今朝付の北海道新聞朝刊・三面記事では、クラスター感染が発生している札幌市の老健施設、「茨戸アカシヤハイツ」の悲惨な現状を報道している。
定員100人の同施設での感染者は、昨日まで入所者64人・職員21人に達しており、施設での死亡者は11名に達している。このうち医療機関に入院できた人はわずかで、現在施設にいる利用者数は71人。このうち40人がウイルス検査で陽性となっている。
同施設の居室はすべて多床室(2人部屋8室・4人部屋21室)なのだから、感染が拡大しやすい環境にあるが、報道によると感染拡大防止策は、「カーテンを閉めるくらいしかできない」(施設関係者)とされている。
カーテンを閉めるだけで新型コロナウイルス感染防止になるわけがなく、なぜ空間除菌などの対応を早急にとらないのか疑問である。空間除菌については効果を疑問視する人がいるが、インフルエンザウイルスでの感染拡大防止効果は示されているし、コロナウイルスのエアロゾル感染の危険性を低下させる効果も実証されているのである。今からでも急いで対応すべきだ。
はっきり言って、ウイルス検査陽性の人をとどめおく施設としての体制が整っていないと思う。利用者や職員をウイルスから護る最大限の努力がないところで、利用者と職員が放り出されていると思う。その責任は札幌市にあるのか経営法人にあるのか、はたまた両者なのかは、後々十分に検証すべきだと思う。
感染拡大防止策がこれだけ不十分なのだから、当然職員の勤務状態も過酷になっている。道新の報道記事でその悲惨な状況が明らかにされているが、『これまで介護士40人、看護師10人ほどが勤務していたが、感染や退職で看護師は全員不在に。現在は、札幌市から派遣された看護師ら計4人で対応し、介護士も通常の3分の1だ。』と書かれている。
報道記事にはこのほかに、『感染を恐れ、車中で寝泊まりする介護士もいる。』とされているが、この意味は自分の感染を恐れてという意味ではなく、自分が施設からウイルスを自宅に持ち込んで家族に感染させることを恐れて、家に帰らないように車中泊しているという意味ではないだろうか。たいへんなことであり、体も十分休められないのではないかと心配になる。
これらの職員の方々も、そこから逃げ出したいと思っているのだろうが、『自分まで抜けたら誰が入所者のお世話をするのか(道新記事より)』という思いで頑張っているそうである。頭が下がるという言葉では言い表せないくらいすごいことをしていると思う。誰にでもできることではなく、その使命感と責任感は尊敬に値する。
しかし残念なことに、札幌市も経営法人もこうした職員の特攻精神に頼り切って、全く職員を護る対策を取っていない。だから感染拡大は防止できていないのだ。
こうした過酷な職員配置状況だから、利用者に対する日常支援も大変なことになっているようだ。報道記事によると、『人手不足から、入所者の食事は3回から昼夜2回に減らした。感染を広げないため、2週間以上風呂にも入れない状況が続く。』
これは予想をはるかに超えた状況である。入浴支援が満足にできなくなるのは想定範囲であるが、1日の食事回数が3食ではなく、2食の提供しかできなくなることを想定していた関係者はいただろうか。僕はかねてより、『食事だけは必ず1日3食提供されなければならないのだから〜』と言っていたので、この状況は想定できなかったし、そうした状況になっているというのは危機的状況をはるかに超えたものと思ってしまう。
僕は先月福岡市に2週間ほど滞在していて、その際は北海道の感染拡大は落ちつき、クラスターも発生していなかった。その際、福岡市の老健でクラスター感染が発生し、5月初めまで40人以上の利用者が感染したという報道に触れていたが、ここまでの危機的状況には陥らなかったように聞いている。しかも福岡市では今、新規感染発症者ゼロが2日間続いている。福岡市と札幌市のこの違いはどこから生じているのだろうか。後の検証が必要だと思う。
札幌市は、陰性の入所者を別の施設に移す検討に入ったと言うが、今陰性だからと言って、陽性反応する利用者が日に日に増えている施設の利用者を受け入れようとする他施設があるのだろうか?他の施設からすれば、その施設から受け入れた利用者に隠れていたウイルスが陽性化して、自施設にクラスター感染が発生するのではないかと疑心暗鬼になるのは当然だと思え、受け入れは容易ではない。
とすれば受け入れ可能なのは、法人内の他施設となるのであろうか?
どちらにしても1日も早く、このクラスター感染が収束することを望むとともに、同施設の職員の皆さんの身体と心が護られることを強く願う。
何もできないが、せめて心よりの尊敬の念を込めてエールを送り続けたいと思う。
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