僕が総合施設長を務めていた特養では、毎年20人〜40人ほどの人が死亡退所していた。
このうち急死する人や、特養に籍を置いたまま医療機関で治療の甲斐なく亡くなる人以外は、施設で看取り介護を行いながら死の瞬間を迎えることになる。そんなふうにして毎年死亡退所者の9割近い方々が、「看取り介護」の対象になっていた。
だからと言って終末期になった人について、機械的に看取り介護を受けるように施設側が誘導していたわけではない。
その特養では看取り介護を密室化せず、看取り介護に協力してくれる利用者や家族については、看取り介護対象者もしくはその家族の承諾の上で、できるだけ情報を公開し、最後の瞬間までみんなで温かく看取ることができる方法をとっていたため、自分や自分の家族が終末期になっても、住み慣れた施設の中で安心して介護を受けながら、最後の時間を過ごせると考えてくれる人が多くなった結果でしかない。
医師から終末期であることを説明する、「ムンテラ」の際には、ケアマネジャーも同席して、施設で看取り介護を受けるとしたら、どのような課題が想定され、そのことに対してどのような目標を立て、それに対応する具体的なケアサービスはどうなるかを説明し、医療機関に入院するという選択肢もあることを説明したうえで、どうしたいのかという最終確認をしていた。
よって看取り介護計画書は、当該施設で看取り介護を受けることを決定する以前のムンテラの時点で作成を終えて、ムンテラの際に説明・同意ができるようにしていた。それがないと施設で具体的に何をしてくれるかという説明根拠が十分ではなく、説明を受けた人が、どこで自分や自分の家族が終末期を過ごすのかを決定するに際しての根拠も不十分となると考えていたからだ。さらにムンテラの際に看取り介護計画がない場合、看取り介護を受けることを決めた後に、説明内容と実際の支援方法が異なるという訴えにつながりかねないというリスクもある。
そうした不安やリスクをできるだけ排除して、利用者やその家族が終末期の過ごし方を選択できるようにすることも、看取り介護を実施する側の責任であると考える。
そんな過程を経て、長年暮らしていた特養で、残された最期の時間を過ごすと決めた人たちに対して我々ができることは、残されている限られた時間の中で、逝く人と見送る日との間で、できるだけ多くのエピソードを刻み、残される人の心にたくさんの思い出を刻むことだ。それが命のバトンリレーであり、終末期判定と余命診断を医師が責任を持って行うことは、その時間を創り出すという意味があり、それは看取り介護の絶対条件でもある。
看取り介護には、家族や職員だけではなく、実習生も関わることになる。
実習生の中には、将来介護の仕事を職業とすることに迷っている人もいたり、介護を職業とするにしても、どのサービス種別に関わっていきたいかを決めていない学生も多い。そんな学生たちが看取り介護を通じて、看取り介護対象者と家族や職員が、毎日のようにいろいろなエピソードを刻み、そのことを忘れないように思い出に変えている様子を見て、自分もこの施設で働いてみたいと思うようになる。
そんな学生たちの姿を見ると、看取り介護とは、介護という職業の使命や誇りを意識できるステージであることがよく理解できる。
看取り介護は日常の介護の延長にあるもので、それは決して特別な介護ではないけれど、遺された命の時間を意識して関わる介護では、ごく自然に命の尊さと儚さを意識することにつながり、対人援助に何が必要なのか、他人が職業として誰かのプライバシー空間に入っていく際にどんな配慮が必要なのかということを強く意識するようになる。
看取り介護に携わる人は、そのような過程を経て、人間的に成長していくと同時に、確実で安定した介護の知識と技術を獲得していくことになる。看取り介護という命を意識した介護であるからこそ、介護の基本・土台ができていくのである。
そういう意味では、全国で僕が行う看取り介護講演も、看取り介護の方法論を学ぶためだけの研修の場ではないということを理解していただきたい。看取り介護を学ぶ中で、介護従事者としての基本姿勢と技術を獲得するものであることを知ってほしい。看取り介護を学ぶことで、自分が介護の職業を続けていく動機づけにつながる、「土台」が見つけられる内容になっていると思うので、是非機会があれば、看取り介護を行っている・行っていないに関わらず、僕の話を聴いてほしい。
ちょうど1週間後の来週月〜火の二日間、京都府医師会館で京都府老人福祉施設協議会主催・看取り介護セミナー導入編を行う予定になっている。このセミナーは二日間でたっぷり6時間以上の講義と、2時間以上のグループワークを行って、介護の土台を作り上げる内容となっているので、会員施設の方でまだ申し込みしていない方は、ぜひこの機会に参加を検討していただきたい。
とはいっても残りの席はそう多くはないとのことであるが、今ならまだ数席の確保は可能とのことである。お問い合わせは、京都府老人福祉施設協議会・事務局まで電話などで連絡いただきたい。
※もう一つのブログ「masaの血と骨と肉」、毎朝就業前に更新しています。お暇なときに覗きに来て下さい。※グルメブログランキングの文字を「プチ」っと押していただければありがたいです。ンに共感できない職員は、組織の秩序は壊す要素にしかならないのだから、寄ってこなくてよいと割り切って考えるべきである。
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