ターミナルケアを終末期介護と訳さず、「看取り介護」と訳した経緯については、「私たちが思いを込めた言葉を安易に略したり変えたりしないでください」と言う記事の中で詳しく解説している。
そこでも書いているが、「看取り介護」とは、対象者が人生最期の時間を過ごすにあたって、安心と安楽に過ごす中で、少しでもこの世でつながりのある人たちとエピソードを刻みながら、この世に生まれ生きてきてよかったと思えるように支援する行為を意味するものである。
そのために心を込めて、心にかけて護るという介護の本質を実現することができるのが、「看取り介護」である。
さらに言えば、超高齢社会の看取り介護とは、終末期判定がされた後の介護のことを考えるだけではなく、そこにつながる日常の、「生き方」を考える必要もあると思う。高齢期に地域の中で孤立せず、誰かと繋がって暮らし続けることが、「孤独死・孤立死」を防ぐ唯一の方法である。
隣人の存在を死臭によってはじめて知るような、背筋が寒くなる地域社会としないように、高齢者が地域で孤立することを防ぐ社会にしていくための一連の活動も、看取り介護につながっていくのである。
特に男性高齢者は、仕事をリタイヤした後に他者とのつながりを失い地域社会で孤立してしまう人が多い。女性の方が長寿で一人暮らしの人が多いのに、孤独死している人の7割が男性であるという現実は、高齢期に地域社会から孤立している男性が多いという意味である。
その人たちがどのように地域社会で居場所を確保し、つながりを保っていくのかということが、地域包括ケアシステムを深化させていく過程で考えられなければならないし、看取り介護・ターミナルケアに携わる関係者は、そうした視点からも他職種連携の在り方、地域包括ケアシステムにおける自らの役割を考えていく必要がある。
それらの課題が解説できた先に、人生の最終ステージをすべての人が安らかに、安心して安楽に過ごすことのできる看取り介護支援があるのだということを忘れてはならない。
看取り介護の場は確実に多様化し、新しい方法論も生まれている。「ウォッチコンシェルジュを知っていますか」という記事の中で紹介した博多の、「株式会社ワーコン」は、在宅一人暮らしの方の看取り介護を支援し、「お客様の人生の最後の伴走者でありたい」・「決して、独りで逝かせない」をモットーに様々な人をサポートしている。
我が国では昭和51年以前は医療機関死より在宅死が多かったのである。国民の7割以上が医療機関で死を迎えている今の日本の地域社会は、昭和51年以前に自宅で親の枕辺に集まって子が看取っていた時に、死に行く親から渡されていた命のバトンをなくしてしまっているのかもしれない。そのバトンを取り戻す取り組みが、在宅でサ高住で特養でGHで行われるようになっているのである。
しかし看取り介護・ターミナルケアの場や方法論が多様化しているというもう一つの意味は、看取り介護と称したニセモノの終末期対応も存在しているという意味でもある。
終末期診断があいまいで余命診断もしない状態で、「看取り介護対象者」だと決めつけているところがある。それって、「未必の故意による死への誘導」ではないだろうか?夜間の見回りと見回りの間に息が止まっている人もいる。それって、「孤独死」ではないのか?看取り介護だからと言って、密室の中で日中でも部屋を真っ暗にして放置されている人もいる。それって、「見捨て死」ではないのだろうか?
看取り介護とは、そんなあいまいで、寂しくて暗いものではない。もっと温かくて感動的な時間が看取り介護だ。だからと言って看取り介護は決して特別な医療や特別な看護や特別な介護が必要なわけではないのだ。それは命のバトンリレーを支援することであり、日常ケアの延長線上に、誰かの命が燃え尽きることが予測できる時期に、燃え尽きる瞬間まで、人が人と繋がり生まれるエピソードの中で、命のバトンをつないでいくお手伝いをすることなのである。
そんな看取り介護の実際のケースを紹介するのが、僕の看取り介護講演である。そんな講演を聴いた方の声を是非参照していただきたい。
本年1/9に大村市市民交流プラザ(長崎県大村市)で行われた、「長崎県県央保健所主催・大村市、大村市医師会共催 、看取り介護講演会アンケート集計結果」が、講演事務局から送られてきた。
僕の講演を聴いた方が、受講前に看取り介護に対して持っていたイメージと、受講後に理解した内容があまりに違うので驚いている。しかしその驚きとは、自分にもそこに関わって命のバトンリレーに関わることができるのだという驚きであり、介護という行為の中で実現できることがたくさんあって、そのことを理解できることによって、あらたな意欲と力につながるものでもある。介護の可能性を改めて感じ取ることができ、介護に本気で向き合う活力につながるという意見もある。
文字リンクをクリックして、是非受講された皆さんの声を参照いただきたい。きっとその声は、このブログ読者の心にも響くと思うのである。
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