昨年10月に新設された「特定処遇改善加算」について、厚生労働省は25日に、介護予防サービスを除く本年1月審査分の各サービス種別別の取得率を公表した。
以下が公表された数字を表にまとめたものである。(※筆者講演スライドより)
このように全体の加算率は57%で、6割を切る結果になっている。
最も取得率が高いのは特養で、逆に最も低いのは介護療養型医療施設となっている。
介護療養型医療施設の加算取得率が低い理由は、同施設が医療機関の病棟の一部として存在していることか原因ではないだろうか。医療機関の職員には特定加算は適用されないため同じ医療機関の中で、同加算による処遇改善できる職員とできない職員との差が生ずることから、介護療養病床の職員とそれ以外の職員との整合性がとれないとして算定しない施設が多かったのではないだろうか。
特養と老健の10ポイント近い差も、老健が医療機関に併設されていることが多いことから、療養型施設と同様の理由で老健の加算取得率が下がったことによるものと思われる。
こうした職員間の差・整合性がとれないという理由で、加算算定を見送っている施設・事業所は療養型医療施設や老健以外にも存在する。特に多角経営で医療機関と介護事業の両者を経営している主体で、このような傾向がみられている。
つまり特定処遇改善加算を算定していない事業者の中には、加算算定要件をクリアしながら、あえて加算を取得していない事業者が存在するという意味だ。
しかしそれはこの加算によって、給与等の処遇改善がされる権利のある職員にとって、あまりに不誠実な対応と言えるのではないのか。
この加算は経験・技能を有する介護人材の更なる処遇改善を目指して新設したものであるが、勤続10年以上の介護福祉士がいない場合であっても算定できることになっている。「経験・技能のある介護職員」についても、必ずしも経験10年を必要とせず、法人の裁量で広く認めて良いとされているのに加え、「経験・技能のある介護職員」に該当するグループを設定しない場合は、その理由を届け出て、月額8万以上もしくは年額440万以上の要件をクリアする職員がいなくても算定・支給できるものだ。
つまり従前の処遇改善加算を算定し、キャリアパス要件等をクリアしさえすれば算定できる加算で、決して加算率が6割にも満たない状態が当たり前と考えるような加算ではないのである。もっと多くの事業者が加算を算定できるはずなのである。
それを医療機関職員等との待遇差・差別感を理由に算定しないというのは、あまりにも情けない姿勢である。なぜならそれは事業経営努力を放棄して、低い待遇に職員全員を横並びさせる、「劣等処遇」といってよい状態だからである。
同じ事業者間の職員が、働くエリアが所管する法律の違いで、待遇に差ができるのは問題だと考えたい気持ちはわかるが、それは加算算定できない職場の人々に丁寧に説明を行ったうえで、加算分が支給される職員の待遇がよくなることは、将来的にそれ以外の職員の待遇アップにもつながるのだということを真摯に丁寧に説明すべきだ。
実際に加算以外の事業収益は、加算支給された職員を除いた他の職員に回せる可能性は確実に増えているわけだから、全体の待遇アップも夢幻ではなくなるのだ。しかし算定できる特定加算を算定しないとした時点で、その可能性は消滅するわけであり、それは加算支給されない職員の待遇改善の芽さえ摘む結果にしかならない。
地域密着型通所介護の算定率もあまりに低すぎる。何度も云うが、この加算は勤続10年以上の介護福祉士がいない場合であっても取得できる加算であり、職員数が少ない小規模事業であっても加算を取得し、ルールに基づいて全職員に加算分を支給できるのだから、給与アップがわずかな額だとて、算定支給するのが経営者の責務である。
全体の算定率が6割未満に留まっている要因としては、算定要件が多く複雑なこと、事務作業が負担となることなどが指摘されているが、何を馬鹿なことを言っているのだと言いたい。
加算算定しない理由が本当にそうだとすると、それは事務担当者の能力が問われる問題で、そんな事務員(あるいは施設長)はいらないっていう話である。
この程度の要件を複雑だと言っている人間は、事務処理の能力がないと言ってよい。加算算定事務処理が大変だと言っている職員以上に、介護サービスの場で直接介護に携わる職員は大変な労働を強いられているのだ。
この程度の要件をクリアせずに、頑張って仕事を続けている職員に、国が支給してよいと言っているお金を渡す努力をしない事業者に未来はない。算定支給努力を怠っている介護事業経営者は職員を捨て駒にしか思っていないのではないか。
ということで、この加算を算定していない事業者に勤めている方、特定加算金の支給という恩恵を受けていない方々は、経営者や管理者にその理由を確認することをお勧めしたい。
そして今後も加算算定する意志が無かったり、怪しかったりする場合は、早急に次の転職先を探しておくに越したことはない。
なぜならそれは経営者責任を果たしておらず、職員を大事にしていないという意味なのだから、そんな事業者に長く勤めても、自分にとって明るい未来はないという意味だからである。
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しかし「手続きが面倒で申請しない」なんていってる事業者に勤めている理由は無いですね。即退職すべきです。
「どんな仕事でもそんなにすぐ辞められたら世話ないでしょう。職場への責任感、信頼があるからすぐに辞められないんですよ」と反論する人がいました。
しかし、仕事に対する責任感や事業者や利用者や家族からの信頼は当然大事でしょうが、それと同時に職員の生活も大事です。こういうのを「やりがい搾取」って言うんですよね。われわれの仕事はボランティアではありません。
masa
がしました