昨年12月16日に介護保険部会で諮問・答申が行わた介護保険制度の見直しに関する意見は、やっと衆議院で審議入りし、今月中の可決の見通しが立てられている。6月には参議院でも法案審議・可決され成立の見込みだ。
その内容は決してプチ改正ではないとこのブログでは訴えてきたので、関係者の皆さんには改めて法案を確認しておくことをお勧めする。(参照:今回の介護保険制度改正はプチ改正ではない)
この法案通過後は、いよいよ来年4月の介護報酬改定に向けて、介護給付費分科会の審議も再開されるだろう。今年の夏から年末にかけて具体策をめぐる議論が大急ぎで行われていくことになるのではないだろうか。
このブログでは何度も指摘しているが、次期報酬改定は前回のように診療報酬とのダブル改正ではなく、介護単独改正のため、薬価引き下げ分が財源になった前回のようなおこぼれにもありつけない。財源がない中での厳しい改定となる。
しかし新型コロナウイルス感染症の問題が収束に向かったとしても、感染予防対策はコロナ禍以前と以後では異なってくるのは確実で、マスクやゴーグルを通常装備品にする必要もあるし、空間除菌の日常化も必要になるなど環境消毒にかけなければならない費用は当然増えるのは確実である。
新しい生活様式に沿うために、ICT技術や介護ロボットなどを今以上に取り入れる必要もあり、ここにもお金がかかる。
その対策としての費用上乗せが必要であるとして、介護給付費のアップを求めることは当然必要だろう。
感染症の影響でサービスの利用控えや休業などで経営が厳しくなっている事業者も多く、2020年度の決算で単年度赤字になる介護事業者も多いだろう。
そんな中で、介護報酬ダウンということになれば、事業経営にとっては大変な逆風となることが予想される。そうした状態を懸念して介護報酬のプラス改定を望む切実な声が挙がっている。
新型コロナウイルス対応では、介護保険施設等への負担が強いられた。そのような中で訪問介護等の居宅サービスの必要性も改めてクローズアップされており、そんな状況で国は厳しい報酬カットや複雑なルール変更を断行しづらいという見方もある。
しかし昨年10月の消費税アップに伴う報酬改定は、特定加算を含めると改定率はプラス2.13%とされている。このアップ分は事業収益には結びつかないものの、国は2018年報酬改定に引き続き2年連続のプラス改定であることを盛んに強調している。
すなわち国の主張とは、骨太改革で社会保障費の削減が続けられている中で、2年連続報酬をアップされている医療・介護業界は、他の産業より優遇されたのだから、次回の報酬改定時は、他産業分野とバランスを取るために、少し泣いてもらうというもので、決して報酬改定に向けて順風が吹いているわけではない。
だが感染予防対策費用への手当とか、感染の恐れがある場所で頑張る職員への危険手当などという面ばかりではなく、日本全体の景気対策として考えた場合、介護報酬という法定費用を下げることのマイナス面にも注目していただきたい。
日本全体の景気は間違いなく冷え込んでいるし、その回復にはまだ数年を要するし、そこには国の景気刺激策は欠かせない。介護報酬という法定費用にも、その面を反映させて景気刺激するという考え方は決して荒唐無稽ではない。
介護事業全体を見渡すと、前述したように感染予防対策費は増やさざるを得ないし、人材確保のための費用も間違いなく増やさざるを得ない。介護報酬をアップさせた分が内部留保を増やすだけの結果に終わる恐れは少ないのだ。むしろアップ分は経費として支出されるのだから介護関連事業全体への波及効果を考えても経済効果が見込まれることは確実ではないかと思う。
通所介護などでは自主休業で大変な損失が出て、厳しい経営状態になっている事業者も多い中、せめて来年に迫った介護報酬改定では、それらの事業者が体力を回復できる報酬体系とプラス改定を望みたいものだ。
だからといって、経営努力をしなくても収益が出るような報酬アップは期待できず、事業者自身の経営努力も不可欠だ。新しい時代・新生活様式に合わせて人材と収益を確保できる方法を、より早く取り入れは事業者しか残っていけなくなる。
そういう意味では今後の介護事業では、ランニングコストの抑制も大きな課題となるが、『収益減に対する自己防衛策としてリスクとコストゼロで電気料金を賢くカットしましょう』で紹介した方法などにより、コストカットしていくことも今以上に必要になるだろう。
様々な複合的対策を施す事業者が生き残っていくわけであるが、高齢者数の延びと、介護ニーズの増大を考えると、生き残っていく事業者には、大きな収益を得るチャンスでもあり、このビッグチャンスを手にする知恵と工夫が、今この瞬間から求められていることを忘れてはならない。
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