一般市民、平凡なサラリーマン、普通の主婦・・・本当は、この世の中にそんな人はいない。
そこに存在する一人ひとりが誰かにとっては特別な人である。みんなが誰かにとってかけがえのないたった一つの存在なのだ。
僕たちの職業とは、そういう一人一人の大切な魂と向き合う職業だ。だからこそ介護という職業を仕事として選んだのではなく、生き方として選んだと思ってほしい。誰かにとって大切なたった一人の人だという意識を忘れないことから、僕たちに求められるバイスティックの7原則の一つ、「個別化の原則」の理解も始まるのである。
介護サービスの利用者や家族の方々の中には、病気や症状を人の上に冠づけするのは許し難いことだと訴える人がいる。
認知症になって、行動心理症状がある方も、家族にとっては、「認知症高齢者」ではない。そのかけがえのない人は、家族を養ってくれた頼もしいお父さんでしかない。哀しい時、苦しい時に抱きしめてくれた優しいお母さんでしかない。
そういう親に、認知症という冠をつけて呼ばれることを毛嫌いする家族もおられることを理解しなければならない。介護サービスの場で、認知症の○○さんと利用者を表現することは、職業上必要不可欠なことではない。そんな冠などつけずに、○○さんというだけで良い時の方が多い。それなのになぜ無神経な冠をあえてつけて利用者の方々を表現せねばならないのだろうか。
ましてや認知症を、「ニンチ」とわけの分からない略語で呼び、「あの人ニンチだから」・「あの人は、ニンチじゃない」とか平気で言っている人にはデリカシーの欠片も感じられない。そんな人が看護や介護の専門家面するのは、傍からみれば滑稽で醜くさえある。
家族が愛したお父さん・お母さんを私たちはもっと大切に思わなければならない。家族のそうした思いをもっと大切にしなければならない。
人を愛するとは、どういうことを言うのだろうか。男女の恋愛や家族愛以外にも、人間愛というものが存在することを僕たちは知ってはいるが、それをどう考えればよいのだろうか。そんなことを考えながらふと思うことは、誰かのために自分が少しだけでも損をしても良いと思えれば、それは愛と言えるのではないだろうかということだ。
人間愛をあまり高みに置く必要はないのではないかということだ。日常の何気ない心配りに人の情けや愛を感じながら暮らしていくほうが、僕たちはもっと幸せになれるのではないだろうか。誰しもが誰かから愛されていると思うことで、曇って見えなくなっていたものに、少しだけ日が差すのではないのだろうか。
人は誰しも、ずるかったり卑しかったりする部分を持っている。それを否定したって始まらない。そんな一面は誰にでもあるけれど、それにもまして人は愛し愛される存在である。そのことを忘れないで、希望の光は誰にでも差すと信じて生きていく方が心安らかだ。否定的な部分や暗い未来ばかりを考えて自らの心を苦しめる必要はない。
人間の存在の豊かな部分、明るい方向性を少しだけ意識して考えるだけで、きっと明日は変わると思う。辛いという文字は、「一」を足すだけで幸せに変わる。僕たちの職業は、誰かにこの、「一」を足すための職業だ。そして一を足す人を選ばない職業である。どんな人だって幸せになる権利はあるし、私たちは裁く人ではなく、支援する人なのだから・・・。
年を取ったからといって誰も仙人にはならない。性格も過去も様々だ。それらの個性は個別化しても、幸せをつなげる行為に差をつけることがあってはならない。
無差別平等の精神は、対人援助の支援者が常に意識しなければならないテーマだ。しかし無差別平等とは、一律均等に同じことをするという意味ではない。必要な人に必要な支援を行い、同じ必要性のある人であるのにその差をつけてはならないことであって、必要のない人に支援の量や質が変わってくるのはごく当たり前のことである。
人は感情を持った生き物だ。喜怒哀楽は誰にでもあるし、心があるから思い悩みもする。しかし感情があり、感ずることができるから、人は幸せになることができる。生きる意味を見出すこともできるのだ。
だからこそ怒りも哀しみも受容しなければならない。怒る人の思いに寄り添い感情を鎮め、哀しい人に寄り添い宥めることが大切だ。喜びや安楽は、その先にきっとやってくるものだから・・・。
介護事業に携わる人とはそんな存在であることを願ってやまない。介護事業経営者の方々には、従業員がそんな思いを持って介護サービスに従事できる職場を創ってもらいたい。
登録から仕事の紹介、入職後のアフターフォローまで無料でサポート・厚労省許可の安心転職支援はこちらから。

※4/4〜新しいブログ「masaの徒然草」を始めました。こちらも是非ご覧ください。


北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。
・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。
・masaの最新刊「看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。
masa
が
しました