介護保険制度になったからと言って、介護サービスが社会福祉制度の対象外になったわけではない。

介護保険制度は、社会福祉制度改革・社会保障構造改革の一環として、介護サービスに社会保険方式を取り入れた改革に過ぎないのである。

それが証拠に介護保険法にもこの法律の目的は、「国民の福祉の向上」であると明記している。昔、どこぞの学者が、高齢者介護は介護保険制度に変わったんだから、福祉制度ではなくなったと宣っていたが、それは柔軟な思考回路を失った老学者の思い込みに過ぎないものだった。

介護保険サービス自体も対人援助であり、社会福祉制度の中でのサービスであるという視点を失ってはならないのである。自己責任という斧を振りかざして、制度のルールに疎い利用者をだますような形で金銭を搾取する行為が許されるはずはない。契約行為においても、その点には注意して真摯な対応が求められて当然である。

だからと言って、顧客である利用者のために、サービス提供事業者が「私どものサービスを使っていただいて感謝します」とひれ伏すことが求められているわけではないし、サービス事業者の従業員が、利用者に対して滅私奉公することが求められているわけでもない。

サービス契約は対等であり、その意味は双方が自分の利益のみを主張するのではなく、お互いがそれぞれの立場を慮ったうえで、サービスを利用したり、提供したりするという意味である。

そして保険サービスにおける契約は、税金と保険料を財源とした給付を受ける契約なのだから、そこには当然、負担してくれている国民全体の不利益になってはならないという考え方があって当然である。だからこそ定められたルールを遵守したうえでサービスを利用したり、サービス提供したりする必要もある。それは極めて当然のことである。

利用者の過度なこだわりにも保険サービスは対応していないのである。使う道具の指定や、方法の指定にも対応できない。サービス提供者を、「指名」する制度も現行制度には存在していない。そうした理不尽な要求については、丁寧に説明したうえで拒む必要もあるのだ。

そうした理不尽な要求を拒否する前提には、サービスを直接提供する従業員の側にも、利用者と同様に護られるべき人権や尊厳があるということである。

だからこそ介護事業経営者は、従業員が利用者から理不尽な扱いを受けないかということに常に気を使って、従業員の尊厳を損なうような扱いを受けたらきちんと対応せねばならない。

訪問介護などの訪問サービスでは、相手が要介護認定を受けている高齢者だと言っても、訪問介護員が女性の場合、利用者の力の方が強くて、過度な要求に怯えさせられる場合もある。利用者の自宅という密室の中で、そのようなことを放置しておけば訪問介護なんてできなくなる。

生活援助に対して、掃除の際にそこにあるものが何センチずれていたら駄目だとか、常識外れの要求をする人もいる。そんな要求に応えられないことを説明して、その理解が得られなければ契約を破棄して、サービスを終了させるのは事業管理者の責任であり役割である。その役割をきちんと果たさない事業者からは、いずれヘルパーがいなくなることを覚悟すべきだ。

繰り返しになるが、利用者本人のこだわりは公的支援ができない部分なのである。そこを理解できない人は介護保険サービスにしても、総合事業にしてもそのサービス対象ではなくなる。生活援助のサービス提供者は召使いではないので、その人権と人格を否定するような人に対してはサービス提供はできない旨を正しく理解いただく必要がある。理解しようとしない人は顧客として認められないのである。

どうしても自分のこだわり通りにサービスを提供してもらいたいならば、自分で家政婦を雇用するよう促すべきである。

どちらにしても介護事業経営者は、ケースによっては法律や従業員を護るために、毅然とサービス提供ができないと利用者に宣言する必要があることを理解しておくべきである。

利用者本位とは、事業者の不本意を前提に存在するわけではないのである。両者が本意のサービスが正常な姿である。だからこそ、「契約」という行為が必要とされているのだ。

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