厚労省が3/16に公表した、「令和元年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査」には、「医療提供を目的とした介護保険施設におけるサービス提供実態」という項目が含まれている。

この中で、介護医療院でアドバンスケアプランニング(ACP)に取り組んでいるのは48.6%で、このうち71.4%が「本人の意思が明確ではない時の支援」が困難だと答えていることが書かれている。

しかしこの報告内容というか、回答の選択肢には異議がある。

Advance Care Planning(アドバンス・ケア・プランニング)とは、意思決定能力が低下する場合に備えて、あらかじめ自分の終末期を含めた今後の医療や介護について、本人と家族が医療者や介護提供者などと一緒に話し合って考えておき、本人に代わって意思決定をする人も決めておくプロセスを意味している。

つまり、「本人の意思が明確ではない時の支援」は困難ではなく不可能なのだ。この部分は第3者が想像で代弁できない部分である。だからこそ本人の意志が確認できるうちに行っておくのがACPなのである。

このわかりにくいアドバンスケアプランニング(ACP)という言葉については、厚生労働省が2018年11月30日、 ACPの愛称を一般募集し、「人生会議」に決定している。以下この記事ではこの人生会議という愛称を使って論じたい。(参照:人生会議の課題

人生会議は、終末期に備えた意思決定を行うプロセス全体を指すものであり、関係者が集まって本人の意志を確認して終わりということにはならない。

そのプロセルにおいては、一度決定したことを変えることを是とするのが基本であり、揺れ動く心を受容して、動揺を抑える正しい情報を本人に提供しつつ、環境や心境の変化に応じていつでもその意思決定を支援し、一旦決定した意思の変更も認めていくことが大事だ。

以前にも書いたことがあるが、僕が特養の施設長として利用者の人生会議を支援していた頃、口から食事を食べられなくなったら経管栄養を望むか、そのまま枯れるように自然死を望むかという判断について、1日に3度も意思決定を変えた人がいたが、そういう意思変更は、それだけ深く自分の生き方を関麩が得ているという意味があり、大いに認められるべきなのである。

このように、『今の気持ち』を大切にするのが人生会議であり、過去の決定事項にがんじがらめに縛られて、その呪縛から逃れられないという状態を防ぐように支援することも大事な視点となる。

繰り返しになるが、人生会議では本人の意志決定が都度必要になるのだから、「本人の意思が明確ではない時の支援」は不可能になるのである。よって不可能になる前に、人生会議を行っておくことが大事になる。

しかし誰しも自分の死をイメージすることは簡単なことではないし、具体的に自分の死の備え等について語り合うことは、『穢れ』につながるとか、『縁起が悪い』と思い込んで忌避する人も多い。特に自分がまだ元気で認知症とも縁遠いと思われ、ましてや死はずっと先であると思い込んでいる場合、その傾向は強くなる。

そうであるからこそ、人生会議の重要性を教え、その実施を支援する専門家の力が求められてくるのである。それが介護支援者であっても良いわけであるし、介護支援専門員という職種は、その支援者として非常に適性がある職種だと思うのである。

そうした支援者が地域の隅々で、人生会議の重要性を説くことが、社会全体で自分や愛する誰かのの死について語ることをタブー視させないことにつながっていく。

死を語ることの偏見やタブー意識をなくしていく先に、「自分の命が不治かつ人生の終末期であれば、延命措置を施さないでほしい」というリビングウイルの宣言が、ごく当たり前に行われる社会が実現するかもしれないという意義を感じてほしい。

そのためにも様々な人々が自分の、『いざその時』に備えて、元気なうちから家族と医療・介護関係者による人生会議の取り組みが必要とされるということを知ってほしい。一般市民の方々にもっとそのことを啓蒙しなければならない。

その啓蒙活動の一つが「終活セミナー」であるが、そんな重要なセミナーも新型コロナウイルスの影響で開催できないのが残念でならない。そして新型コロナウイルス感染症によって、リビングウイルの宣言もできないまま、人生を終えていく人が増えている現状が残念でならない。

他人と隔離された場所で、実際に息が止まった時間も明確でないまま、誰にも看取られずに旅立っていかれる人が増えている今こそ、改めて終活・人生会議の重要性を認識し直してほしいと思う。
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