コロナ禍は、介護事業の場でも様々な制限を生み出している。感染拡大防止という面では、そうした制限は必要不可欠でもある。
しかし制限が必要とされる期間がこれだけ長期化すると、人の暮らしに様々なひずみを生み出しているのも事実だ。一度行うと決めた制限対応を、どれだけ厳粛に、いつまで続けなければならないのかということを考えなければならない時期である。
人の暮らしに真正面から向かい合う対人援助の関係者が中心となって、漫然と制限を続けていて良いのかということを、改めて議論する時期に来ているのではないだろうか。
介護施設の面会制限や外出制限については、このブログ記事で再三取り上げている。くれぐれも通信技術を利用し、画面を通じた面会ができておれば良いなどという横柄な考え方に陥ってほしくないし、外出支援も感染予防対策を十分とれば可能であると考えてほしい。
制限をすると決めて、その原則を定め、できる限り原則に沿って対応することは決して間違っていない。しかしその期間が問題だ。短期間ならばともかく、その期間はすでに2月にも渡る状態となっており、今後もさらに長期化するかもしれないのである。それはこの国の介護事業者が今まで経験したことがないことである。
よってその前例は全くないと言ってよいのだから、僕たちが今この時期に前例を作っていかねばならないのである。
原則に沿ってさえいれば問題は最小限に抑えれられるという時期ではないと考えるべきで、これだけ制限が長期化しているのだから、原則を適用しない例外が増えて当然だと考えなければならない。
漫然と原則を適用し続けるのではなく、介護事業者やそのサービス利用者が今まで経験したことのない状況の中で、予想を超えて生ずるストレスや、予測不能な出来事が生まれているという事実を認識しなければならない。それに対応するためには、知識と技術だけではなく、心配りが不可欠だということを胸に刻まねばならない。
面会制限の中でも、面会を許可せねばならないケースを、パターン化せずに、個々の理由でその時々に精査して考えてほしい。その時に人の思いにも十分配慮してほしい。
先日、面会制限中の特養での看取り介護に関連して、「いまわの際(きわ)の別れを阻害する権利は誰にもない」という記事を書いたが、そのようなことは特養以外の様々な場所で問題化している。
特に深刻なのはホスピス緩和ケア病棟のお別れをどう考えるかという問題である。ホスピス緩和ケア病棟とは、末期がんの方が人生最期の時を安楽に過ごすための病棟である。ところが今その病棟で、「孤独死」ともいえる現象が生まれているのだ。
ホスピス・緩和ケア病棟で終末期を過ごす人に対する面会制限によって、家族に会いたいと言いながらそれがかなわず亡くなっている人がいるのである。
原則を適用するだけだと、患者の思いに沿えずに、残念な思いを残してこの世を去っている人がいるという現実は、ウイルスが患者と家族のつながりを分断しているのではなく、制限ルールが患者と家族のつながりを断っているがごときである。
免疫力が低下している人が多くいる場所だから、外からウイルスを持ち込まれては大変なことになることは、クラスター感染の現状をみれば明らかである。(参照:クラスター感染施設のその後の最新感染状況と今後の対応に向けての提言)
だからと言って、今わの際の別れがそれによって阻害されることがあってはあんまりである。職員は外部から通ってきているのに、今わの際を迎えた人の家族を一切入れないというホスピスであってはならないと思う。どうしてもそれがかなわないのなら、在宅療養支援診療所を紹介して、家族のいる場所に行ってもらって看取ることができないかということも考える必要がある。
制限は誰でもできる。できないと宣言するだけで、何もしないことは馬鹿にでもできる。しかし僕たちは対人援助のプロである。制限が必要な中であっても、できることを工夫するのがプロである。対人援助のプロであれば、できるために必要な知識や技術に、人間愛というエッセンスを加える必要もある。
制限が必要な時にこそ、原則に沿わずに対応する必要はないのかを常に考えなければならない。制限が必要な状況下であっても、できることはないか、できることは何かを考えるのが、本当のプロの仕事であり使命である。
どうかそのことを忘れないでほしい。その実行を怠けないでほしい。
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