介護職を目指す人にとって、就職先を見つけること自体はさほど難しいことではない。
というより介護職は、どこの介護事業者でも不足しているので、引く手あまただ。だからと言ってどこにでも就職できると高を括っていると、将来後悔することになる。
ある調査によると、介護福祉士養成校の新卒者で10年同じ職場に勤務している人と、10年間で4カ所以上職場を変えている人との年収を調査すると、平均で年額25万以上の差が生じていて、同一事業者で継続勤務している人の方が年収が高くなっているという結果が出ている。
この傾向は、昨年10月から算定できるようになった特定加算によってさらに強まると予測できる。なぜなら特定加算が一番多く配分される、「経験のある介護福祉士」については、その経験10年以上を法人単位でみて決定している事業者が多いからだ。経験については、事業者判断で他事業者の勤務年数と通算できるルールになっているとはいっても、実際に他事業所の経験を通算している事業者は少ないのである。
このことによって、職場を転々とする介護職員は、介護福祉士の資格を持っていても、いつまでもaグループに入れずに、bグループの「その他の介護職員」のままになる可能性が高まっている。そうなると月収ベースで、aグループの人と数万円の差が生ずるのだから、年収差はさらに広がることになる。
勿論転職組の中には、引き抜き・キャリアアップの人もいて、それらの人は前の職場より好条件で雇用され、特定加算も前職場の経験を通算してみてくれるという条件で再就職している例もあり、それらの方々は年収がアップしており、前述した調査結果には該当しないと言える。
しかし平均値で見る限り、キャリアアップ・収入アップの転職組は、そうでない転職組より圧倒的に数が少ないし、転職回数が多くなれば多くなるほど、キャリアアップと程遠い理由による転職になっているという実態が見て取れる。
つまり高い年収を得たいのならば、できるだけ同じ事業所で働き続けて、そこで偉くなるのが一番てっとり早い方法であると言えるだろう。しかし事業者もいろいろで、能力や経験に見合った対価を手渡してくれないことには、長く働いてもどうしようもないのだから、給与規定はどうなっているのかということも当然大事な選択要素になる。
しかしそれよりも何よりも、その事業者が安定して経営が続けられなければ意味がないのだから、将来性があるかどうかも睨んでほしい。介護事業であれば、顧客に選ばれて将来事業規模が拡大できるような経営戦略を持っているのかということが一つのポイントとなる。今現在、顧客に選ばれている事業者なのかについても注目すべきだ。そしてサービスの質に対するこだわりがあり、質の管理、向上に向けた方針なりシステムなりがあるかどうかも見極めるべきである。
そもそも生産年齢人口が今後も減り続けるのだから、労働対価を適切に支払わない事業者には人材が集まらず事業ができなくなる。介護事業経営者が収益を抱え込んで従業員に還元しない事業者もなくなっていく。そんな事業者に就職しても、短期間で次の就職先を探さねばならなくなるのだから、そんなことがないように職場を選ばねばならない。
そんな中で長く安定的に雇用と対価が確保される事業者とは、どんな事業者かを考えて選ぶべきだ。
職員募集の際に、年齢や経験・資格などを全く指定せず、誰でもよいかのような募集広告を出している事業者は選ばないほうが良い。そこは常に人手が足りない状態で、とりあえず誰でもよいから採用したいという意味なので、そんなところの職場環境が良いわけがないからだ。
少なくとも、「経験不問」・「未経験者歓迎」などと募集している事業者においては、それらの人をきちんと教育できるシステムがなければならないはずなのだから、「未経験の人をどのように育てているんですか?」と面接時に質問して、そのシステムを明確に答えられずに、「先輩職員が現場できちんと教えますから」などでお茶を濁す答えしかできない事業者に就職しないことである。
そんな介護事業者では、根拠の無い経験だけが頼りの間違った介護が日常化しており、職員も疲弊し、利用者の暮らしの質もおざなりにされてしまうからだ。職場環境として最悪だ。
人材不足が叫ばれている今日でも、年齢や経験・資格などをきちんと示して、条件を示したうえで職員募集をしている事業者は、そういう人しか求めていないという意味で、経営理念が募集に現れているとみてよい。
人材をしっかり見極めて職員を採用しよとする事業者は、サービスの品質もそれなりに担保されているだろうし、職場の人間関係をはじめとして環境の整備にも力を注いでいる可能性が高い。そこは長く働くことができる可能性が高い。
そういう意味では、職員の定着率が高いかどうかにも注目すべきではないかと思う。働きやすく、コスパに見合った対価を得られる事業者ほど、職員の定着率は高まる傾向にあるからだ。
少なくとも職場理念や就業規則の定めを理解していない人が、面接担当者である職場や、給料表もなく、給与規定のない職場は最初から選ばないほうが良い。そこは労務管理ができていない職場であると言ってよく、経営者の能力も知れてくるので、廃業予備軍と見てよいだろう。
どちらにしても、就職先がたくさん選べるからと、とりあえず就職してみる的な考えを持っている人は、社会の底辺予備軍である。選べるからこそ、数多い選択肢の中から最良の選択をして、そこで経験を長く積み、偉くなる出来である。
職場の中でそれなりの地位に就くことで、自分の理想も実現可能性が高まるわけだから、この国の介護の質を少しでも高めようという動機づけを持っている人が、職場を転々と変えて、いつまでも職場を動かす地位に就けないことは、その動機づけや意思に反した行為だと自覚すべきである。
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