今日はまず介護関係者の皆様への朗報から伝えたい。
昨日、「介護の最前線に新たな手当ては行き渡るのか」をアップしたが、その直後に安倍首相が記者会見を行い、「ウイルスとの戦いの最前線で奮闘してくださっている医療従事者、病院スタッフの皆さん、介護事業所の皆さんに、心からの感謝の気持ちとともに、最大20万円の給付を行う考えです」と述べた。
これは昨日の記事で紹介した103億円が計上される補正予算とは別物であり新たな給付である。
詳細は明日の閣議決定以降に示されることになるので、続報を注目していただきたい。みんながもらえると良いですよね。
さて本題に移ろう。
コロナ禍を巡っては、居宅サービスなどの介護報酬算定特例ルールが示されているが、その算定率が上がっていない。その理由を考えるとともに、今後の制度の在り方のヒントとなる考え方が、特例に潜んでいなかったかということを考えてみたい。
感染を恐れて利用者が利用控えしたり、自主休業を余儀なくされたりして、収益が激減した通所サービスについては、収益確保のためにいくつかの特例ルールが示されている。しかしそれらはほとんど機能せず、算定率は低いままに経過している。
指定事業所と異なる場所を使用して、当該事業所が指定を受けたサービスに相当するサービスを提供した場合に、通常提供しているサービス提供時間等に応じ介護報酬を算定できるとしたルールについては、休業要請の地域外での営業を想定したものだったであろうが、利用者が通って利用するサービスの拠点が、通常営業地域から遠く離れてしまっては、送迎が難しいという問題があった。
さらに目に見えないウイルスがどこに蔓延するか予測不能な中で、感染しない安全な場所など見つけられずに、指定場所以外での通所サービス実施は困難だった。そのため場所を変えて実施する意味はほとんどなく、これは一部のケースを除いて絵に描いた餅的な特例に終わっている。
また通所利用を自粛して居宅で生活している利用者に対して、居宅を訪問し個別サービス計画の内容を踏まえてサービスを提供した場合については、提供したサービス時間の区分に対応した報酬区分を算定できるとしたうえで、サービス提供時間が短時間の場合には、それぞれのサービスの最短時間の報酬区分で算定できるとしたルールについては、1軒1軒の利用者宅を訪問するのは効率が悪いことに加え、個人宅での相応サービスの提供は困難と判断して、その実施率は上がることはなかった。
電話による安否確認での報酬算定はほとんど行われていない。担当ケアマネジャーがそのような必要性はないと考えるケースが多かったことに加え、利用者自身が自宅で電話を受けて話をするだけで自己負担金が発生することに納得しないケースが多く、事業者自身も報酬の低さからあえて算定を求めず、この特例費用を算定するケースは非常に少なくなった。
このように通所サービスの特例算定はほとんど意味のないものとなっている。
訪問サービスの特例も機能不全に終わっている。
通所サービスの利用自粛に対応して、訪問介護のニーズは増加したが、それに対応できるサービスの量(人員確保)が問題となった。そのため国は、「訪問介護員の資格のない者であっても、他の事業所等で高齢者へのサービス提供に従事した事がある者であり、利用者へのサービス提供に支障がないと認められる者であれば、訪問介護員として従事することとして差し支えない。」という特例も示した。
これによって休業した通所介護の職員が、法人内の訪問介護事業に携わることも可能とされたわけであるが、利用者宅にて自分一人でサービス提供する訪問介護業務と、サービス事業所内で複数の利用者に、複数の職員が対応する通所介護の業務はサービス提供方法が大きく異なるために、適性の問題が生じた。
そもそも通所介護の仕事を選ぶ人は、利用者宅で1対1で利用者に接するストレスを避けたいという人も多いのである。特に若い女性は、過去に訪問介護の現場で利用者にセクハラまがいの行為を受けて職場を変えて通所サービスに携わっている人や、そういう経験談を聴いて訪問サービスに携わりたくないと考えている人も多く、そうしたトラウマや思い込みをなくす教育機会の時間が取れない状態でのサービス提供は現実的ではなかった。
そのため何の訓練もなくいきなり通所介護事業所の職員が、訪問介護サービスに従事することが困難で、この特例も機能したとは言い難い。
ただしこの特例が、少ないながらも一部地域で実施されたことによって、訪問介護員に必ずしも資格を求める必要がないことが証明されたことには大きな意味があった。他の介護保険サービスで介護職員を務めるにあたって資格は必要ないのに、訪問介護だけが資格が求められるという矛盾が改めてクローズアップされたと言える。
訪問介護は近い将来人的資源が枯渇することが確実なので、サービスの構造にメスを入れねばならない時期である。(参照:絶滅危惧職種の懸念で基盤が揺らぐ地域包括ケアシステム)
そうであれば訪問介護員に資格が必要だという規定の見直しと、今回の特例を先例に、通所サービス事業所から随時、訪問サービスを提供できるようなルールに進化させていくべきではないかと考える。
そうした新ルールをもとにすれば、通所サービスの職員にも、訪問サービススキルを持つことができるように、あらかじめ教育訓練ができようというものである。
このように訪問介護を新たな形にしていかないと、訪問サービスは消滅する運命になってしまうのではないかと考えるのである。早急に検討してほしい問題である。
なお訪問介護に関連しては、その資源量が少ない地域においては、訪問介護の買い物支援に替わるサービスとして、「要介護者の買い物支援は連れて行くから来てもらうに」に記した方法も検討に値するのではないだろうか。
登録から仕事の紹介、入職後のアフターフォローまで無料でサポート・厚労省許可の安心転職支援はこちらから。
※4/4〜新しいブログ「masaの徒然草」を始めました。こちらも是非ご覧ください。
※もう一つのブログ「masaの血と骨と肉」、毎朝就業前に更新しています。お暇なときに覗きに来て下さい。※グルメブログランキングの文字を「プチ」っと押していただければありがたいです。
北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。
・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。
・masaの最新刊「看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。