組織風土はあっという間に悪化するが、よくなっていくのには時間がかかる。
一旦低下したパフォーマンスを元に戻すためには、莫大な費用と時間を要すこともある。
だからこそサービスの品質管理は最重要視されていかねばならないし、一旦確立したサービスの水準の低下がないように、そのほころびを繕うシステムのチェックは欠かせない。
先輩や同僚のあまりの態度の悪さを憂いた職員が、報道機関に隠し撮り動画を送ったことによって明らかになった虐待・不適切対応が、市議会で大問題として取り上げられた介護施設では、利用者の名前の呼び方のルールを無視した職員を放置したことが、組織風土を悪化させていった。
そこでは利用者を名字に、「さん付け」で呼ぶという、ごく当たり前のルールが存在していたのに、ある職員が、一人の女性利用者を、「ちゃん付け」で呼び始めたことにより、その利用者を「ちゃん付け」で呼ぶ職員の数が、ウイルスが増殖するかのように増えていった。そして、「ちゃん付け」で呼ばれる利用者の数も増えていき、やがてそこでは利用者にニックネームをつけて呼ぶようになった。
その結果、その施設では若い女性介護福祉士が、利用者に向かって、「お前」呼ばわりし、「死ね」・「へ理屈言うな」という罵声が飛び交うようになった。
言葉を崩すことは、こんなふうに感覚を崩していくことにつながるのだ。そんなふうにしてタメ口をフランクな言葉だと勘違いしている人によって、罵声も罵倒も正当化されているのが、介護事業の現状の一面でもある。恥かしいことだ。醜いことだ。
しかしそのような醜い言葉を使って、ひどい対応をしている人々も、家に帰れば普通のお母さん、普通のお嬢さんである。そんな人たちが、介護施設という器の中で感覚を麻痺させ、自らが王様のように利用者の上に君臨する存在と感が違いすることによって、人として許されない対応に終始する化け物が生まれるのである。
そうなれば介護施設は、世間の常識が通用しない密室である。人の権利を侵害し続ける暗黒世界である。しかしそんな姿を果たして家族に見せられるだろうか・・・。
自分の働く姿を家族にも見せられないとしたら、そんな仕事に誇りなど持てないだろう。そんな仕事は面白く続けられないだろう。自分の職業をそんな風に貶めることがない唯一の方法は、私たちが対人援助のプロであるという矜持を失わず、プロとして適切にお客様に接するという礼儀作法を身に着けることである。
だから私たちに求められているのは、介護のプロフェッショナルとしてのサービスマナ―意識なのであり、それは対人援助に関わる者のコミュニケーションスキルに過ぎない。
サービスマナー意識が持てない人、タメ口を改められない人は、コミュニケーションスキルが低い人なのだから、本来そう言う人は対人援助に向いていない。だからそういう人は他に職業を求めたほうが良い。早く介護の職業から退場すべきだ。向いていないあなたが介護事業者の中に存在し続けていることは、顧客にとってもあなたにとっても、両者にとって不幸なことだ。そんな不幸な状態が続かないように、マナー意識の低いあなたは他の職業を探すべきである。
管理職・リーダーの方々は、そういうコミュニケーションスキルの低い人を見極めて、教育効果が表れないならば、引導を渡す役割を果たさねばならない。労働基準法で護られている労働者の権利は侵害できないが、職業の向き・不向きについてアドバイスすることはあって良いだろう。
タメ口を直そうとせず、人の心を傷つけかねない言動をとり続ける職員には、『対人援助の仕事は向かないよね。』とアドバイスすることもあって良いだろう。
そうしないと、いずれ自分に管理責任のある場の従業員が、利用者に不適切対応をしたことによって、自分が報道関係者の前で、「お詫び」の会見を開き、頭を下げることになるかもしれない。
あなた自身が会見場で糾弾されながら、質問に答える姿を想像してほしい。あなたの家族がその会見報道を見て泣くことになるかもしれないことに考えを及ばせてほしい。
そんなことが決してないと言い切れますか?世間から誤解を受けるような対応が全くないと自信を持って言えますか?従業員がマナーのない顧客対応を行っていることが即ち不適切とされるという意識は有りますか?
言葉遣いを人に合わせて変えて、常に相手に自分の思いや、誠意を伝えられる人間などいない。いたとしてもそれは常人ではないし、そんなやり方は誰しもが実践できる方法論ではない。そもそも汚い言葉で利用者と会話する理由を、相手に堅苦しく思われないためであると思い込んでいるコミュニケーションスキルの低い人間に、死ぬまでそんな技が使えるわけがない。
そんな神業を磨くのではなく、誰もが実践できる方法として、丁寧語で利用者対応できるように職員を教育すべきだ。
日本語を使い続けてきた日本人が、丁寧語で顧客対応ができないのであれば、それは致命的問題だから、少なくとも顧客と直接向かい合う仕事には就かせられないと考えるべきである。
介護とは、心にかけて護る行為を表す言葉である。その言葉の意味を実践するためには、自らの心無い言葉で人を傷つけてしまうことを誰よりも恐れる必要があるし、だからこそサービスマナーの必要性に気が付かない人は、介護の職業に向いていないのである。
職業として介護を行っている人は、介護そのものが仕事である。仕事である以上、お客様に不快な思いを与えないための最低限のルールはあって当然であるという常識に思い至らない人は、そもそも職業人失格である。
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