今日の参議院本会議で、改正介護保険法案等が可決成立する。今後は成立した改正介護保険法に準拠する形で、来春の介護報酬改定議論が本格化する。

そこでは介護事業者の感染防止策が、報酬に上乗せ評価されるかどうかが一つの焦点となってくる。普段介護報酬アップには辛口意見の全国知事会も、6/1の介護給付費分科会では、その評価に賛同する意見を述べているが、果たしてどうなるだろうか。すべての介護事業所の全職員に手渡される慰労金が、今後の介護報酬にも反映され、職員待遇の更なる改善につながるのかどうかということにも注目しなければならない。

どちらにしても今現在も今後も、感染予防の対策は介護サービスの全事業種別で続いていくことになるわけだ。

ところで新型コロナウイルスの感染が全国的な広がりを見せたのは、2月の終わりころだったと記憶している。そのとき対策が必要になった過程で心配された問題の一つとして、認知症の方々が環境変化に対応できるかということがあった。具体的には、感染予防対策を理解できないことにどう対応するかということや、外出制限等の対策により混乱して症状が悪化するのではないかという懸念があった。

特に重度の認知症の方が多く生活している特養や、グループホームなどではその懸念が大きかった。

現在進行形のケースを含めてそれぞれを検証すれば、そうした懸念が現実となったケースも多い。一方では今現在でも対策が続けられるなかで、思ったほど認知症の人が混乱せず、新しい環境等に適応して、落ち着いた暮らしを送っているケースが多々見られる。

感染予防対策として一番重要となるのは、「手洗い」であるが、その必要性を理解できない認知症の人について、トイレのたびに正しく手洗いができるように誘導・支援できるかということが大きな課題となった。手を濡らすだけで手を洗ったと思い込む人が多い中で、ウイルスを洗い流すことができるように30秒以上もかけて手洗いをすることができるかという問題に対応して、介護の場では様々な試みが行われた。

排せつの直接支援が必要な人や、トイレ誘導が必要な人だけではなく、自力でトイレに行く人についても、排泄後にしっかり手洗いの支援を心掛け、ケアプランにその内容を明記するとともに、手洗いチェック表を作って漏れのないように支援するように徹底したところもあった。

手洗いに集中できず、すぐにその場を離れようとする人には、興味を引く話題で会話しながら手洗いを同時に行ったり、手洗い場所に認知症の人が興味を持っている物品を置いて、そこの居心地を良くする工夫を行なったり、あの手この手を酷使して十分な手洗い行為を日常化することに努めている事業所もある。

コロナ禍以前は、ややもすると見逃されがちであったり軽視しがちであった、「手洗い支援」について、コロナウイルス対策の中で工夫され、その支援方法が確立しつつあることは良いことだろうと思う。一方でいまだに手洗い支援がおざなりにされている事業所には、大いなる反省と対策を求めたい。

制限対応にも事業者間で大きな対応の差異がみられている。

面会制限や外出制限でストレスがたまらないように、人と人の間隔をあけてのグループワークの充実に努めたグループホームでは、従前より認知症に人の表情が豊かになっている。今まで以上に認知症の人に寄り添おうとする職員の皆さんがの姿勢と思いが、認知症の人の心にも伝わっているのだろう。

家族が面会に来れないことが、逆に認知症の人にとっては新たな落ち着きの環境につながったケースもある。認知症の人の中で徘徊行動がある人や、ホームの外に出ようとしてしまう人の中には、他の利用者の家族が訪問した時に限って、そうした行動をとる人がいたりする。自分に家族の面会がないという寂しさからなのか、あるいは普段見慣れない人がそこに居るという不安なのか、いずれとも知れないが、施設外から人が訪ねてくるたびに落ち着きを失う人にとっては、訪問者がほとんどいない環境は、さほどストレスにはならないことも分かった。

そうした人が落ち着いて暮らすことができる環境づくりに、そのことは大きなヒントを与えてくれる結果になったことだろう。

認知症の人の、「行動・心理症状(BPSD)」とは、認知症そのものがもたらす不自由のために、日常生活のなかで困惑し、不安と混乱の果てにつくられた症状である。だからこそ行動心理症状は、暮らしのなかで良くなりもするし、悪くなりもする。つまり認知症そのものは、今現在、治療も予防もできないけれど、認知症がもたらす症状はケアによって必ず良くなるということを、感染拡大予防策の中で、私たちは改めて気が付いている最中ではないのだろうか。

認知症の人をごまかすのではなく、単に話を合わせるのでもなく、認知症の人の世界を理解して真剣に共鳴することが大事だということに、あらためて気が付いている最中ではないのだろうか。

そして何より大事なことは、私たち自身が認知症の人に関心を寄せることであり、私たちの知識と援助技術に、人間愛というエッセンスを加えることであるということに、あらためて気が付いたのではないだろうか。
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