厚労省がAdvance Care Planning(アドバンス・ケア・プランニング= ACP)の愛称を、「人生会議」と決定してから約1年半が過ぎた。
その愛称は徐々に浸透してきているが、同時に誤解も伴って理解されていたりして、言葉だけが独り歩きしている傾向もみられる。
それは「会議」という言葉に対する誤解ではないだろうか。会議というと、関係者が一度に会合して話し合うイメージが強いが、「人生会議」に限って言えば、そうした方法も一例としてはありだが、人生会議そのものは会議自体を指すものではなく、一連の過程を指すものである。
人生会議とは、自分の意思決定能力が低下する場合に備えて、あらかじめ終末期を含めた今後の医療や介護について、本人と家族が医療者や介護提供者などと一緒に話し合って考えておき、本人に代わって意思決定をする人も決めておく過程(プロセス)を意味している。
だから話し合いは何度も行われてよいし、話し合いは会議形式ではなくても良いし、話し合うメンバーも固定されるとは限らない。
しかも一度決定した意思は、自分の置かれた環境等に応じて何度も変えることが許されるものだ。そもそも人の気持ちは揺れ動くものだし、その時に絶対だと思っていた決定事項も変わって当然だ。人生会議とは、そうした揺れ動く人の心の支えになるものでなければならない。
この書式は、僕は特養の施設長を務めていた際に作成して、ACP(当時は人生会議という愛称がなかった)の過程で記入していただいていたものだが、この宣言書を何度も書き直す人がいた。時には1日に3度も書き直しのお手伝いをさせていただいたこともある。それでよいのだ。何度も書き直すということは、何度も繰り返し自分の人生の最終盤の生き方を真剣に考えるということなのだから、それは十分認められるべきなのである。
またこうした宣言書は、介護事業者の何らかの責任を回避するものではないことを理解せねばならない。法的にはこうした宣言書は意味のない書式だ。この通りにしなくとも誰も罰せられない。同時にこうした書式によって、施設の責任なり義務なりが軽減されるものでもないのだ。こうした宣言書はあくまで、宣言を行う方の生き方を支えるために作成するものであって、宣言する人が安心して人生の最晩年を生きるために利用されるものなのである。
その点を勘違いしてはならない。
人生会議を経て、自分の気持ちが固まった時点で、人生ノートを書くこともあるだろう。(参照:雲仙市の人生ノート)
これらの活動は、「終活」と表現されている。終活とは人生の最期を迎えるにあたって行うべきことを総括した活動を指すものだ。それは自分の死と向き合い、最後まで自分らしい人生を送るための準備でもある。
そこでは終末期に意思を伝えられなくなったときに備え、リビングウイルの観点等から、どのような医療を受けたいのか、口から物を食べられなくなったときにどうするのかなどの、具体的な希望を第3者に伝えて記録しておくことなども含まれる。
こうした終活の重要性を一般市民に伝えるために行われるのが、「終活セミナー」であり、そこには学生から高齢者まで様々な年齢層の人が参加されている。高齢者の方は、自分自身の問題と考えて参加される方も増えている。
コロナウイルス禍によって、こうしたセミナーの機会が減っているのが残念だが、感染症が収束した後には、再び終活セミナーニーズは高まっていくだろう。このセミナーは全国津々浦々で行われているので、僕も講師としてご招待を受ける機会が多い。
しかし僕自身がレクチャーできる会場は限られているので、多くの方々に終活について学んでいただき、地元の高齢者の方々に、終活・人生会議・リビングウイルなどについて伝えていただきたいと思う。
そのことに関連しては、「セカンドキャリアとして終活セミナーの講師になりたい人はいませんか」という記事を、もう一つのブログ、「masaの徒然草」の中で書いているので参照してほしい。
終活や人生会議は、死のために行う活動ではない。それは自分の死を見つめて行う活動であり、過程であるが、それはあくまで人生の最晩年期を心安らかに、豊かに生きるためのものであることを理解してほしいと思う。
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