現在の政権は、介護問題にほとんど興味のない政権のような気がしてならないが、唯一、「全世代型社会保障」というスローガンを掲げて取り組む問題については関心を寄せているように思う。

その問題を検討する会議の第2次中間報告が25日に示されている。

その資料の介護分野に関する提言内容を見ると、先週金曜日に書いた、「介護のデジタル化を加速させる波は何をもたらすのか」で指摘した通り、介護サービスにおけるテクノロジーの活用や文書の簡素化・標準化・ICT等の活用などという文字が躍っている。

介護事業の実情や、問題の本質を知ろうとしない有識者によって、こうした方針が勝手に決められて、具合策に結び付いていく先に何が起きるのか。人間に替わってをテクノロジーが介護業務を担い、人手がいらなくなるという幻想理論に基づいて、人員配置規準が下げられて困るのは利用者だけではない。より苦しめられるのは幻想の空間でより重労働を強いられる職員である。(参照:人員配置基準緩和で喜ぶ職員なんて存在しない

それにもまして心配なのは、「(3)介護サービスの効果を正確に測定するためのビッグデータの整備」という部分に示された内容である。

これは次の介護報酬改定で国が目指す、「自立支援介護」の根拠となるデータについて触れている部分だが、それが果たして科学的介護と言えるものかは大いに疑問だ。エビデンスがない問題に対して、国が集めるビックデータから答えを出すと言っても、わずかな期間で抽出したデータの根拠は実にあいまいである。しかもそのデータは国にしか集まらず、他の機関なり専門家なりの評価や検証が行われないところで、勝手に標準化されてしまうのである。

ということは『自立支援介護=アウトカム評価の加算の新設』がメインテーマとなる次期報酬改定では、国が求めるデータを出す事業者を評価するという方向にしかならず、国が示した方法論に乗った事業者だけが評価されるということになりかねない。

介護サービスの質は本来利用者が評価する問題であるはずなのに、そんなことは全く顧みられずに、国が決めた方向に向かう介護事業者だけが評価されることになる。それに乗れない利用者は自己責任という言葉で切り捨てられていくわけである。

それを懸念してか、この提言については介護給付費分科会委員などから、『自立偏重のサービスが広がったり、クリームスキミングが顕在化したりする結果を招かないように』というように釘をさす声が挙がっているという報道もある。

ちなみに、『クリームスキミング』とは経済用語で、「収益性の高い分野のみにサービスを集中させること。」であり、自立偏重のサービスに対する批判としてこの言葉を使っている意味は、「国民に耳当たりの良い言葉だけをピックアップして、その部分を評価することで適正さをアピールするだけで、本来求められる利用者の豊かな暮らしという実質を伴わない介護報酬であってはならない」という意味だと思うが、どちらにしても介護報酬の方向性議論の中で使う言葉としては適切な用語とは言えない。もっとわかりやすい日本語で議論することを望みたい。

専門用語や新しい言葉を使っていれば、崇高な議論をしていると勘違いしているような会議や委員会に、国民は冷笑しか与えないだろう。

さてそのような中で朗報といえそうなニュースもある。自民党の新型コロナウイルス対策本部が25日公表した提言において、介護サービス事業所の感染拡大を防ぐ対策を強化する観点から、介護報酬の評価も検討していくよう促し、7月にまとめる今年度の「骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)」に反映するよう政府に求めている。

政権与党の第1党がまとめた提言だから、それなりに影響力があることを期待したい。

感染予防対策費用は、結果が数値化できるものでもなく、目に見えない地道な取り組みに関わる費用であり、アウトカム評価の報酬体系にはなじまないものである。そうであるがゆえに基本報酬単価の引き上げが是非とも必要になるのだから、是非基本サービス費の引き上げを期待したいところだ。

仮に感染対策費が報酬評価されるとしたら、どの程度の額かが問題となるが、その場合今からデータを集めて評価する時間的余裕はないので、「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(介護分)の実施について 」の「別添  新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(介護分) 」で示されている、各事業別のかかり増し費用上限が一つの目安になるのではないだろうか。

しかし介護報酬の特徴の一つは、「中身がブラックボックス」であるということであり、費用明細は示されることはないので、「今回の改定報酬においては、各事業別に感染対策費を上積みして設定した」と言われればそれまでだ。だからこそまだまだ予断を許さないところでもある。

どちらにしても今後の介護事業では、マスクや消毒薬のストック量を増やす対策も含めて、感染予防対策費用は従前より増やしていかねばならない。利用者確保で競合しているサ高住や有料老人ホームにおいては、感染対策が顧客確保の売りになるだけではなく、逆にその取り組みに欠けているとみなされた事業者からは、顧客が離れ経営危機をもたらす要素になるだろう。

そういう意味でいえば、報酬改定の動向がどうなっても、対策費の全部を国が見てくれるという期待はできない。だからこそ感染予防対策費をかけてなお収益を確保するためには、事業者独自の経営努力が不可欠であり、何度もこのブログで指摘しているように、経営コスト・固定費の削減は介護事業経営にとって絶対必要になってくる。(参照:電気料金のコストカットの方法 ・ ガス料金のコストカットの方法

経営母体が大きければ大きいほど、固定経費の削減は大きな収益と結びついていくので、ここはおざなりにできないことを肝に銘じてほしい。
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