1月に長崎県南保健所・南島原市・雲仙市・大村市等のお招きを受けて、それらの各市で看取り介護と終活に関する講演を行なってきた。そこでの大きなテーマは、「人生会議」であった。
その模様の一部が地元の新聞に掲載され、関係者から画像が送られてきた。
この記事は南島原市での一般市民を対象にした、「終活セミナー」の取材記事であり、翌日には雲仙市でも同じセミナーを行なったが、両日とも高齢者の方々が多数参加してくださり、終活とは何かを真剣に真剣に考えてくださった。
そのことは、先日書いた「終活セミナーは高齢者の方にもわかりやすい内容で」という記事で詳しく紹介しているので参照していただきたい。
ここでも書いているが、一般市民の方を対象にした終活セミナーで、やたらに数字やグラフを使うのはやめていただきたい。何万人とか何億円という数字は実感できないし、そんなものは身近な終活に必要のない数字だ。グラフだって講師の、「言葉」を見える化するわき役に使うべきなのに、グラフを主役にして、講師がその数値や内容を読み上げてどうするのだと言いたい。そもそも講師としてふさわしくない適性のない人が多すぎるのである。
セミナーは開けばよいわけではない。その目的やテーマに沿って、「伝えられるか否か」が問題であり、開催するだけのセミナーは、主催者・受講者双方の時間を奪うだけの意味のない時間に化してしまう。終活セミナーや看取り介護セミナーは、一般市民と保険・医療・福祉・介護関係者のすべての方に、伝える能力のある講師選びが成功の基本であることを主催者の方にはご理解いただきたい。
ところで終活を実施する過程で重要となるのが、「人生会議」である。(参照:人生会議の可能性 ・ 人生会議の課題)
人生会議という言葉は、国がパブリックコメントを募集したうえで、2018年11月30日に選んだACP(Advance Care Planning:アドバンス・ケア・プランニング)の愛称である。
その意味は、意思決定能力が低下する場合に備えて、あらかじめ、終末期を含めた今後の医療や介護等について、本人と家族が医療者や介護提供者などと一緒に話し合って考えておき、本人に代わって意思決定をする人も決めておくプロセスを意味している。
ここで注意してほしいのは、人生会議という愛称が誤解をもたらさないかということである。
会議というと、関係者が会議室などの特定の場所に集まって、一定の時間を定めて話し合うイメージが浮かんでしまうが、人生会議とはそうした時間や場所を定めた特定の話し合いを意味していないということだ。
人生会議とはあくまでも、終末期にしなければならないこと、考えなければならないことを、あらかじめ関係者と話し合って、その知恵を借りながら自分で決めたり行なったりする、「過程:プロセス」を意味するものであり、終活の中の1事象を表わすものではないという理解である。
そしてそこで決めなければならない終末期の過ごし方にしても、一度決めたことに縛られて、そこから身動きが取れない状態になってはならないという理解も必要だ。
例えば、「口から食事を食べられなくなった時にどうするか」という問題については、簡単に決められる事柄ではない。経管栄養のメリット・デメリットを、関係者から情報提供を受けた上で、その決定に関しては何度も迷ってよいわけであり、一度経管栄養で延命を求めた後で、その気持ちが変わって経管栄養をしたくないと気持ちが変わっても良いわけであるし、その逆もありだ。しかも何回も気持ちが揺らいで、その都度決めごとを変えても良いわけである。
エンディングノート(人生ノート)を、その都度書き直しても良いし、そのお手伝いを介護関係者がすることがあっても良いわけである。
口からものを食べられなくなり、水分も摂れなくなった場合、「せめて点滴くらいしてほしい」あるいは、「点滴もしないでそのまま逝かせて良いのだろうか」と迷っている人に、終末期の点滴がいかに苦痛を与えるものであるかということを、一般市民にも分かるように説明するのが、医療・福祉関係者としてのソーシャルワーカーの役割でもある。
終活セミナーで人生会議を語る講師は、この部分をしっかり伝える必要がある。来月初めに登別市でも、人生会議をテーマにした講演会が予定されており、そこでは医療機関の職員が講演を行なうようであるが、そのことをきちんが伝えられることを望んでいる。
しかしもっとはっきり言うなら、終活や人生会議、看取り介護に関して言えば、全国各地でそのことをテーマにして講演を行ない、多くの関係者から評価されている僕以上の講師がこの地域にいるとは思えないのであるけれどなあ・・・って思ったりしている。
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