6月1日に行われた介護給付費分科会資料を読むと、【資料3】令和3年度介護報酬改定に向けて(地域包括ケアシステムの推進)の中では、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)に関連した内容が、そこそこのボリュームで記されていることに気が付く。
ACPとは、「人生の最終段階の医療・ケアについて、本人が家族等や医療・ケアチームと事前に繰り返し話し合うプロセス」であり、「人生会議」という愛称がつけられていることは、今更言うまでもない。
地域包括ケアシステムとは、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制なのだから、死ぬためだけに医療機関に入院しないことを目的の一つとしている。
よって地域包括ケアの更なる深化を目指すために、暮らしの場で最期の瞬間まで過ごせるための取り組みが必要とされる。そのため医療機関以外での看取り介護・ターミナルケアが推進され、診療報酬も介護報酬も、その取り組みに対して手厚く加算等が算定できる方向性がとられている。そして看取り介護の知識や技術の獲得のための方策もとられ、医療関係者だけではなく、介護関係者にも終末期支援のスキルが求められていく。
しかしその前提にあるものは、人生の最終段階において、本人の意思に沿った医療・ケアが行われるようにすることであり、その意志に沿った支援が、いつでもどこでも行われるために、保健・医療・福祉・介護に携わるすべての関係者にそのスキルが求められているという意味である。
「人生会議」はその前提創りに重要な役割を果たすものであるのだから、ここにもすべての関係者の参加・助言できることが望ましいのである。
そのために同資料の39頁には、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」 における意思決定支援や方針決定の流れ(イメージ図) (平成30年版)が示されている。この資料にはとても重要な示唆が含まれているので、是非熟読してほしい。
ここでは人生会議(ACP)について、「心身の状態に応じて意思は変化しうるため 繰り返し話し合うこと」と記されているが、このことは非常に重要な部分である。
人生会議(ACP)として確認しておきたいことは、終末期にどのような治療を受けたいかということのみならず、終末期と診断されたら、どこでどのように過ごしたいのかという意思を確認しておくことも必要になる。その際に口からものを食べられなくなったらどうしたいのかという確認も当然必要になるが、その意思確認を一度行なったらそれでおしまいではない。
意思確認できる間は、本人からの申し出がなくとも、心身の変化や環境の変化のたびに、その意志の変更がないかどうかを確認することを大事である。担当する相談援助職は、その役割が自分にあるということを忘れてはならない。
おかしなことに、こんな基本的な理解もない場所で、「看取り介護」と称する、偽物の介護が行われている。経管栄養を望むか・望まないかという意思を、一度確認したら、それを変更するのに大変な手続きを必要とするような、おかしなルールを勝手に作っているところがある。それはあたかも意思決定の確認の手間を省くための事業者都合でしかないかのようだ。
そもそも意思の変更は、意思表示できる人であるなら、その意志を表明するだけで完結されるべき問題で、手続きのいる問題ではない。
人生会議は、この意思確認や、意思確認できない人の意思推定を繰り返し行う過程であり、本人にとって最善の方針を、本人や家族と支援チームが常に確認し合う過程である。
そこで何かを決めたからと言って、支援機関や支援者個人の終末期支援の責任が軽減されることにはならず、自己責任という言葉を使って、本人や家族への責任転嫁のために何かを決めたり、押し付けたりすることは許されないことである。
痛みが出ても人生会議で医療機関に搬送しないと決めたから問題ないなんて言う考えではだめなのだ。終末期の痛みは最も人を苦しめるものなのであり、医療機関で終末期を過ごしたくない人でも、痛みをコントロールするために、医療機関での支援が必要な場合があることを確認して、その方針を定めておくなど、人生会議の主役となる人の人生の終わり方を、安心と安楽な方向に導くものでなければならない。
そんなふうに人生会議は、徹底的に利用者本人利益を追求する場でなければならないのだ。
終末期支援とは、誰かの人生の最終ステージの生き方の質を左右するものである。そこでは専門職としての知識と技術が求められるだけではなく、そこに生きる人に対する関係者の人間愛が求められていることを忘れてはならない。
人は科学だけで幸せになれない。目に見えるものだけで安寧は得られないのだ。介護の職業とは、科学や目に見えるものを超えて、心を寄せる職業なのである。
愛情を見える化するのが介護という仕事だ。
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