厚生労働省が昨年のクリスマスイブの日に発表した2019年の人口動態統計の年間推計で、日本人の国内出生数は86万4千人となった。

この数字は前年比で5.92%減と急減し、1899年の統計開始以来初めて90万人を下回ることを示している。出生数が死亡数を下回る人口の「自然減」も51万2千人と初めて50万人を超え、政府の対策にもかかわらず少子化・人口減が加速している。

つまり日本の少子高齢化は相変わらず振興の一途をたどり、20年後の生産年齢人口も今よりさらに減ることを意味しており、介護事業者にもそのことは色濃く影響してくることは確実だ。

そうであるからこそ国の施策によって介護労働力不足が解消するとことは期待できないと考えるべきだ。地域全体の介護事業者の人手が充足することは考えにくいのだから、人材確保という面での勝ち組と負け組に分かれることは必然であり、どういう事業者に若者が魅力を感じて職員募集に応募してくるのか、どんな職場にそうした人材が定着しているのかを真剣に考えなければならない。

一つ言えることは介護の職業に魅力を感じて就業する人は、きとんと教育すれば人材になる確率が高いということである。

他にどこも採用してくれないから、募集がある介護の仕事でもするかという動機づけの人は、教育の手が及ばない人も多い。そういう人たちと違って、熱い思いを持って介護の職業を目指す人たちは確実に人材として育っていくのだから、そういう人たちの動機づけが護られて、そういう人たちのモチベーションが維持できる職場にしていくことが大事だ。そうすればそこには、さらに介護の仕事に魅力を感じている人が集まってくるのだから、人材が育ち定着するという好循環が生まれる。

だからこそ介護の仕事をしたいという動機づけを持つ人たちにとって魅力のある職場となっていかねばならない。

そんな介護事業者とは、品質が高い介護サービスを提供できる介護事業者であり、そこで働くと高い介護技術が得られる場所である。さらに介護支援を必要とする人の役に立ち、そのことで自身のアイデンティティーが確立できる場所でもある。

自分が働く職場を、そういう場所に変えるためには知恵が必要だ。

知恵のない介護施設では、「人手が足りないから頻繁な着替えの介助はできない。」という。「人手が足りないから、入浴支援は週2回が精いっぱいだ」という。そんなことを言っている介護施設からは今に、「人手が足りないから1日3回も食事提供できない」と言い出す輩が出てくるんじゃないか。全く馬鹿げている。

分業をせずマンツーマン介護を基本とすれば、業務ロスが減り仕事は効率化できる。そもそも分業する場合は、分業する業務の数だけ人がいないと一人のケアもできないが、分業しないマンツーマン介護であれば、一人の職員でカバーできる業務範囲は増えるのである。誰か一人の担当者がいれば入浴支援ができるから、毎日入浴介助することも可能になるのだ。

シフトを工夫してモーニングケアやイブニングケアに人手をかけることもできる。早出が朝食介助の時間から勤務がスタートする必要なないし、遅出は夕食が終わる時間を終業時間とする必要はなく、夕食が終わりイブニングケアが終わる時間までを勤務としても良いわけである。

そのような知恵を使わないから工夫が生まれないのだ。知恵を使って工夫すれば新たな方法論が生まれる。その時必要となる道具をそろえたり、システムを変更したりすることは、事業者全体で取り組むべき問題で、全員が知恵を絞ることで解決できる問題は多々ある。そして必要なケアにお金をかけることはあっても良いわけである。

そうした知恵を生む人材を育てるためには、正しい職員教育が必要不可欠だ。OJTとスーパービジョンはその基本でもある。

OJTとスーパービジョンとコンサルティングの違いを知りながら、それぞれどのように教育システムに取り込んでいくかが問題となるのである。しかしスーパービジョンに関して言えば、そもそもスーパーバイザーになり得る人材を育成しているのかが問題である。スーパーバイザーは経験だけで自然発生しないからだ。

職員が育ち定着するための教育システムは、労務管理の一環として構築していかねばならない。そのためには教えるべき労務が言語化されていなければならない。観て覚えろという、「職人技」はOJTにならないし、一方的にしかりつけてものを教える行為は、スーパービジョンと相反する方法論だ。

そのためにもティーチング(指導する)からコーチング(相手に考えさせる・気づかせる)ができるリーダーを育てる職場のシステムが必要になるわけである。

愚痴をこぼすばかりで、仕事の手を動かさない職場に人材は育たない。愚痴を言う暇があれば、知恵を働かせて工夫をしろと言う労務管理が不可欠だ。

この部分を高い木の上から見て、全体を指揮するのが施設長や管理者の務めである。そのヒントを与えるのが僕の仕事でもある。今年もそんなヒントを伝え続ける予定なので、気軽に声を掛けていただきたい。
知恵


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