通所介護の歴史を振り返ると、そのルーツは1979 年老人福祉法に位置付けられた、「在宅の寝たきり等の人を対象とした通所サービス」であるとされている。

それ以前から在宅の方が特養で入浴支援を受けるという、「入浴サービス」を行っている自治体はあったが、そのサービスを発展させ全国的にサービスを展開したのが同事業であった。

このように入浴サービスから通所サービスに発展したと言っても、当時そのサービスを受ける人の多くが、「入浴」を目的としていたことに変わりはなかった。それだけ在宅の重介護者が入浴する手段・社会資源がなかったという意味でもある。

しかしサービス展開地域や利用者数が増えるにつれ、徐々にサービスメニューも増え、通所サービスは在宅高齢者の機能訓練の場になり、心身活性化に不可欠な場となっていき、在宅介護者のレスパイト目的にも定期利用されるケースが増えていった。

そのサービスが段階的に変化・発展して、2000年からは介護保険法を根拠にした通所介護(デイサービス)・通所リハビリ(デイケア)につながっていったことは今更言うまでもない。

なお通所介護と通所リハの一番の違いは、前者には家族のレスパイト目的の利用が認められているが、後者には基本的にその利用目的は認めていない点である。

ところで今、新型コロナウイルスの感染予防対策として、通所介護事業者で休業や自粛営業(短時間営業なども含む)を行っている事業者が多い。(通所リハビリも同様だろう)

通常営業している事業所においても、利用者自らの判断で(感染を恐れて)利用を休止しているケースも多くなっている。

そんな中で通所介護を使えないことによるデメリットとして、身体機能の低下がみられるケースや、認知症の方の症状の悪化・認知機能の低下などが挙げられている。

逆に言えばそれは、通所介護が高齢者の機能維持に必要不可欠であり、認知症高齢者にとって認知機能維持の効果と、行動・心理症状を抑制する混乱予防の活性化効果が高いサービスであることが証明されたという意味である。

介護保険制度創設間もない時期には、「いずれ通所介護はなくなり、通所リハビリに統一される」という声があちらこちらから聴こえてきたが、通所介護の利用者が増え、利用効果が認められるようになった今日では、そのような声は自然消滅したわけである。通所介護関係者は、そのことを誇るとともに、さらなる社会的ニーズに応えられるようにサービスの質向上に努めていただきたい。

そんな中で今日、39県の緊急事態宣言が解除されようとしている。宣言解除できなかった地域も、月末までの解除に向けて努力を行っている。

宣言解除地域では通所介護の営業再開や、サービス利用を中断していた利用者のサービス再開などが検討されていくだろう。

少しだけ通常に近い通所介護のサービス提供ができるようになるかもしれないが、引き続き感染予防対策は続けなければならないので、「削除すべき介護施設の食事提供規定」で指摘したように、食事座席の工夫も必要になるだろう。送迎もできるだけ少人数に分けて行うような工夫ができればそれに越したことはない。送迎担当者が、非接触型の体温計を持ち歩いて、送迎者に乗り込む前の利用者の玄関先で体温チェックする必要もあるだろう。

さらに下記の記事も参照しながら、できる限りの感染予防策を取ることで、利用者の方々の安心感を高める努力は不可欠である。そのうえでサービスの利用再開に向けては、担当ケアマネとも十分コミュニケーションをとって、通所介護事業者・利用者及び家族との3者間の利用再開へのコンセンサスを十分に形成していただきたいと思う。
(※参照記事:「新型コロナウイルスに打ち勝つにはアイテムが必要〜介護従事者を一人も感染させてはならない」・「新型コロナウイルスの感染の不安を抱えたまま、介護職員をサービスの場に放り出してはならない」・「新型コロナウイルスは空気感染しないから空間除菌は必要ないという誤解〜エアロゾル感染との違いは何か?」)

特に担当ケアマネジャーには、利用者からサービス利用を再開してよいのか、再開時期はいつにするかという相談が増えると思うが、ケアマネジャーが感染リスクを予測することは出来ないことをきちんと説明したうえで、緊急事態宣言が解除されたことが、感染リスクが消滅したという意味ではないことを説明したうえで、サービス利用の再開の必要性が高い理由等の説明が求められると思う。

営業している事業所のサービスを使う際の感染予防の一番の責任は事業者自身にあることと、その対策を行っているから営業しているのだということをきちんと説明しておく必要もあるだろう。

万一感染する方がいた場合に、居宅サービスを作成する担当ケアマネジャーに責任転嫁されることがないように、この辺りはサービス事業所も含めて話し合うなど、十分なコミュニケーションが必要だろう。

こうした部分でこそ多職種連携が求められるし、こうした状況であるからこそ、より安全性を高める工夫も求められるのだということを意識していただきたい。
理想の条件がみつかる介護職専門の転職サイト・ケアジョブはこちら。無料登録してください。


※4/4〜新しいブログmasaの徒然草を始めました。こちらも是非ご覧ください。


※もう一つのブログ「masaの血と骨と肉」、毎朝就業前に更新しています。お暇なときに覗きに来て下さい。※グルメブログランキングの文字を「プチ」っと押していただければありがたいです。

北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。

・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。

masaの最新刊看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。