約2月半ぶりとなる第177回介護給付費分科会が6/1に開催された。(176回は3/16開催)

コロナ禍で審議が中断することによって、報酬改定時期がずれ込むのではないかという噂もあったが、それはなく予定通りに改定が実施されることが確実となった。介護報酬改定に向けた今後のスケジュールは下記の通りである。
介護報酬改定に向けた今後のスケジュール
審議が遅れている影響で、今後の審議はネット会議などを酷使し駆け足で行われることになるが、それは形だけのものであり、事実上は官僚の掌の中で会議は踊らされ、官僚の考える方向にすべては向かっていくのではないかという懸念がぬぐえない。それが取り越し苦労であることを望みたい。

同分科会の資料を読むと、介護保険制度におけるサービスの質の評価に関する調査研究事業として取り上げられているのは、前回の報酬改定時に新設された通所介護の、「ADL維持等加算」である。

調査結果の報告として、同加算の手続きの煩雑さが指摘されてはいるが、「ADL維持等加算の届出に向けて、介護サービスの質の向上につながる取組を把握することができた」とも記されている。

そして栄養スクリーニング加算、栄養改善加算、生活機能向上連携加算、口腔機能向上加算、個別機能訓練加算とADL維持等加算を併せて、「 介護の質と関わる各加算を算定している事業所においては、ADL維持・向上につながりやすい可能性が示唆された。」と結論付けている。

それは次期報酬改定では、「ADL維持等加算」について、手続きや算定単位を微調整することはあっても、なくさないことを意味すると同時に、他のサービス種別にも、「介護の質と関わる加算」を拡大していくという意味である。これがいわゆる、「自立支援介護」と言われるもので、基本報酬の単位を減らして、アウトカム評価の加算を増やしていくことになり、結果的に国が評価の対象とする方法でサービス提供しなければ、算定単位は減ってしまうことなるのは確実である。介護事業者の方々は、このことの覚悟はしっかりと持っておいた方がよいだろう。

またこの資料からは、国が介護ロボットを実用化するために、さらに力を入れていることが読み取れる。報酬改定にも介護ロボットを使いこなすために必要な取り組みの評価を盛り込みたいという意思が伝わってくる。

なお関連情報として、テクノエイド協会が全国の介護事業者に介護ロボットを無償で貸し出すことにしていることをお知らせしておく。すでに商品化されているロボットが貸し出し対象で、それらの試用を促し介護事業者へのロボット導入を推進する目的である。6/19まで貸し出しリストへの掲載を希望する開発企業を募集しており、介護事業者への周知はその後になると思えるが、この機会に介護ロボットを使って試してみるのは良いことではないかと思う。

さて介護給付費分科会資料に話を戻そう。

【資料3】令和3年度介護報酬改定に向けて(地域包括ケアシステムの推進)では、報酬改定のテーマとなる4つの柱を以下のように示している。
・ 地域包括ケアシステムの推進
・ 自立支援・重度化防止の推進
・ 介護人材の確保・介護現場の革新
・ 制度の安定性・持続可能性の確保


相も変わらず、前にもどこかで見たことはあるようなテーマだという感は否めないが、この中では、「 在宅で生活する者の在宅限界を高めるための在宅サービス等の在り方 」・ 「これまでも取組を進めてきた介護保険施設での対応の在り方に加え、高齢者向け住まいにおける更なる対応の在り方 」・「 人生の最終段階においても本人の意思に沿ったケアが行われること等の観点」・「在宅の中重度の要介護者を含め、認知症への対応力を向上」などが盛んに論じられているが、コロナ禍で感染予防対策が必要になっていることについては1行も書かれていない。

感染予防対策とそれにかかわる職員への更なる処遇改善の声が高いが、その声は報酬改定のテーマには反映されていないことになる。

ただし資料5に感染対応の介護報酬算定特例や、補正予算の中で対応された内容は書かれているが、だからと言って感染特例で報酬アップを期待できるとは言い切れない。そうであるがゆえに介護事業者は経費削減にさらに務めるとともに、感染予防策の費用の報酬への上乗せの声を高める必要があると言えるのではないだろうか。

先の衆議院において、介護保険制度改正関連法が可決されたが、その様子を見ると法案の審議はほとんど行われておらず、簡単な質疑がわずかに行われただけで法案が成立してしまっている。参議院での来週中の法案通過も確実だが、同じ経緯でしか審議は行われないだろう。

ということは国会議員の中で、その法案の中身を熟知している人はほんのわずかではないのだろうか。そんな状態で制度が変えられていくのだから、法案につながる審議会の議論は重要である。

介護報酬の改定も同じことが言えるが、タイトなスケジュールの中で、審議したというアリバイ作りの分科会で終わらないように、介護関係者がもっと声を大きく、高く挙げていくことも必要ではないだろうか。

そうしないと先に示した、「官僚の掌の中でしか議論は進まない」という僕の懸念が現実のものとなってしまうだろう。
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