 年には、「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」が発出され、血圧測定や点眼薬点眼等の医行為ではない行為が整理され示されたものの、通知の発出から 15 年が経過し、当該通知に記載されていない行為について も医行為への該当性を改めて整理し、医行為でない行為については介護職員が安心 し、かつ、円滑に実施できるようにする必要がある。』として、医行為でない範囲を改めて明確にすることが提言されている。(※ちなみに平成17年は2005年である。

平成17年(2005年)通知では、医療行為ではないとする具体例が示されているが、そこから漏れる医療行為かどうかがあいまいな行為は、介護サービスの場に多々存在しており、そうしたグレーゾーンの行為を強いられる介護職員は、そのことによって個人的な責任を問われないかという不安を持って仕事をしていることが多い。そうであるがゆえに医療行為なのか、そうではない行為なのかという区分のグレーゾーンをできるだけなくして、黒白をはっきりさせた状態にすることは、介護職員の不安の解消につながるのである。

そういう意味では、今回の規制改革推進会議の提言は介護職員等のニーズと一致するもので、その方向へという動きが出てきたことは朗報と言える。

ただそれだけで終わってほしくないというのが、僕の個人的な希望でもある。その先に、一定の条件下で介護職員が行うことができる医療行為(特定行為)の範囲の見直しも見据えてほしいと思うのだ。

医療行為である「痰の吸引」と「経管栄養」に関連する行為が、一定の条件を満たした介護職員に認められたのは2012年4月からであった。

そのことによって「喀痰吸引等研修」を受講した介護職員は一定条件化で各痰吸引や経管栄養を実施できるようになったし、2012年以降の介護福祉士養成課程には、「喀痰吸引等研修」が養成カリキュラムに含まれているために、資格取得と同時に一定条件化でこれらの行為が可能になっている。

しかし高齢化がさらに進行する中で、高齢者の居所の選択肢が増えているのが我が国の現状である。それは日常的に医療器具を使用しながら暮らしている人が、医療機関以外の様々な場所を暮らしの場としているという意味だ。

毎日、医療行為を必要としている人が、医師や看護師のいない場所で暮らしている際に、一番頼りにするのは家族等のインフォーマルな支援者の医療行為支援だ。身内の場合は、医療行為を行っても、「業:なりわい」ではないから法令違反とはならず、罰せられない。

しかし同じ行為を家族ではない介護職員が行えば罪に問われる。お金をもらわずボランティアでそれらの行為を行った場合でも、他人の反復継続行為は「業:なりわい」と同じだとして許されていないのである。

そんな中で最も支障を来しているはインスリン注射である。

男性高齢者は糖尿病を持病として持つ人が多いが、きちんと血糖値を管理しさえすれば、日常生活に支障なく過ごせる人も多い。それらの人にとってインスリンは命綱である。その自己注射ができなくなった際に、替わって注射してくれる家族がいれば問題ないが、高齢化の進行によってその家族がいないために施設入所を余儀なくされる人もいる。

介護職員のインスリン注射が認められていないことによって、看護師配置のないグループホームに、インスリン注射が必要な認知症の人が入所できない事案は多い。看護師配置がある特養でも、朝早い時間のインスリン注射ができないという理由だけで、入所を断られるケースも少なからずある。それは糖尿病で血糖値管理が必要な人の居所の選択肢を狭めているということだ。

インスリン注射を特定行為として、一定の条件下で介護職員が行えるようにするだけで、糖尿病を持病に持つ人の暮らしの質は大幅に改善するのである。

そもそもインスリン注射は、現在特定行為として認められている各痰吸引等と比較しても、安全に簡単に行うことができる行為でもある。気管カニューレ内の各痰吸引という難しい行為まで許されているのに、手が震えて不自由な高齢の妻が替わって注射できるインスリン注射がなぜ認められていないのか疑問だ。

是非この問題の解決に向け、一歩でも前進することを望みたい。

蛇足であるが、今はインスリン注射は介護職員が行うことが認められていないことを肝に銘じてほしい。インスリン注射が簡単な行為だからと言って、誰かに命じられて密かに違法行為を行っている人がいるとすればそれは許されないし、業務命令であっても身体への侵襲行為を実際に行った人には必ず罪は及ぶし、損害賠償責任も免れないので、決して行わないように強く警告しておく。

そもそも違法行為を命ずる事業経営者や管理職は、職員の不利益を全く顧みていないという意味なので、そういう職場があるとしたら、一刻も早くそこから離れて別の職場を探すべきである。
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