22日の経済財政諮問会議で、安倍首相は医療・介護のデジタル化を加速させるよう関係閣僚に指示した。
これは新型コロナウイルスの感染拡大によって、以前より更にデジタル化の必要性が高まったことによる指示である。
同会議では介護の具体策にも踏み込み、リモート介護予防サービスの展開やペーパーワークの徹底した効率化、ケアプランAIの活用などが注文された。
これを受けて加藤厚労相も、「介護報酬・人員基準を逐次見直す」と言明すると同時に、現場へのセンサーやICTなどの普及に力を入れると説明している。
具体的には、事業所の指定・更新申請や報酬請求などの大部分をWeb入力、電子申請のみで済ませられる仕組みの構築を目指す。事業所に保管すべき書類のぺーパレス化も徹底し、基本的にオンラインで事足りる環境の整備を図るという構想を、早ければ来年度中にも具体化までこぎ着ける計画を打ち出した。
このことは当然のことなら、介護分野の文書に係る負担軽減にリンクしている。しかしこのブログで何度も指摘しているように、国が取り組む文書削減とは、結果的に事務書式の削減だけに終わっており、介護事業者が本当に必要とする書類の削減にはつながっていない。
介護関係者が最も望んでいることは、看護・介護職員等の直接処遇職員の記録にとられる労務負担が減って、利用者対応の時間が十分とれることに他ならない。このことが実現すれば、もしかしたら現状の体制で、利用者に対して必要なケアが、今以上に可能になるかもしれないし、場合によっては、人員不足の対策としても有効に働くかもしれないわけである。
しかし事務書類がいくら減っても、介護サービスの場には何も関係ないことで、人手が足りないことの対策としては全く無効であると言わざるを得ない。
特に介護報酬には改定の度ごとに新しい加算が創られて、報酬構造が複雑化している。加算算定のためには算定要件をクリアしておく必要があり、実地指導ではそのことが重点的に確認される。そのため介護事業者には、加算要件をクリアしているという証拠としての記録の整備が求められているわけだが、この記録は主に看護・介護職員の業務となってのしかかっているのだ。介護人材不足が叫ばれる中では、こうした看護・介護職員が担っている記録業務減らさねば、介護崩壊の恐れさえ現実化するのではないだろうか。
この危機意識を国や国の会議参加メンバーはわかっているのだろうか・・・。
そんな中で、現場へのセンサーやICTなどの普及が進むことは、夜間の定期巡回回数を減らすなどの一定の業務負担の軽減効果が見込まれる可能性があり、介護事業者は積極的に補助金等を活用して、実用できる機器導入に努める必要あるだろう。
だからと言って見守りセンサーやICTが、介護事業者の日常アイテムとして普及した先に、人員配置規準を下げて、人手を掛けなくて済む介護事業が実現するなどという幻想を抱いてはならない。(参照:人員配置基準緩和で喜ぶ職員なんて存在しない)
所詮、センサーができることとは、何かあったという『知らせ』だけであり、そこで起きたことに対応すなければならないのは、センサーでもICT機器でもなく人間なのである。
ところで国のこうした方針は、次期報酬改定にも反映される可能性があり、前回の報酬改定で議論となった、「介護ロボット導入加算」も再度議論の俎上に上る可能性が高まった。
コロナウイルス禍で経済が低迷している現状の中で、介護ロボット産業は国にとって一縷の望みの綱である。介護ロボット技術は日本が世界一なのだから、日本の介護現場で介護ロボットが実用化され普及すれば、それは世界に輸出できる有力なベンチャー企業を生み出すことにつながるわけである。それは大きな経済効果をもたらし、景気の上昇につながるであろう。よって国は是非とも介護ロボットの導入を進めたいわけだ。
つまりこれは福祉・介護政策ではなく、経済政策の側面が強いことを理解しなければならない。
人に替わって介護ができるロボットができることに超したことはないので、ぜひその実現を図ってほしいが、現状ではそうなっていない。今実用化が期待されている介護ロボットとは、介護をする人を支援する効果はあっても、介護ロボットだけで介護を受ける人に必要なサービスを提供できるようなものではない。(参照:介護ロボット問題全般の記事)
今後10年というスパンを睨んでも、その技術は我々の想像を超えて発達するとは思えない。人間の複雑な関節の動きや、感情表現に追いつくロボットなど想像できないのである。
どちらにしても22日の指示事項は、指示した人の面子を立てるためにも何らかの形で実現が図られていくだろう。介護現場のリモート化は間違いなく進んでいくが、その際に念頭においてほしいのは、電源喪失の際の備えである。
僕は2012年11月に、特養の施設長という身で登別大停電を経験した。【参照:登別大停電の影響と教訓(その1)・(その2)】
その6年後の一昨年は、胆振東部地震にともなう北海道全域のブラックアウトも起こっている。
そのことを考えると、地域全体に影響が及ぶような停電は、決して稀なことではないと言えるのだ。当たり前のことであるが、停電の折には電気に頼り切った業務はすべて停まってしまう。事務処理が1日や2日滞ることは、後で十分とり戻すことが可能だろうが、人に対する介護という業務が、電源喪失の途端に滞るようなことがあってはならない。それは決して後に取り戻せるような問題ではなく、人の命にかかわる問題となりかねないのである。
デジタル化・機械化が進む中では、そのことの備えもより重要になってくる。自家発電機は通常装備品であると考えていかねばならない。
さらに言えば、こうした流れは電気の使用量の大幅な増加をも意味しており、事業経営を考えると、電気料金の削減は、収益上大きな要素となることも改めて意識しておく必要があるのだ。
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