介護事業者で働く職員の一部からは、サービスの品質の向上が必要だと言うけれど、人材が不足している介護現場で、そんな余裕はないという声が聴こえてきます。

とりあえず人を増やしてほしいという切実な訴えもあります。しかし介護の質をわきに置いて、人集めに躍起になっている場所に仕事ができる優秀な人材が張り付くとでも思っているのでしょうか。仮に人が張り付けたとしても定着するとでも思っているのでしょうか。

そもそもあなたの職場の人手がいつも足りない原因は何でしょうか。人が張り付かない、人が定着しないという原因の検証作業をきちんとしているでしょうか。

あなたの仕事に余裕が生まれるためには、人手がもっと必要だと言いますが、あなた自身はあなたに続く職員をきちんと育てているのでしょうか。あなた自身が新人職員のバリアになって、入職してきた職員が次から次へと辞めていく原因になってはいないでしょうか。

今一度とあなたと、あなたの職場の本当の姿を見つめなおしてほしと思います。

新卒者が今、あなたの職場に入職して新人教育を受けているかもしれません。例えば4/1に初出勤した職員は昨日でまだ1週間しか働いていません。そんな新人さんが、日に日に元気を失っていないでしょうか。日に日に無表情になってはいないでしょうか。

先週末僕の家に、僕の生徒が訪ねてきました。彼女は介護福祉士養成校で僕が教えて卒業させ、4/1にある社会福祉法人に入社した生徒です。しかし入職わずか3日間でかなり介護の仕事に幻滅している様子で、悩みを聴いてもらいたいと切羽詰まった表情でやってきました。

彼女の悩みとは、人の役に立つ仕事だと思った介護の仕事が、ちっとも人に役に立っていないという悩みでした。社会福祉法人という公益性の高い法人が、何のために存在しているのかわからなくなったという悩みでした。

彼女が訴える、彼女の元気を奪う状況とは以下のようなものです。

・利用者に乱暴な言葉遣いをして、介護の仕方も荒々しい先輩職員の姿。
・認知症の人の訴えにまったく耳を傾けようとせず、「助けて」・「どうしたらいいの」と叫んでいる人の声を聞こえないふりをして声もかけずに側を通り過ぎていく職員の姿。
・気分で後輩指導の態度を変える先輩職員。
・利用者の坐位姿勢に全く配慮せず、職員は立ったままで食事を詰め込み、むせこむ人を放置する食事介助
・根拠ある方法とは全く異なる介護が行われている日常


彼女ら新人職員は4/1の入社式前に、「入社前研修」と称する座学研修を先週の月曜日(3/30 )と火曜日(3/31)に受けたそうです。しかしその内容は事務系職員と同じ場で、法人組織の説明や事業内容、健康保険や年金等の手続、就業規則等の説明にとどまり、介護職員に対する実務につながる内容は皆無だったと訴えていました。

こうして介護実務に関する基礎研修もきちんと行われない中で、入職初日から先輩職員が新人に張り付いてOJTの中で仕事を覚えるように指導されているのですが、毎日変わる指導担当者によって、指導内容も介護のやり方も違う中で、感情的に怒ることを指導と勘違いしている先輩職員におびえている姿がそこには垣間見られました。

入職したばかりの緊張感の中で不安が増殖したということもあるでしょうから、励まして引き続き悩みがあるなら相談に来るように助言し、あまりに状況が切迫したら僕自身がその社福の管理職の人と話し合う機会を持とうと思いますが、彼女は果たしてこの法人で働き続けられるでしょうか・・・。

だって相談しに来たのは金曜日の夕方5時少し前。なぜこんな時間に仕事をしていないのか聞くと、就業3日目で早出勤務の実習だって言います。しかも修業したばかりのその週の土・日も勤務だと言います。介護職がシフト勤務だからといって、それはないんじゃないでしょうか。シフト勤務に組み込むのは、ある程度基礎実務研修を終えた後でしょう。僕の施設長経験ではあり得ないことです。

介護人材不足が叫ばれていますが、人材を失わせているのは少子高齢化だけではなく、本当の介護をしない介護サービスの場そのものなのです。人の育て方・教え方を知らない介護事業者そのものなのです。

介護事業者のシステムや、そに居る職員が人材をつぶしているのです。これを変えなけりゃあ介護人材不足は永遠に続きます。

新入職員への教育のあり方は、サービスの品質につながるにとどまらず、定着率にも直結します。人材不足が最大の課題となっている介護事業にとって、最も重要となるのが、人材が張り付き定着する教育システムです。そうした介護人材マネジメントの一環として新人教育・指導のあり方を考えてほしいと思います。

見方を少し変えます。

介護福祉士養成校の国家試験義務化の経過措置がさらに5年延長されたことは、読者の皆さんもご存知だと思いますが、勘違いしてはいけないのは、延長されたのは経過措置だけです。つまり経過措置期間中に国家試験を受けずに介護福祉士と名乗っている人は、経過措置期間の中でしか介護福祉士として認められないので、その間に国試に合格するか、5年以上続けて現場で働くかしないと経過措置が切れたら資格は無くなります。

そんなわけで今年度の卒業生も国試を受けているわけですが、僕が非常勤講師を務める室蘭の介護福祉士養成校卒業生は今回合格率が100%で、全員合格でした。・・・しかし全員と言っても、卒業生はわずかに18人です。北海道の胆振・日高地域という広大な地域に1校しかない介護福祉士養成校の新卒者がわずか18人という実態が、介護人材不足の現状を表しています。

それだけ貴重な人材を、介護事業やそこの従業員が育てずに、その前につぶしてどうするのでしょう。一度介護事業者の中でつぶされた若者は、介護の業界から離れてしまうことだって多いのです。相違ないために、その原因を離職する人間の自己責任にして放置することなく、介護業界全体の財産喪失だとして検証しなおす必要があると思います。

ただでさえ人材は足りないのに、それに拍車をかけるような人材をつぶす要素を、介護業界ではびこらせて放置している状態に、もっと危機意識を抱いてほしいと思います。

※4/4〜新しいブログの名称を変更しました、masaの徒然草始めました。こちらも是非ご覧ください。










※もう一つのブログ「masaの血と骨と肉」、毎朝就業前に更新しています。お暇なときに覗きに来て下さい。※グルメブログランキングの文字を「プチ」っと押していただければありがたいです。

北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。

・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。


masaの最新刊看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。
TSUTAYAのサイトからは、お店受け取りで送料無料で購入できます。
キャラアニのサイトからも送料無料になります。
医学書専門メテオMBCからも送料無料で取り寄せ可能です。
アマゾンでも送料無料で取り寄せられます。