今日の夕方、僕は今年最後となる、「介護認定審査会」の審査に臨む予定になっている。そのため事前に送られてきた資料を読み込んでいるが、今日は審査上限の35件より少ない23件の審査予定だ。

認定期間が最長36カ月に延長されたことが、審査数の減少に影響していることは間違いなく、それは決して悪いことではない。審査すべき申請が多すぎて審査会にかけられずに認定が先送りされ、サービスが利用できなかったり、暫定プランで利用せざるをえなかったりするケースが減ることのメリットは大きいと思うからだ。

そのことに関連したルール変更が、来年度から実施されることが決まった。

16日に行なわれた社保審・介護保険部会では、厚労省より介護認定期間の48カ月までの延長が提案され、同会の承認を得た。

これによって2021年度の審査ケースからは、更新の前後で要介護度に変化がなかった高齢者については、認定期間が最長48カ月に延長される。要介護度に変化があったケースについては、現在と同様の36カ月が最長の認定期間であることに変わりはない。

期間延長で状態変化が要介護度に正しく反映されないのではないかと懸念する声も聞こえてくるが、そんな心配はいらない。そもそも要介護認定には状態変化の対応した、「区分変更申請」という方法が認められ、その申請いつでも制限なくできるのだから、要介護認定を受けてる本人もしくは家族、あるいはその支援担当ケアマネジャーが、常に要介護者の状態像に注意して、随時区分変更を申請すればよいだけの話だ。

そういう意味で僕は、「認定期間」そのものを廃止しても問題ないと思っており、「介護認定期間の延長は是か非か」という記事の中でも、そのことを主張している。

サービスの調整機能を果たしていない区分支給限度額も必要ないと思っているので、認定区分自体をもっと簡素化すればよいと思っている。(参照:要介護認定廃止議論に欠けている視点求められる要介護認定の見直し

何よりも、審査に必要な情報がほとんど書かれていないにもかかわらず、それがないことによって審査に着手できない元凶ともいえる、「医師意見書」の廃止を強く求めたいものである。(参照:やっぱり医師意見書は必要ない?

どちらにしても認定期間は最長48カ月に延長されるのだから、介護支援専門員に対して規準省令で課している、「短期入所生活介護及び短期入所療養介護を利用する日数が要介護認定の有効期間のおおむね半数を超えないようにしなければならない。」というルールも必要ないとして、削除すべきだろう。30日のリセットルールと、30日超えの減算ルールでのみで、一般入所と変わりのないショート利用なんて十分防止できるのであるから、これはいらないルールだ。

ところで要介護認定に関連しては、もう一つルール変更が行われる。それは認定調査に関する変更で、市町村が社会福祉協議会などの「指定事務受託法人」に認定調査を委託した場合のみ、介護支援専門員以外の職種の者に調査委託が可能とするというものだ。

調査が可能になる職種については、看護師や社会福祉士、介護福祉士が想定され、それは今後決定されるそうであるが、そのことも別に問題となるような新ルールではないだろう。

そもそも市町村の職員であれば、現在でも何の資格もなくとも認定調査ができるわけであるし、認定調査の判定ルールは全国共通であり、調査員の裁量が及ばないガチガチの基準が決められているのだから、そのルールに沿って調査を行えばよいだけである。

そもそも介護支援専門員の養成課程に、認定調査スキルを得られるようなカリキュラムが存在するわけでもなく、簡単な調査員研修を受けるだけで実施できる調査だ。はっきり言って専門性がさほど問われるわけでもない調査を、介護支援専門員に限定して委託しなければならないルールの方がおかしい。そういう意味では、職種調査職種を広げる条件を、「指定事務受託法人」に限る必要もないだろう。

調査委託を介護支援専門員限定しているからこそ、法人内のケアマネが鉛筆を舐め、調査票を作為的に埋めて、自法人の収益にプラスになるような要介護度の重度化誘導が行われているケースもないとは言えない現状がある。そうであるがゆえに調査が可能となる職種を広げて、利益相反のない第3者による調査の可能性を広げるという意味でも、この改正は求められる方向だ。

おそらく「指定事務受託法人」に限って認められた今回のルールは、期間限定的なルールに終わりるだろう。そして近い将来には、すべての調査においてケアマネ以外の有資格者による調査が認められるようになるだろう。

こんなふうに次期介護保険制度改正の議論は終結に向かっている。今後は12/16の社保審・介護保険部会の資料の(案)の通り、諮問答申が行なわれて、国会で審議可決することになるのだろう。

その内容は、国民批判が強まると予測される給付制限と負担増は見送って、その実現は消費税増の余韻が消えた後の、国民の関心が薄れた際に密かに確実に行おうという先送りに過ぎず、今回は痛みを負う層を現役並み所得者層と低所得者層に限定して実施するのである。

しかもその対象者の負担増加と、その額を決める論理はかなり乱暴で粗雑でさえある。この改悪で、生活苦に泣く低所得者が増えることは間違いないところであり、現場の支援者、特に介護支援専門員を含めたソーシャルワーカーは、その支援の視点が不可欠になることを忘れないでほしい。

そしてこの厳しい流れは来年度早々に始まる介護報酬改定論議に引き継がれていくことになることを忘れたはならない。

その介護報酬改定議論に影響を与えるのが確実な、介護報酬の風上にある来春の診療報酬改定においては、薬価がマイナス0.99%、材料価格がマイナス0.02%としたうえで、基本報酬は消費税財源を活用した救急病院における勤務医の働き方改革への特例的な対応分を除くとが、実質プラス0.47%で、全体の改定率は、マイナス0.46%に決定された。

そうなると2018年と2019年の2年連続でプラス改定とされている介護報酬は、診療報酬のように基本報酬のプラス財源となった薬価のマイナス分のような財源がない中で、今回の制度改正で給付抑制や自己負担増が十分実現できなかったという影響を受け、かなり厳しいマイナス改定が確実である。

自立支援介護の実現に向けたインセンティブ報酬が拡充されると言われる中で、基本サービス費が下がるサービスは広範囲に及ぶのではないだろうか。

どちらにしても年明け早々からの関係諸機関の動きや、報酬改定議論に先駆けて飛び交う情報を敏感に察知するアンテナが求められ、それに応じた戦略の見直しが介護事業者に迫られていることを覚悟せねばならない。

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