介護報酬の改定内容やその額は、極めて公明正大な議論のもとに決定されているという。
それは永田町や霞が関が勝手に決めているわけではなく、各領域の専門家の意見を聴取したうえで、専門部会での議論を経て決定されているので、国の考え方を押し付けるものでもなければ、誰かに都合の良い方向に偏った報酬体系になるわけではないという。
しかし本当にそうだろうか。
来年4月は介護報酬改定の時期である。しかし次期改定は介護報酬の単独改訂であり、診療とのダブル改定であった前回のように、薬価引き下げ財源のおこぼれが介護報酬に回ってくるわけでもない。介護報酬の一部を削る分しか財源がない中で改訂議論が進んでいる。
だからこそ霞が関は財政難を理由に、従来の介護報酬の枠組みを見直して枝葉をカットしようとしている。しかし現在の報酬体系において何が太い幹なのか、枝葉なのかは人によって見解の相違があるところだ。しかも官僚は現場を知らない。だからこそ関係者に意見を聴いているという。
しかし彼らが普段接している人たちは、彼らのシステムの中で利益を共有している人たちである。業界人・専門家といっても、霞が関と利害関係が一致する人たちが、霞が関とタッグを組んで新しい介護報酬の枠組みを決めるのである。そういう人達は官僚にとって耳障りなことは言わないし、官僚はそういう人たちと組んでいる限り居心地が良い。
耳の痛い話の方が国益にかなって良い話だなんて言っている官僚がいれば別だが、そんな人がいるなんていう話は聞いたことがない。
そうした人たちにとってのパワーメカニズムから外れた部分から、介護報酬は削られていく。それが彼らの言うところの枝葉である。
それが時には自立支援介護と呼ばれたり、科学的介護と呼ばれたりするわけだ。それは単に国民受けのするキャッチコピーにしか過ぎないもので、自立支援も科学的根拠もまやかしでしかない。そんな実態は存在しないのである。
老人保健法で失敗した医学的リハビリテーションエクササイズ中心の自立支援が、介護保険制度においてだけ実現・成功すると思う方がどうかしている。医者もセラピストも確立できていない自立支援が、どうして介護の領域で実現可能だといえるのだろう。そんなことはあり得ない。
ましてや地域包括ケアシステムと名乗っているだけで、その実態が、「地域丸投げシステム」にしか過ぎないシステムの中で、国が呪文のように唱える自立支援も科学的介護も実現できるわけがない。
そこでお金のかけない多職種連携が機能して、協働作業が難なく行われてバラ色の未来が待ち受けているというのは、もはや幻想を通り越して詐欺の世界である。
いやそうではない。過去に失敗した自立支援とは異なるエビデンスが、地域包括ケアシステムには組み込まれていると霞が関から声が聴こえてくるが、そのエビデンスがいつどこの誰にきちんと渡されているというのだろう。
誰もその中身を明確に説明できないものをエビデンスなどと宣う(のたまう)のは、まやかしでしかない。
それとも認知症の人に水を飲ませれば、認知症が治るという邪教的妄想を、本当に信じている人が霞が関にいるというのだろうか。それをエビデンスと言っているのだろうか。過剰に水分を摂取させて、内臓のダメージに伴う水分過多を原因とした疾患をすべて無視して、日中無理やり便器に座らせて排泄を強要するだけの介護を、「自立支援介護」と呼べるとでもいうのだろうか。
しかもその排泄自立とは、紙パットへの排泄は失禁ではないとまやかしながら、トイレで排泄するために体幹機能障害のある人が、何十分も便器に無理やり座らされて放置され、その苦痛の訴えを見ないふり・聞こえないふりして実現させるものだ。それは誰のための排泄支援だというのだろうか。
本当にそれを信じているとしたら、そのレベルはカルト宗教の信仰と変わりない。少なくとも人の暮らしに謙虚に寄り添おうとして、生活の質を少しでも引き上げるために手を差し伸べるような姿勢はそこに存在しない。
一方で介護の場では、マスクや消毒薬が不足するなどの様々な困難の中で、濃厚接触を恐れず利用者の方々の暮らしに寄り添いながら、できるだけ不便をかけないように工夫を重ね利用者の方々の暮らしの質を維持しようとしている人々がいる。
その人たちの存在によって支えられているのは、介護サービスの利用者だけではなく、この日本そのものだ。
本来ならば、そんな人たちが気持ちよく働くことが出来る基盤となるような報酬体系を作るのが霞が関の仕事であり、そのことをきちんと検証して法案を通すのが永田町の役割ではないのだろうか。
頭脳も権力も国民に向けて使ってほしいと思うのは、この日本では幻想でしかなく、ないものねだりなのだろうか・・・。
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