戦後、日本人の死因調査が始まって以来ずっと1位を占めていた、「脳卒中(脳出血・脳梗塞・くも膜下出血等の総称)」は、昭和50年代の前半にその位置から陥落し、2019年1月時点の最新情報によれば、その順位は3位に下がり、割合も8.2%と1割に満たない数字になっている。(下記図参照ください。)
主な死因別死亡者数の割合(平成29年)
社会の高齢化がさらに進行することを考えると、いずれ老衰死が脳卒中による死亡を上回ることは明らかであり、脳卒中は死因の上位3位から外れることは確実であるともいえる。

それは生活習慣病の予防ということが盛んに叫ばれて、病気の予防意識が高まったことにも起因しているだろうし、超高齢社会では、脳卒中以外の病気の発症リスクが高まっているという理由もあるだろう。

しかしその意味は、脳卒中という病気そのものでは、なかなか死ななくなったというに過ぎないという見方もできる。超音波画像診断技術などの進化により、初期の脳卒中が診断できるようになり、早期発見・早期治療が可能となったことや、脳外科手術の技術進歩により、脳卒中そのもので亡くなる人は減っているのである。

勿論、病巣部位が脳幹など直接生命に危険を及ぼす部位であれば、早期発見しても手術や治療は難しいが、命を失わなくてよくする治療は確実に進歩している。

しかし脳卒中の厄介な点は、命が助かっても脳細胞の壊死など、脳ダメージが後遺症として残るという点にある。医療技術がいくら進化したとはいえ、一度損傷した脳細胞を再生する手段を人類は持っていないのである。そのため脳内にダメージを受けた部分が、運動機能に関連した部位であれば、それは手足の麻痺として残るし、それはリハビリテーションで元通りに回復するとは限らないのである。

よって脳卒中を発症する人がわずかながら減っているとしても、脳卒中を発症しても死なない人が増えているという状況下で、手足の麻痺による運動障害を抱えたまま、暮らし続けなければならない人の数は増えているのではないかと思われる。

手足の麻痺は、その程度に関わらず大きな生活障害でもある。排泄感覚に問題がないのに、麻痺した手足を自由に動かせないことによって、移乗・移動だけではなく、排泄につながる巧緻動作に支障を来して、それが失禁に結びついているケースは多い。

特に巧緻性の障害は、軽度麻痺でも現れるので、服のボタンなどをはめたり、外したりするのに時間が掛かったり、食事を自由に楽しんで食べたいのに、魚の骨などが取りずらくなるために時間が掛かり、食事のおいしさを損なうケースもみられる。

だからこそ脳卒中を克服した後の、「麻痺からの解放」は大きな課題であると言えるのである。

しかし今、脳卒中後遺症等による手足の麻痺から多くの人々が解放される可能性が生まれている。公益財団法人東京都医学総合研究所が、「人工神経接続システム」の開発に成功し、動物実験では、脳梗塞のサルの麻痺した手が「人工神経接続システム」により回復したというのである。

人工神経接続システムは、脳の神経細胞と似た役割をするコンピューターを用いて、脳に近い側の神経細胞の情報を受け取り(入力)、その情報を末梢側の神経細胞へと伝える仕組みである。脳表面の複数の領域からの電気信号を記録し、記録された信号から特定の脳活動を見つけ出して、脳活動パターンを検出し、その脳活動パターンを電気刺激に変換することで、筋肉へその情報が伝わることができ、機能が回復するというものである。

その詳細は、NIPS生理学研究所のHPに記載されている、「手の運動機能を持たない脳領域に人工神経接続システムを使って、新たに運動機能を付与することに成功 」というアナウンス記事をご覧いただきたい。

この記事にはメカニズムも図解されて解説されているので、科学に弱い僕でも何となく理解できるので、理数系の得意な方はさらに深い理解が可能だろう。

このシステムはまだ動物実験の段階で、ヒトへの臨床応用はされていないが、サルというヒトに近い動物での実験の成功は、ヒトへの応用に大きな期待を抱かせるのではないだろうか。

このことが実用化すれば、もしかして人間は脳血管障害等の後遺症による手足の麻痺から解放されるかもしれない。そうなれば多くの人々の暮らしが良くなり、人生そのものが豊かになることにつながっていく可能性が高い。

脳細胞がダメージを受けたて、運動機能に障害を持ったとしても、人工神経接続システムによって、その機能を簡単に回復できる・・・。是非そんな日が来ることを期待したい。

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