今年もいよいよ押し詰まり、後1日1半で新しい年に変わろうとしている。このブログの読書の皆さんは、今どこで何をしながらこの記事を読んでくれているだろうか。

今年もずいぶん勝手でわがままなことを書きなぐってきた僕のブログであるが、1日何千人もの皆さんが懲りずにここを訪れてくださっている。それだけではなく僕の講演会場ではいつも何人もの方が、「ブログ読んでます。」と声を掛けてくださった。本当にありがたいことである。

しかし何度も書いているが、ここは僕の身勝手な意見を書く場所にしており、読者に媚を売る記事は決して書かないので、そのスタンスがお気に召さない方は素通りするか、つながずにいただきたいと思う。そのことを広い心でお許しいただける人のみ、この場所で来年以降もつながっていければと思う。

今年を振り返ると、相変わらず災害の多かった印象のある2019年であるが、事件や事故もショッキングなものが多かったように思う。

介護業界に関連しても様々な出来事があった。相も変わらず利用者虐待をはじめとした不適切サービスに関連する報道はなくならず、不正請求で指定取り消しというニュースも何件も流された。

その中でも介護関係者がショックを受けた最大の事件は、自立支援介護に関連して、「和光式方式」を確立させた、東内京一(とうない きょういち)容疑者が逮捕されたというものではないだろうか。

東内容疑者の当初の逮捕容疑は、生活保護受給者の自宅から回収し、福祉事務所で預かっていた現金200万円を、「詐欺グループの金らしい。検察に持っていく」とだまし取ったというものである。

しかしその後、新たな犯罪行為が次々と明らかになり、生活保護受給者の女性から預かっていた現金や預金計548万円と通帳などを搾取した容疑や、成年後見制度を口実に高齢者夫婦から300万円を騙し取る業務上横領・その他の窃盗などの疑いで、9月までに計5回の逮捕状が執行されている。その被害総額は3千万円を超えるという大事件である。

東内容疑者の逮捕時の役職は企画部審議官で、介護保険関連部門の部署であった。そのため和光市方式をさらに推進・確立されるために介護部門の部署に長く腰を下ろし続けたことが事件の背景要因であると批評される向きもあるが、それを言ったら僕などのように同じ社会福祉法人の同じ介護部門に30年以上働き続け、トップの位置を占めた人間なら何でもありと思われそうで、それは少し違うだろうと言いたい。

一つの行政システムの中に長くいて、そのシステムが腐敗していくというならともかく、今回の逮捕容疑は、高齢者の財産を狙って、それをだまし取ったという明らかな犯罪行為だ。

僕は相談員時代には、入所利用者の年金や預金の管理を担当していたが、それに手を付けようなんてことは全く考えられなかった。それは年金や預金が、高齢者にとっていかに命綱となり得るのかということを、様々な家族関係や生活環境から伺い知る立場にいたからではなく、そもそも人様の虎の子である財産に手を付けるなんて言う反社会的行為をすることはできないという、当たり前の社会常識を持っているからに過ぎない。

普通に社会生活を送っている人で、対人援助に関って生活の糧を得ている身であれば、自分の支援担当者に信頼を寄せてもらうことが一番に考えることで、その人をターゲットにして窃盗や横領を行うなんて考えられない。それは専門職というより、人としての品性の問題であり、一つの部署に長くいるかいないかと関係のない問題だろうと思う。

東内容疑者の犯罪は、「出来心」の範疇をはるかに超えた犯罪で、自分が業務で関わりを持った高齢者をターゲットにして、何度も多額のお金を搾取し続けている点で悪質すぎると思う。自分が関わった高齢者の老後の資産を奪うような人が、地域の高齢者の福祉の向上なんて本当に考えていたとは思えない。

彼の犯罪内容を知るにつけ、そもそもこの人物が高齢者の福祉を語り、地域福祉のシステムを設計するにふさわしい人物であったのかという疑いを持たざるを得ない。むしろ介護という部署を隠れ蓑にして、高齢者から搾取することを目的に、自立支援介護という看板を掲げていたのではないかとさえ疑いたくなる。

この人を神様のようにあがめている信者が全国にたくさん居たのも事実だ。それらの人たちは東内容疑者から、地域福祉とは何たるか、高齢者の自立支援とは何かというレクチャーを受け、その影響を受けながら、全国各地で東内容疑者の唱える自立支援を信奉していた。それを今も続けている人もいる。

和光市の自立支援介護とは、毎年要支援認定者の4割以上が介護保険を、「卒業」するとして、非該当認定を受けることを目指して取り組みがされていたものである。それを真似て大分県や桑名市等で同じような、介護保険からの卒業を目指したケアプラン介入等が行われている。

しかしそれらの地域では、要介護認定で非該当とされた利用者から少なくない不満の声が挙がっていることも事実で、その何割かの人たちは、全額自己負担で介護保険のサービスの自費利用をしている。要するに和光市方式とは、自立支援介護という名を使った給付抑制策に過ぎず、それを唱えた中心人物が、地域の高齢者から金をだまし取っていた姿にかぶって見えるのである。

介護保険サービスを使えなくすることを、「自立支援」だと考える洗脳された人が、いまだに高齢者の尻たたきをしている姿は醜いだけではなく、空恐ろしくさえある。本来の自立とは、自分で何でもできることではなく、自分の希望通りに何かをしてもらうことを含んだ概念であることを理解していない行政職員や介護支援専門員がなんと多いことか・・・。

和光式方式で介護保険から強制卒業させられた人の中には、そのような行政対応を、「血も涙もない」と泣いて批判する人も多いが、まさにそのシステムとは、高齢者の命の綱である財産を平気で奪い取る、「血も涙もない行政職員」によって構築・推進されていたシステムなのである。

自立支援介護という名の欺瞞が、そこには存在していないかを問い直す必要があるのではないだろうか。

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