緊急事態宣言がすべての地域で解除されて以降、介護サービスも徐々に平常営業に向けた準備が進められていることと思う。
しかしワクチンが開発されるまでは、感染リスクは相変わらず高いままである。感染が広まる恐れは常にあるので、でき得る対策をすべて取っておく必要がある。
通所サービスでは、今まで行っていたサービスメニューの見直しが必要だろう。介護保険最新情報Vol.841は、「介護予防・日常生活支援総合事業等における新型コロナウイルスへの対応について」 であるが、ここで求められていることは、介護給付の通所介護等でも同様に求められてくる。
例えば、『 歌を控えるとともに、文字(紙)や録音した音源、マイク等を活用するなど、大きな声を出す機会を少なくすること。 』・『息が荒くなるような運動は避けること。 』といった点は通所介護の活動メニューの見直しとして具体化していかねばならないし、『 座席の配置について、対面ではなく、横並びで座るなどの工夫を行うこと。 』は食事の際の座席配置の見直しにもつなげていく必要があるだろう。
また日常的な備えも十分すぎるほど続けていく必要がある。職員がマスクをつけて対応することは習慣化されていくと思われるが、そのためにはマスクの『常備』は欠かせなくなる。巷のマスク不足はどうやら落ちついているが、万が一に備えてある程度の量を倉庫等にストックしておく必要があるだろう。消毒液等の消耗品も、従前以上の消毒が当たり前となった中で、ストック量を見直していかねばならない。
そのためには従前以上の費用が掛かるが、それはやむを得ないことだ。そうした対策をしなかったことが原因で、ひとたび感染症が事業所内に広がれば、その時にかかる費用と失われる収益は、感染予防対策にかける費用の比ではないので、決して削ることができない費用負担と考えざるを得ない。
コロナ禍による追加の補正予算では、自治体から休業要請を受けた事業所だけではなく、介護事業者に広く消毒・清掃費用 や、マスク、手袋、体温計等の衛生用品の購入費用等の補助が行われるとされているが、そうした特別な時期の補助だけで対応できる経費増加ではないので、当然のことながら次期介護報酬改定においてその費用を見てほしいと考えるのは、ごく自然な流れだと思える。
感染予防対策費は、今回の騒動が収まったとしても減る種類の問題ではなく、今後も引き続き対策を続け費用をかけていく必要があるものだ。つまり通常装備費用が増加しているという意味であり、次期報酬改定についてはこのことを盛り込んだ議論が必要不可欠である。
国は次の報酬改定のテーマとして、『自立支援介護』を高らかに唱え、アウトカム評価の加算報酬導入を、多くのサービスに導入しようと目論んでいる。しかし感染予防対策費用は、結果が数値化できるものでもなく、目に見えない地道な取り組みに関わる費用であり、アウトカム評価の報酬体系にはなじまないものである。そうであるがゆえに基本報酬単価の引き上げが是非とも必要になるのではないだろうか。
是非そうした方向からの報酬改定議論が展開されてほしいものである。
ただ感染対策費が報酬改定に盛り込まれたとしても、事業者の支出全てをカバーするような改定額になることはないだろう。介護事業者は一層の経営努力が求められることは間違いのないところだ。経費削減は、できるところから手を付けていかねばならない。
経営母体が大きければ大きいほど、固定経費の削減は大きな収益と結びついていくので、ここはおざなりにできない。
そうした視点で言えば、今後の介護事業経営に必要不可欠な、介護ロボットやインターネット関連機器の導入が、介護事業経営にどう影響するかということを、もう少し切実な問題として考えてほしいと思う。
例えば介護保険最新情報Vol.834では、介護施設等でのオンライン面会が推奨されているが、コロナウイルス騒動が一段落したとしても、オンライン面会の必要性はなくならないだろう。感染予防対策とは別にして、利用者が遠方の家族といつでもつなげられるツールとして、それは当たり前に使われるツールとして浸透していくだろう。
また、1日に行われた介護給付費分科会資料では、『介護ロボットの効果実証に 関する調査研究事業 (結果概要)(案)』が示されそこでは、「介護ロボットの活用内容の把握や評価指標を用いた具体的な効果の検証・把握を行うことを通じ、次期介護報酬改定等に向けた課題等の整理を行うこととする。」とされている。これは介護報酬に近い将来、「介護ロボット導入加算」が新設される布石につながっていくかもしれない。
出生率の低下が止まらない我が国では、国内人材だけで介護人材不足を補う手段はもはやなく、外国人や機械の力を借りて、それを補う施策がとられていく。その流れの中で、介護事業者の業務も機械化される範囲は確実に増えていく。それが人にとって便利であるかどうかは別にして、機械に替わるところは替えていかないと、業務が廻らない状態となるのだ。だから場合によっては、利用者の暮らしの質を顧みない機会化も現実のものとなる恐れさえあるということだ。
どちらにしても介護事業者全体の高テクノロジー機器化・リモート化は不可欠で、その対策も急がねばならない。しかし電気が止まって機械が動かず、リモート機器が使えなくなって、介護サービスに支障が出るようなおかしな世の中にしないことも必要な視点である。機械や技術は、人が使いこなすもので、それに操られてしまってはならないのである。
それとともにそうした高テクノロジー機器を動かす電気というエネルギーに着目しなければならない。電気を使う量は今以上に増えてくるのだから、固定費の中に占める電気料金は、今以上に大きな額となることを考えると、この費用を上手に削減することができることは、事業経営に大きな利益をもたらすと思う。
そのため僕は何度か介護事業経営の視点から、電気料金の削減を提案しているのである。(参照:固定費削減意識が無いと介護事業は生き残れない中で、リスクゼロで電気料金削減できるという朗報)
リンク先を参照にして経費削減に努めてほしい。
こんなふうに今後の介護事業者には、介護報酬のアップを期待するだけではなく、自らの創意工夫で経費を削減し、収益を生み出し、安定した事業経営を続けていくという視点がに求められてくる。ぬるま湯に浸かりながら、経営をしなくても、運営さえすればよかった時代とは異なってきているのだ。
国が手を差し伸べてくれるのを待つだけの介護事業経営ではだめなのだ。国が手を差し伸べたくなる、健全な介護事業でなければならないし、その基盤は利用者の福祉の向上に寄与する良質なサービス提供であり、利用者の暮らしぶりがよくなっているという結果責任を常に意識したサービス提供に努めることである。
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