社会福祉は、生活していく上で困難な状況に陥っている人に対して行われる社会的な支援・援助のことを言い、生きる権利(生存権)を保障するために必要とされるものである。

介護保険制度が国費と強制加入の社会保険料という公費運営され、そこに位置付けられた各種サービスが、利用者の生活支援を目的としているという事実は、それが単なる営利事業ではなく、国民の生きる権利を支える社会福祉制度の一翼を担うものであることをも意味している。

よって介護事業者で勤めている人々は、自分が従事している仕事がこの国の社会福祉の一翼を担う仕事だと考えてよいと思う。そのことに使命感と誇りを持つことは悪いことではないし、むしろその責任をしっかり意識して、すべての関係者が利用者の生きる権利を保障しうるスキルを身に着けるという動機付けを持つべきだ。その部分では高邁(こうまい)な精神を持ってよいと思う。

だからと言って介護の職業を高邁な概念に祭り上げるだけで、そこで働く従業員がその名誉だけを感受するだけに終わって、適切な労働対価を求めることが、高邁な精神と相反するものだと非難を受けるようなことがあってはならない。

介護事業が、利用者の生きる権利を支える仕事だという理由で、支援者の権利や暮らしがおざなりにされてよいわけがないのである。

そもそも「健全なる精神は健全なる身体に宿る」という考え方は、介護事業においても必要である。介護事業だから滅私奉公が当たり前という考えや、自分の暮らしを顧みずに献身的に奉仕することが社会福祉であるなんてことはあり得ないし、あってはならないのだ。

介護事業を利用する人の権利が護られ、暮らしの質が向上するために、従業員の暮らしの質が無視されてよいわけがなく、従業員の暮らしの質が上がるからこそ、健全な精神にもとに、プロフェショナルとしての自覚が芽生え・育ち、高品質なサービスにつながっていくのだと考えねばならない。

事業経営者も、「福祉事業なんだから」という理由で、従業員の待遇が無視されて、さしたる経営努力もせずに従業員の劣悪な待遇で介護事業が支えられているという状況はあってはならないのだ。経営者が、知恵も働かせず工夫もしないで、「経営が厳しい」といって、従業員の待遇改善をおざなりにするのは、経営者自身の無能を証明しているようなものだ。

そういう意味でも、安易に人件費を切り下げようとする事業者に明日はないと言える。従業員はそういう事業者と事業経営者を見放す必要があるのだ。

特に待遇を改善しない理由を、福祉の精神に求める介護事業経営者は最悪だと思ってよい。社会福祉の概念も精神も、本来そんなところ(事業経営というステージという意味)に存在するものではないからだ。

これからの介護事業は、単価が抑えられる中でサービス利用者は増えるのだから、いかに顧客を数多く獲得するかが事業経営にとって一番求められる戦略だ。それができれば介護事業は、まだまだメガビジネスチャンスだ。そうであれば効率的にサービスを提供し、顧客を増やし事業を拡大していく必要がある。

しかし事業規模を大きくするということは、それだけ人材が必要だということだ。どういう経営主体に人材が張り付いて、事業規模を拡大できるのかを考えていかねばならない。それに思いが及ばない経営者は、深い傷を負う前にささっとこの業界から退場したほうが良い。

だからと言って介護事業において事業経営者が事業収益を求めること自体が、福祉の精神に反するような考え方があってはならない。事業収益を求めるからこそ事業経営を継続でき、従業員にその労働に見合った対価を支払い続けることができるわけで、その戦略は必ず必要になる。収益を挙げて事業拡大を図る経営者が後ろ指を指される理由は全くないのである。

指弾されるべきは、経営能力がなく経営戦略も事業戦術も立てられず、事業廃止に追い込まれて従業員を路頭に迷わせる経営者である。

どちらにしても将来に備えて収益の一部を事業規模拡大に投資することなく、自らの懐を肥やすだけの経営者に明日はない。同じく自分の懐具合だけを気にして、人材を集めるために必要となる従業員の待遇を向上させる工夫をしないで、内部留保だけを膨らませ続ける経営者も、砂上の楼閣に立っていると言っても過言ではないだろう。

社会福祉の高邁な精神は、従業員がそのことに使命感と誇りを持って、サービスの本質向上につながる意識に向けるべきだろうし、そのために必要な対価は、考えうる最高のものを従業員に手渡していくという考え方がなければ人材は集まらないだろう。

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