介護保険の一連の議論は、制度改正論議が一応の決着を見て、年明けからは2021年度からの介護報酬改正にむけた議論に移ることになる。
そこではケアマネジャーの処遇改善が大きなテーマになってくるが、財源をどうするのかが問題である。マイナス改定が予測される厳しい改定論議の中で、どう着地点を見つけるのかが注目されるところである。
どちらにしても甘い見込みはできず、いざ議論が始まってみると、処遇改善などとは言えないわずかな加算でお茶を濁される可能性もあるので、ケアマネの皆さんはそれぞれの活動ステージの中で、自らの仕事ぶりで処遇改善の必要性を訴えてもらいたい。
僕はケアマネ応援団を自称しており、ケアマネジャーの処遇改善自体には大いに賛成の立場である。しかし今巷で叫ばれている処遇改善が必要とされる理由については納得いかない。はっきり言うとそんな理由で処遇改善が必要だという意見には不満があるのだ。
というのもケアマネの処遇改善の必要性がクローズアップされるようになった大きなきっかけは、そのなり手が急減したことだ。そのために処遇改善が必要だというのは、本来のケアマネの対価を考える上では良い理屈とは言えないと思う。
確かにケアマネ試験の昨年度の受験者数は4万9312人で、13万1432人だった一昨年度から一気に6割超も減り、今年度の試験でも十分に回復していない。その最大の理由は、介護職員の賃金が以前より上がってきた中で、求められる仕事・研修が非常に多いわりに報酬はそれほど高くないケアマネの仕事に見切りをつける人が増えたからではないかといわれている。
そのためケアマネの成り手をなくさないように処遇改善が必要であるという理由はわからないではないが、その理由を第一に処遇改善が必要だという論理が前面に出てしまうと、介護支援専門員という専門職の待遇は、その資格の専門性で考えられる以前に、介護福祉士などの他資格との比較でしか決まらないことになりかねない。
そうなったら逆に介護福祉士の待遇が下がれば、介護支援専門員の待遇も下げてよいという論理につながりかねないし、ケアマネの成り手が充足しておれば処遇改善の必要がないとされる可能性だってある。
そうなるといっそのこと、ケアマネの仕事を減らすことで、必要とされるケアマネの絶対数が減ればよいという乱暴な論理から、居宅サービス計画が必要なケースを減らすために、軽度者のサービスを市町村事業に移す速度が加速されるかもしれない。
そんな変な理屈が通用しない理由で、ケアマネの処遇を改善しなければならないのだということを主張すべきだ。
日本の福祉の底辺は、介護支援専門員という資格者が生まれる前と比べると、その後においては確実に底上げされているのである。高齢者にとって、いつでも自分のことを相談できる担当者が身近にいるという安心感は、ケアマネが存在する以前にはなかったものである。何か心配事があった時に、自分の担当者に相談さえすれば、悩み事を聞いてくれるだけではなく、その悩みや問題の解決に必要なサービスまで結び付けてくれるという安心感は、ケアマネジャーが存在するようになったからこそ得られるものである。
そんなふうにケアマネは、24時間・365日の相談に応ずる体制をとって、利用者宅を定期的に訪問しながら、日々の利用者の状態変化に応じた対応をとれる仕事をしているのである。PDCAサイクルを日常的に構築・統括する中心的存在としても、ケアマネは欠かせない存在になっているのである。
そうした仕事に対する対価として、今の報酬が適切な報酬ではないということをもっと大きな声で主張してよいと思う。ケアマネ資格が国家資格ではないからと言って、その仕事ぶりは決して医師や看護師などの国家資格に引けを取らないと主張することも必要だ。
そのためにはケアマネジメントが機能して、暮らしが豊かになっている人がたくさんいる結果を実践で示して、そのことを情報発信すべきだ。そういう意味では、ケアマネジャーに足りないスキルの一つは、「発信力」なのかもしれないと思っている。
さらには、ケアマネの個人格差を縮小して、不適切なケアマネジメントしかできないケアマネが存在しにくくなる仕組みへの提言を、ケアマネの職能団体などは同時に行うべきだ。
介護支援専門員という資格者は、立派な専門職なのである。その資格取得を目指す受験者数の動向にかかわらず、地域福祉の中心になくてはならない資格として、それに見合った待遇を要求することも必要ではないだろうか。
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